SDGsを学んだ高校生が、サステイナブルな輸入に挑戦! バリ島のコーヒー豆が教えてくれたこと
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SDGsを学んだ高校生が、サステイナブルな輸入に挑戦! バリ島のコーヒー豆が教えてくれたこと

課題解決型の授業などを通して、生徒に多くの実践の機会を与えるクラーク記念国際高等学校。2021年の夏、生徒たちだけでインドネシアからコーヒー豆を輸入した。そこにはどんな物語があったのか。生徒たちのひと夏の成長と、それを見守る指導者たちの思いとは。

SDGsを実践から学ぶ

2021年夏、クラーク記念国際高等学校の生徒たちが、インドネシアのバリ島で栽培されるコーヒー豆をサステイナブル(持続可能)な方法で輸入するプロジェクトに挑戦した。現地のスタッフと英語で交渉し、コストやスケジュールの管理、輸入の手続きなどすべて生徒たちが自力でやり遂げた。メンバーの一人、広島キャンパスの百瀬さん(3年)は、「コーヒー豆が手元に届いたとき、『わーっ!』と思わず歓声をあげました。喜びと達成感はこの上ないものでした」と、満面の笑みで話す。

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コーヒー豆を手に笑顔の広島キャンパスの百瀬さん(3年)

このプロジェクトは、2020年からキャンパスを横断する形で始まった産学連携ゼミ「SDGsリーダー講座」の一環として実施された。SDGs(持続可能な開発目標)とは、気候変動、貧困、差別など世界が抱える17の課題を2030年までに解決することを目指す世界共通の目標。今、全世界で達成に向けた取り組みが盛んになっている。クラーク国際でもこの喫緊の課題を生徒に考え、将来の行動につなげてもらおうと、SDGsに関する様々な学習の機会を設けている。

私たちに貢献できることとは

その一つ、SDGsリーダー講座は、海外インターンの提供を手がけるタイガーモブの中村寛大さんの発案で実現した。環境学の専門家、高間剛さんを講師に迎え、全国のキャンパスをオンラインでつないで授業は進行。SDGsについて理解を深めつつ、ディスカッションやワークショップなどを通じて目標達成のためにはどうすればいいか考え、実行に移すことを目的とする。

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タイガーモブの中村寛大さん(左)環境学の専門家、高間剛さん(右)

高間さんは気候変動の影響で農作物の不作に苦しむインドネシアの貧困農家を支援するsu-re.co(シュアコ)を2015年に立ち上げ、バリ島を拠点に活動する。ゼミはSDGsのスペシャリストともいえる高間さんから直接、気候変動と貧困の関連など、今現実に起きている世界の課題について学べるとあって、好評を博している。

百瀬さんがこのゼミを選択したきっかけは、「環境やジェンダーなど、今まで考えがあまり及んでいなかった問題について知り、考えたいと思った」こと。

授業では高間さんから、世界では多くの問題が絡み合っているが、本質をどう見極めるかが大事と教えられた。
「気候変動によるコーヒー農家の労働環境の悪化について調査しました。そして、私たちにできることは何かと考え、より二酸化炭素の排出量が少ない方法でコーヒー豆を輸入するプロジェクトを計画しました。インドネシアの人と直接やりとりができたり、実際に輸入業務に携われたりすることにも興味がありました」(百瀬さん)

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プロジェクトは困難の連続

このプロジェクトは高間さんのsu-re.coのスタッフを介し、現地の農家から生のコーヒー豆を仕入れるというもの。百瀬さんは全体をまとめる「ボス」に抜擢され、おもに横浜青葉、所沢、広島の3キャンパスから集まった十数人のメンバーをリーダーとして引っ張った。とはいえ、「おもなボスの仕事は全体の進捗状況を把握し、輸入が滞りなく行えるようにすること。自分が何かをするというより、みんなに気持ちよく動いてもらえるように心がけました」と謙虚に話す。

事前に中村さん、高間さんから指示があったのは、1人あたりの予算と納品期日のみ。メンバーの誰もがこうした「ビジネス」は未経験だ。どんなコーヒー豆をいつ、どれだけの量、どんなふうに輸送し、どこまで届けるのか。それは期日に間に合うのか、予算に見合うのか、そして、サステイナブルな輸入法にするにはどうすればいいのか。考えること、交渉すること、決めること、準備することは山のようにあった。

「思いどおりにならないことが多くて、想像以上に大変だったのですが、みんなが最後まで頑張ってくれました。私はとにかく積極的なコミュニケーションに努めました」
オンライン会議システムで週に2回はメンバー間で話し合い、チャットツールを使って議事録や進捗状況を逐一メンバーに共有した。
「全員で同じ認識を持つのは難しく、会議が円滑に進まないこともありましたが、オンラインで密に連絡を取り合うことで一致団結してプロジェクトを成功に導けました」

