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来週の相場見通し(3/22~3/26)

 先週はECB理事会、FOMC、日銀金融政策決定会合などの重要イベント、市場では米金利の一段の上昇など、相変わらず落ち着かない展開が継続した。しかし、総じて言えばマーケットでは、再びリフレトレードが再開している。米国株式市場は最高値を更新する堅調地合いが続いている。2月後半から30%も大きく下落していたクリーンエネルギー関連のETF等も下落の半分程度は回復している。米金利は、FOMC等を乗り切った後も、金利上昇圧力はしつこく、引き続き債券市場の地合いは悪い。
 

 注目されていた米国債の一連の入札は、16日の20年債入札で終了した。入札は概ね堅調地合いとなったものの、米金利低下は継続せずに、むしろじりじりと上昇した。30年金利がこれまで壁となっていた2.3%を上抜け、期待インフレ率も直近の高値を超えてきている点は気がかりだ。
 米国30年金利については、引き続き年金等の需要が予想され、2.5%程度でサポートされると思われるが、先週後半には一時この水準すら超えている。FRBのロンガーランの水準、米国の潜在成長率を勘案すると、30年金利の2.5%はそれなりに需要は強く、ここから大きく上離れる展開は時期尚早と判断したい。但し、現在は10年と30年のスプレッドが70bp以上もあることは重要だ。年金等の需要から30年金利の上昇が止まっても、10年金利が上昇するベアフラットの可能性は残るからだ。2018年には10-30年のスプレッドは約12bpまでフラットしたことを鑑みると、30年金利が2.5%でピタリと止まっても、米10年金利が2.0%を超える展開もないとは言えないということだ。

 FOMCでは22年末までの利上げが1人→4人へ、23年末までの利上げが5人→7人に増加したが、大勢は23年末までの金利据え置きを示唆した。昨年12月のFOMCの段階から米国では9000億㌦の景気対策、更には1.9兆㌦のアメリカン・レスキュー・プランが成立したこと、ワクチン普及が既に1億回以上も進んでいることを鑑みると、23年末までの利上げ見通しが前回から2名しか増えていないのは、少ない気がする。これは、パウエル議長の統率力の現れだと考えていいだろう。経済見通しでは今年が6.5%の成長、来年も再来年も潜在成長率を上回る成長見通しとなった。それにも拘わらず、インフレ率は今年が一時的に2.4%まで上昇後、来年以降は鈍化する見通しが示された点がポイントである。なぜなら、 ヘッジファンド等は、上記のFRBの見通しに満足していないからだ。すなわち、これだけの経済成長においては、インフレの上昇は一時的ではなく、FRBの想定以上に加速し、FRBは早期の利上げに追い込まれるとの見方が強い。また、今回のFOMCで示された見通しには、これからバイデン政権が打ち出すビルド・バック・ベター(BBB)と呼ばれるインフラ投資案は考慮されていないのだ。このインフラ投資案は公約では4年で2兆㌦であったが、民主党は現在左派勢力の勢いが強いこともあり、インフラ投資案に「格差税制策」まで盛り込み、3-4兆㌦規模の巨額の規模にしようとしている。もちろん、富裕層への増税もセットとなるが、国債発行の増発も避けられないだろう。こうしたことから、FOMC等で比較的うまくパウエル議長が説明責任を果たした後も、米金利市場は不安定な推移となっている。但し、このところの米金利上昇は、やや妙な値動きをしている。特徴は東京時間の午後から、ロンドン時間にかけて、超長期金利を中心に崩れることが多いのだ。NY時間が開始される前までに金利が上がり、NY時間では膠着するという変な展開が続いている。こういう展開は長続きしないだろう。

 米国株式市場は、米金利の水準に概ね適応している。米長期金利が2.0%まで上昇しても実質金利はゼロ%近辺であること、実質金利がプラス圏となると自然利子率に対して金融引き締め的となることから、FRBが放置できないと株式市場は織り込んでおり、この想定が崩れるような事態でなければ、本格的な調整は起こらないと思われる。先週後半には、米金利が1.75%まで上昇する過程で、ナスダックが3%を超える下落となり、再び不安定さを見せたものの、これは金利上昇や水準そのものより、入札を超え、FOMCを終えたのに金利が上昇したことに対して、「何故今、金利が上がるの?」という疑問が、株式市場をやや不安にさせたと思われる。ちなみに、この日に発表された3月のフラデルフィア連銀製造業景況指数は予想の23を大幅に上回る51.8と、統計開始以来3番目の高水準となった。これほど、今の米国の景況感は強い。ミシガン大学消費者マインドも83まで上昇している。コロナ後の最高水準だ。大型追加景気対策に伴う個人への現金給付に加え、税金の還付金シーズンとなることから、個人の消費マインドは相当に上振れる可能性がある。ここから数カ月、雇用統計も含めて、経済指標はかなり上振れてくる可能性は高い。市場は織り込んでいるとはいえ、実際に強烈に良好な数字を示されると、マーケットはやはり反応しやすくなるだろう。

