ロマンスカー

9月24日

完全に寝不足で目も開かない。
遅刻するつもりで30分寝た。

部長に「体調不良で自宅におりまして今から…(向かいます)」と言いかけて「体調不良なら無理して来なくていいです、休んでください」と命じられる。

「あ、はい」
「お大事に」
「はい」

シドロモドロしているうちに休みになった。



どうする!?休むぜ!

だけどいつでも外出できるぐらいに身支度が完了している。
家に居るのはもったいない。海or山行くか。
銀行に行って奨学金を振り込んだ後、電車に乗った。

通勤ラッシュの時間もすぎた電車の中で、「渋谷東急の古いところが閉鎖される」との情報を見て、見納める気になり渋谷で降りた。
東急のあの妙な照明のところ。壁や階段や、公式で、アーティストたちによる落書きが残されていた。百貨店時代に綺麗な雑貨店やコスメの店があったところのシャッターにも落書きがされていて、特に別に恨みとかないけど胸がスッとする。
個人的に、良いも悪いも印象的な場所なんだな玉川改札って。
寂しい、まではいかないけれど、なくなるんだなあと。
それがあって今がある…とにかくそう思う。さようなら。


湘南新宿ライン小田原行き。ボックスシートに座る。
窓際の人みんな寝てる。
私はずっと外を見ていたり、仕事を休んだ罪悪感をごまかしたくて、友達にラインしてみたりした。友達Bちゃんは伊豆にいる。
私は、どこで降りようかな、と考えて終点の小田原へ。
沿線の藤沢、茅ヶ崎、もう色々気になってしょうがなかった。
東海道はいつもそうだ。

海側ばかり気にしてたけど、実は山側も良い景色だと気づいた。
東京から、折りたたまないタイプの普通の傘を持ってきたけど、だんだん傘持ってるのが浮いた存在に感じる。

小田原、コンコースの天井が高くて上野的だ。
駅前にいきなり古いビルあるけど、歩いてみると横須賀みたいに、まあまあきれいで、小田急電鉄の息がか買ってる感じした。熱海のローカル感と比較してしまう。小田原は町田の延長みたいな、チェーン店はひととおり揃ってる無難さもある。しかし街の形はやはりちょっと独特な感じ。

蕎麦屋に入店。青みかん蕎麦というのを食べた。青みかんのスライスが一面を覆った蕎麦。うまいじゃん…!広い店には5人の店員さん。人員過多にも見えたが、このあとまあまあお客さん増える。広い店には5人の店員さん。人員過多にも見えたが、このあとまあまあお客さん増える。

海へ。
御幸浜は西湘バイパスだったかのすぐそばだ。
こういう道路の下を階段でくぐって海行くの、暗い感じでちょっと怖い感じ。ドキドキするんだよな。兵庫の須磨浦を思い出す。

階段を下ると、ドォーという音がする。

海だ…視界には海しか広がっていない。
海は広い方向から音が聞こえてくる。こんな体験は、来ないとできないんだった。車窓から眺めるのとは全然違う。

御幸浜は楕円の石がたくさん落ちててそれが印象的だった。
まばらに人がいたのは安心する。
そういえば今日は台風が通過してるんだった。風の強いときはあって、「高波注意」の字を見ると緊張感を持つ。釣りしてる人いたけど怖くないのかな。

海を見てると、よく、怖いなとも思う。
波にのまれたらとか考えてしまい、チルしきれなかったりする。
それでも、波が寄せて、それが沖へ戻って、また向こうから寄せてくる波がそれに抵抗して更に強くなってって…と見入ってしまう。

居たのは30分くらいか。西湘バイパスの標識で熱海や真鶴の字を見ると、わあ行きたいなあと胸が焦がれる。向こうに見えるのは真鶴半島で、その向こうは楽園:熱海なのだからな。

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このまますぐ戻って、金を使ってロマンスカーに乗ろうかと思う。
せっかく来た小田原、いろいろ散歩したいが、まず私は寝不足でエネルギーが発散できないのだ。

かざみどりという喫茶店に寄り道。
外から覗いた店内の人・雰囲気が良さそうだったから。
ここは小学校のすぐ隣で、座った窓際の席から下校する小学生が見えたりする。もうそんな時間なんだ、と思った。アイスココア飲む。


小田原城を通り過ぎて駅へ。
駅にいるみーんな、スタバの芋フラペチーノ飲んでる。いいな!!でも飲んだらお腹冷えちゃいそう。インフォメーションでスタバの場所を聞いて、暖かい飲み物を買った。改札前でおじいさんが倒れてて、駅員さんたちがなんとかしてる。
西口に出たら、こっちのがローカルな感じで渋かった。
ちょうど救急車がやってきたので、おそらくおじいさんを迎えに来たのだろう。

ロマンスカーの展望席へライドオン。先頭から3列目ぐらいの通路側で、眺めはまあまあだった。「初号機プリン」とか車内販売にあって、そうかこれ箱根から来てるんだと思った。隣の女性は紙袋を持っていて、お土産っぽい。みんなその帰りかな。

途中、うとうとする。気持ちがいい。東京に近づくにつれ、前面の窓は雨で曇り始めた。淡く光る。あ、これは幻想的な車窓のロマンスカー。
昔付き合ってた人にもらったロマンスカーの写真集を思い出した。なぜか曇った車窓ばかりだった。曇っていてよく見えないじゃなくて、光ってる。撮り手にはそれが魅力的に見えたのだ。
もらった当初は恋人に対し気がかりな思いばかりがあって、作品を楽しめるどころではなかった。そのフィルターが溶けた今、純粋に私はロマンスカーの車窓を眺めることができている。ありがとう、と謎の思いに浸った。

この車両、席は結構埋まっていて、私は人がいっぱいの電車は苦手だけど、みんなで同じ方向向いてぼんやり眺めてるってのが、なんだか心地よく落ち着いた。

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