拝啓、大きい方のはんぶんこをあげたい人

以下の内容は来週に渡すつもりであるお手紙の下書きです。0.3の黒ペンで丁寧に、楷書で始まり、草書混じりではありますが、楷書で締めるよう心がけました。男子は追われると安心して冷めるなんてそんなこと知らない。どうしてもこの去らない想いを伝えたくて。形に残る気持ちは手紙だから。



 「風薫る爽やかな皐月になりました。いつもお仕事お疲れ様です。突然のお手紙で驚かせてしまってすみません。

 あなたと知り合ってから然程長くないのに、何故かあなたは懐かしさを感じさせる人なので、共に過ごす時間が心地良く、自然体でいられるのが好きです。お互いに言語交換をする際、遠慮なく訂正し合える関係は貴重だと改めて感じました。

 初めてお会いした夕食、途切れることなく続いた会話と笑声の合間、視線が数秒合わさった時、思ったのです——この方のことをもっと知り、もっと時間を共にしたいと。

 暇を持て余して独学した日本語、家族に証明するために受けた日本語試験、心から楽しんで挑んでいる仕事、退職後のドグラ・マグラ翻訳、この裏には数えきれない努力の積み重ねがあるわけで、考えれば考えるほど頭が上がりません。私からも僅かではありますが、知識で補佐出来れば幸いです。

 時を忘れるほど散策する中、自ずとあなたとこうして未踏の地へ視界と意識を広げていけるのならば、さぞ有意義且つ濃厚な人生になるだろうという思いがよぎりました。

 私にとって、優しさとは、「半分こして大きい方を相手にあげること」なのですが、これからはケーキに限らず、快楽、歓喜、幸福、そして挫折、悲哀も私に分担させてください。

 以前、質問で質問を返したら誰かに叱られた経験があるので、今回は自発的にお尋ねします。付き合って頂けますでしょうか?お返事は芒種までに頂けると嬉しいです。

 健康に気をつけてお仕事がんばってね!応援してます。」


土曜日は友達の誕生日パーティー、日曜日は実家に帰るとのことで、今週末は会えないけれど。教えてくれてありがとう、素敵な時間を過ごしてきてください。そしたら来週の早いうちに仕事終わりの五分間、駅前で会ってお手紙渡せますように。

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