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失敗は次へのチャンス

そんな生徒たちを中村さんと高間さんはどんな思いで見つめていたのだろうか。
「質問されれば答えましたが、基本は『我関せず』。『可愛い子には旅をさせよ』の精神でした」(中村さん)
「うちのsu-re.coのスタッフから進捗は聞いていましたが、とりあえず見守っていました。私たちが手を出せば、もっとスムーズにできたかもしれませんが、それでは本当の難しさはわかりません」(高間さん)

実はどうしてもスムーズにいかず、断念したことがある。それは二酸化炭素の排出量を減らすための船便での輸送だ。船便は日数がかかり、期日に間に合わないことや、現地に港がなかったことが諦める大きな要因となった。百瀬さんはこう振り返る。
「今回、船便での輸入を押し進めてしまうと、現地に大きな負担を強いることがわかりました。私たちは『輸入させていただく』という姿勢を大切にしていて、農家など現地の方々にとって、一番いい方法で進めたかったので、残念でしたが、航空便に変えました
サステイナブルな輸入を目指していたので、船便を諦めた時、メンバーは一様に落ち込んだという。しかし、百瀬さんは「輸入できただけですごいこと。これを次に生かそう」とみんなを鼓舞した。

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コーヒー豆を作っている現地の農家。近くには港がなく船便の実現は叶わなかった。(写真提供:su-re.co)

やってみたから、わかることがある

高間さんも「コーヒー豆を高校生だけで輸入したなんて君たちしかいない。自信を持っていい」と励ました。
「サステイナブルなビジネスに取り組む世界中の人々も同じことに苦労しています。その難しさが実際にやってみたことでわかった。失敗ではなく、新たな気づきを得たと考えればいいのです」(高間さん)

中村さんも同じくこう話す。
「今回、生徒たちは税関のことを調べるために横浜港湾所に直接聞くなど、自分たちの手と足を使って行動していました。机上だけで学ぶのと違い、自分でやってみるからこそわかることがあります

2人の言葉が表すように、百瀬さんにはたくさんの気づきがあったそうだ。
「プロジェクトを進めるにあたり、チーム全体で意識したことはバリとのつながりでした。サステイナブルは環境だけでなく、人とのつながりも大事だと考えています。また、今回のプロジェクトを通して、人と協力することの大変さと大切さを強く感じました

そんな生徒たちの成長を傍で見守っていたのが、このSDGsゼミを統括する山下学先生だ。
「プロジェクトを通じて、SDGsについて自分からこういうことが学びたい、こう行動したいと話すなど、生徒たちが主体的な姿勢を身につける様子が伝わってきました。こうした実践的な学びの力は大きいです」

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百瀬さんによるプロジェクトの振り返り発表。チームとしてプロジェクトを動かし、SDGsに貢献するという、ソーシャルビジネスにつながる第一歩を経験できた。

今は輸入したコーヒー豆をどう焙煎し、飲んだ後のコーヒーかすをどう利用すれば、二酸化炭素の排出量を減らせ、サステイナブルな使い方になるか、ゼミで色々な方法を模索中だという。
空輸で排出してしまった二酸化炭素量をできるだけオフセット(埋め合わせ)したい」と百瀬さんは意気込む。

未来につながる学び

高間さんにとってこのゼミのねらいは、自分の生き方を見つけてもらうことにもある。
SDGsのような誰かが作ったビジョンでもいいので、そうした目標が見つかると、生きがいができ、人生が送りやすくなる。そういうことに気づいてもらえといいなという思いで授業をしています」

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コーヒー豆輸入を実現した広島キャンパスの生徒たち(左から2番目が百瀬さん)

中村さんはゼミやプロジェクトを通じて生徒に接する中で心に留めたのが、「待つ姿勢が大事」ということだった。
「最初はひとことも話さなかった生徒が、徐々に自分の考えを発言してくれるようになりました。今日じゃないけど次回は発言したいとか、だんだん興味が湧いてきたとか、実はみんな心の熱量が高いんです。生徒たちはそれぞれのペースで何かを学び、何かを得ています。そこに私たちが真摯な姿勢で向き合えば、生徒たちの可能性は限りなく広がっていくことを改めて実感しました

今回のプロジェクトで知り合ったインドネシアの農家の人々などとのつながりを今後も持ち続けていきたいという百瀬さん。「今回得た学びをゼミ生にシェアするとともに、環境や社会、自分も含めたサステイナブルな活動を今後も展開していきたいです」と目標を話す。そして「実はコーヒーが飲めないんです。でもこのプロジェクトで、コーヒーが好きになるといいなと思って。これもプロジェクトに参加した理由です」と、笑顔を見せた。

クラーク記念国際高等学校 広島キャンパス公式HP


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「学びのタネを探す」をテーマに、クラーク記念国際高等学校の広報室が発信する教育コラムです。キャンパスや授業を訪ね、先生や生徒のインタビューを通して、新しい教育のあり方や教育の可能性について考えます。