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シニアに学ぶ『退職後の輝き方』第2回  加藤 欣一氏 『海外で活躍できる建設コンサルタントとして』

この記事は、2012年~2017年にかけて当委員会で連載されたインタビュー企画である「シニアに学ぶ『退職後の輝き方』」を再掲載するものです。インタビュー対象者のご所属等については、掲載当時の肩書のままになっていますので、ご留意ください。

PMaCS社<プロジェクトマネージメントコンサルティングサービス> 会長1945年生まれ。1971年パシフィックコンサルタンツ(株)入社。1980年パシフィックコンサルタンツインターナショナルに出向(のち転籍)。以後海外の交通インフラ整備に従事。2004年常務取締役業務管理本部長。2009年代表取締役副社長。2010年3月より現職。
インタビュー日:2012年4月3日
聞き手:日比野直彦、菊地良範、加藤隆

再掲載に当たって(委員会より) 
 人生は「出会い」によって決まるのだろう。人や本や音楽やビジュアルや、その他諸々との。特に「人」だろうか。職業人として現役の時も、退職後の人生も。加藤欣一さんの場合、現役生活は、多分土木系の大学時代の出会いに始まり、退職後はその延長線上に、自身の人生観が重なった結果であろうか。その人生観も大学で土木系を選んだ結果として醸成されたものか、そもそもその選択自体がその前の出会いに影響された人生観の反映であったのか?何れにしても、加藤欣一さんと同世代の人間として拝見して、人生で大事にしたいのは出会い・縁であると改めて感じた。(2022.3.19 ロクオウ)

学生時代から海外を夢見て

建設コンサルタントの道を歩んだきっかけは?
 
学生時代に建設コンサルタントでアルバイトをし、道路設計の基礎を勉強しました。その頃、インドネシアの砂防プロジェクトの経験を記した日本人の手記を読む機会があり、卒業研究として「インドネシアの道路設計」をやりたいと考えました。そこで、その手記の筆者を訪ねていき、お話を伺ったところ、「卒業研究よりもまずインドネシアを旅行しての見聞を深めてくるのが良い」とアドバイスをもらいました。それで、実際にインドネシアを旅行し、卒業後海外の道路設計に従事したいと考え、就職先として海外プロジェクトに強いコンサルタント会社を選びました。

入社してからの経歴は?
 1971年に就職し、20代は、主に国内の高速道路の設計に従事しました。思い出深いのは、沖縄自動車道のプロジェクトです。沖縄は当時返還直後で、海洋博までに36㎞の高速道路を開通させる必要がありました。そこで、発注者も含めて優秀な人材が集まり、非常にタイトなスケジュールで設計を進めました。当時設計担当者として従事していましたが、その頃は発注者の課長さんが道路設計の進め方だけでなくメンタル面でも指導してくださり、仕事を進める上での師匠のような存在でした。

海外工事のプロマネとして

海外プロジェクトに従事してからのことを教えて下さい。
 1980年に初めての海外プロジェクトとして、インドネシアスラウェシ島の縦貫道路プロジェクトの担当になりました。現地で設計に従事してまず思ったこととしては、海外工事の基本図面は非常にラフな図面であり、国内プロジェクトとは全く違うことを痛感させられました。海外では、若手でもプロジェクトマネージャーのような仕事を任され、常に同年代の社員よりも背伸びしたような立場での業務の遂行が求められました。
 40代になって、プロジェクトマネージャーとして、トータルデザインも含めた設計に従事しました。50代以降は管理職となり、現場の指揮を執ることは少なくなりましたが、引き続き大型プロジェクトの陣頭指揮を執る機会はありました。