 ECBは、理事会において4-6月の債券購入について大幅に増加(2月の600億ユーロは上回るが、1000億ユーロは越えない)させることを決めた。PEPPの総額1.85兆ユーロは変更しなかったが、今後の増額の可能性も示唆した。欧州は昨年10-12月の▲2.6%に続き、1-3月もマイナス成長となる見込みであるほか、域内のワクチン接種も米国や英国と比べると極めて緩慢であること、フランスのパリでは再びロックダウンに入ったこと、アストラゼネカのワクチン投与の中断等もあり、ECBが早期の金利上昇を許さない姿勢は明確だ。欧州関連では、ドイツの州選挙では与党のCDUがヒュンデンベルク州で歴史的大敗となった。ドイツでは今年引退するメルケル首相の後任、「ポスト・メルケル問題」がなかなか重い。CDUはラシェット氏をCDUの新党首として、ポストメルケルに担ぎ上げているものの、選挙で勝てないと、その求心力は保てない。ポスト・メルケル問題は、今後も欧州の大きなテーマとなるだろう。

 日本では3/21に非常事態宣言が解除されることになった。また21日は千葉県知事選、自民党大会も予定されている。4月は秋田県知事選、福岡県知事選、そして衆院補欠選挙(北海道)、参院補欠選(長野、広島)と選挙イベントが継続する。自民党の下村政調会長からは、菅総理の4/8の訪米から帰国した後にも、解散総選挙の可能性があると発言した。菅総理の支持率も、冴えないとはいえ、一時的に比べると回復している。野党の政党支持率が全く上がってこないなかでは、政局的には衆院解散は早期に実施したい意向は強いと思われる。

 注目されていた日銀の政策点検は、事前に伝え漏れていた内容からは大きく逸脱しなかった。はっきり言って、何のための点検??と感じにはいられない。通常の金融政策決定会合で判断できる域を超えていない。やや市場にとってのサプライズは、ETF購入について今後はTOPIXに連動するものだけ購入すると決めたことである。つまり、日経平均やJPX400に連動するETFは購入しないということだ。これを受けて、株式市場では一時的に日経平均株価は大きく下落し、TOPIXは買われた。しかし、これは短期的な展開で収まるだろう。何にも本質的な話ではない。はい、そうですか。という程度の話である。

 さて、3月は期末月となることから、特殊要因が多いものの、米国金利は月末に向けて小幅の金利低下を見込む。さすがに、現在の金利上昇のペースは速すぎる。期待インフレ率の水準からも、これ以上の金利上昇は現段階ではオーバーシュートであろう。まだFRBから補完的レバレッジの延長可否のアナウンスは出ていないが、ここで延長が決まれば、徐々に金利は低下に転じると思われる。そうなれば、ナスダックを中心に米国株は再び力強い上昇基調に戻ると思われる。日本株は、3月期末に伴うリバランスもそろそろ終盤だろう。月末までは配当取り、4月以降の上昇アノマリーに備える形で、日経平均株価はじり高基調となる展開を見込む。予想レンジは29,600円~30,800円だ。(まだ東京市場もクローズしていないし、今夜の米国市場も開始されてないため、修正が必要な場合は、週末に修正する)

※ なんと週末の海外時間に、FRBが補完的レバレッジを延長せずに3月末で終了する見通しと報じられた。これは予想外である。米国債の免除延長の終了はともなく、準備金も免除でなくなるのは、時期尚早だろう。このサプライズにより、米金利はせっかく低下基調であったものの、再び上昇に転じてしまった。ナスダックは崩れてないが、ダウは大手銀行株が軒並みダメージを受けている。来週も米金利上昇のリスクが浮上してしまったことから、日本株のレンジも引き下げる。来週の予想レンジは29,200円から30,200円としたい。

さて、日本は4-6月期に東証改革に伴うガバナンス強化、コーポレートガバナンス改訂対応、業績ガイダンスと色々な材料が盛りだくさんとなる。この辺は次回以降のレポートで取り上げるが、4-6月に今年前半の高値を付けると思われる。32,000円~33,000円レベルだろうか。これは、また追ってレポートしたい。

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