次世代の技術者を育てたい

現在の職場を選んだきっかけは?
 現在は、会社自体はフィリピンにある日本人向けの人材教育会社で会長をやっています。主な勤務先は日本国内ですが、年間のうち60日~70日程度はフィリピンに出張する生活をしています。
 この職場を選んだきっかけとしては、60歳を超えたら、自分自身の人生をもっと活性化したいと考えるようになったことです。建設コンサルタントとしてではなく、人材育成という今までとは違う業種で、社会に還元したいと考えるようになりました。
 現在、コンサルタント業界では、設計業務の細分化が進み、他部門との連携が困難となり、技術力の低下が問題となっています。技術は本来「ぬすむ」ものであり、「たたき上げ」の技術者が減ってきていることが問題です。私の今の職場では、若手の技術者に広い視野でものを見て考えてもらえるような環境を作り出し、学び手の学習意欲を高めるよう取り組んでいます。

「1/3分割法」を理想として

定年後の仕事の進め方は?
 定年退職後の生活の理想とは、「1/3分割法」が理想であると考えています。これは、生活を1/3に分割し、1/3は全く自由な時間を過ごすこと、それからもう一つの1/3は自身の経験・ノウハウをボランティアとして社会に還元すること、また最後の1/3は、どこか企業に所属して報酬を得て、組織に属することで緊張感のある時間を過ごすことと考えています。
 現役時代にこのような「1/3分割法」を実践することは難しいでしょうが、少なくとも3割くらいは、仕事以外のことに取り組める余裕をつくることが、定年退職後の充実した生活につながるものと考えます。

社会貢献を続けたい

定年後に必要なスキルは?
 やはり過去の経験が重要であると考えます。過去から現在を学び、現在から未来を予想することが最も重要であると考えます。
 また、プレゼンテーション能力も重要であると考えます。人に伝える際には、情報を一方的に伝えるだけではなかなか伝わりません。心をつかむキャッチフレーズを考えることが重要です。

今の仕事を何歳まで続けたいですか?
 70歳までは、現在のスタイルで仕事を続けたいと考えています。それまでに、日本のコンサルタントが海外で対等に戦えるようにして、海外で活躍するためにセンスが足りない日本人技術者が少しでも技術向上できるように、社会貢献がしたいと考えています。
 また、70歳を過ぎても、すぐに引退するというわけではなく、70~75歳においても、別の方法での社会貢献をしたいと考えています。

もっと早い時期から海外に

人生をやり直すとしたら、何がやりたかったですか?
 若いころには、学校の先生やジャーナリストなど、文科系の職業になりたいと思っていましたが、大学のキャンパスを見て、技術系になろうと考えたものです。もう一度人生をやり直すとしたら、やはり建設コンサルタントになりたいと思いますが、その際は、もっと早い時期から海外に留学して、海外でもっと活躍できる技術者になれればいいな、と思います。

「第二幕」の生き方が大事

これから退職を迎える技術者へのメッセージを。
 人生は、定年退職してからの「第二幕」の生き方が大事であり、第二幕をどのように楽しんで過ごすかが、自身が死んでからの他人からの評価につながると考えます。このようなことを肝に銘じ、多面的に活躍できるようにすればいいのではないか?と思います。
                          (文責:加藤隆)

インタビュー対象者として選定した理由
 
加藤さんは、長期にわたって海外の道路プロジェクトなど交通インフラ整備の仕事に尽力されてきており、現役時代に海外で活躍された建設コンサルタントの技術者のトップランナーであり、現在もその経験を活かし、次の活躍の場を考えられていることから、インタビュー対象者にふさわしいと考えました。

インタビューを終えて(聞き手から)
 加藤さんは、定年退職後の生活の理想として、「1/3分割法」を持論とされていました。定年退職後の現在も年間60日程度は海外で過ごされており、自由な時間、社会貢献、組織への貢献をバランスよくこなされており、非常に充実した時間を過ごされているという印象を受けました。生まれ変わってもコンサルタントを志望し、その際はもっと早く海外留学する、とお話しされたのが印象的で、海外プロジェクトの設計に深い思い入れを持たれていることに感銘を受けました。






 



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