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2022年度シビルエンジニアの定年退職後の活動に関する意向・実態調査結果】 第4回 社会情勢の影響・働き方変化・リスキリング

はじめに
土木学会 教育企画・人材育成委員会 成熟したシビルエンジニア活性化小委員会は、2007年度から5年おきに、「シビルエンジニアの定年退職後の活動に関する意向・実態調査」と題するWEBアンケートを、若年層からシニア層までのすべての年代のシビルエンジニアを対象に実施しています。
シニア土木技術者を取り巻く状況が変化していることを踏まえ、2022年度(2022年12月~2023年2月)も、調査を実施しました。
これから、アンケートを分析した結果を、テーマごとにアップしていきたいと思います!

シビルエンジニアの定年退職後の活動に関する意向・実態調査

皆様こんにちは。

2007年度から5年ごとに継続して共通の設問を中心に調査してきましたが、それぞれの時代に合わせて追加した設問があります。今回は、2022年度調査で追加した設問の結果をお知らせします。

分析対象者

 分析対象は、2022年度調査の全回答者です。

図 2022年度調査の回答者数(3,318名)

2022年度に追加した新たな設問と結果

 前回調査は2017年度ですので、それから5年の間に社会情勢が大きく変化しています。
 2018年、2019年と大きな台風や豪雨被害が続きました。気候変動の影響は今年の猛暑や山火事にも表れていますね。2019年末から世界に拡大した新型コロナウイルス感染症、2020年春には日本でも感染者が増え外出自粛になりました。2020年に予定されていた東京オリンピックは1年延期になりました。まだ感染症拡大がおさまらない中、2021年に東京オリンピックが開催されました。そして、昨年2022年2月、誰もが予想しなかったロシアのウクライナへの侵攻。現在もなお戦争状態が続いています。これらに伴い社会や経済も様々な影響を受けました。
 ということで、「昨今の社会経済情勢変化の影響」を問う設問を追加しました。また、新型コロナウイルス感染症の影響で、外出や面会の自粛など社会生活にも大きな制限がありましたね。働き方もリモート会議やテレワークなど出勤せずに業務を行うような変化がありました。こちらについても「働き方の変化」の設問を設けました。
 そして、ダボス会議(世界経済フォーラム年次会議)や岸田総理の発言でも話題になった「リスキリング(技術革新などに対応するため学ぶこと)」に関する設問を追加しました。

昨今の社会経済情勢変化の影響

 社会経済情勢の変化による影響を業種別に見てみましょう。

図 昨今の社会経済情勢の影響

 どの業種も最も影響が大きかったのは「新型コロナウイルス感染症の拡大」でした。おおよそ3割が影響を感じています。ついで、「資材価格の高騰」となっています。「資材価格の高騰」や「円安」など経済への影響は、業務に直接関連がありますから無視できませんね。「ロシアのウクライナ侵攻」や「気候変動」の影響も共通して1~2割みられます。
 一方、「影響がない」との回答も1~2割ほどありました。学校は企業や官庁より影響が小さいようで、「影響なし」の割合が3割です。

働き方の変化

 働き方の変化を業種別、職種別にみてみました。
テレワークの実施割合で0以上を入力した方をテレワーク実施者とみなし、回答者数に対するテレワーク実施者数の割合をテレワーク実施率として計算しました。また、テレワークの実施割合を週5日に対する実施割合に換算しました。

図 テレワーク実施率(業種別)
図 テレワーク実施率(職種別)

 どの業種、職種でもテレワークが実施されています。業種では、コンサルタント、鉄道、官庁・独立行政法人が多くなっています。職種では、研究職、行政職、企画職、技術職などが多くなりました。業種の建設業、職種の現業は、他の選択肢に比べて少なくなりました。また、テレワークの実施割合は、全体として週1回前後というところでした。業務の形態や仕組みなどから土木業界のテレワークの難しさが感じられます。

リスキリングへの対応

 まず、リスキリングに対する意識を年齢別、業種別に見てみましょう。

図 リスキリングに対する意識調査(年齢別)
図 リスキリングに対する意識調査(業種別)

 年齢別では、35歳以上の方は半分以上が「多少」あるいは「とても意識している」という回答で、何らかの意識をしているようです。若年層では「リスキリングを知らない」が、70歳以上の高齢者では「全く意識していない」の回答が増えてきます。
 業種別では、「意識している」方の割合は5割前後で大きな差はありませんでした。「リスキリングを知らない」との回答も2~3割ほどみられました。昨年2022年の新語・流行語大賞の候補になりましたが、まだ浸透していないようです。

 リスキリングは、企業や組織が従業員に対し職業能力の再開発を行うことですので、企業・組織のリスキリングの実施状況はどうなっているでしょうか。また、あわせて個人のリスキリング実施状況を聞いてみました。

図 企業・組織のリスキリングの実施状況

 電力、ガス、道路などのその他の企業・組織では半数弱が実施しているようですが、建設業、コンサルタント、鉄道では3~4割程度の組織がリスキリングを実施しているようです。組織の実施に対して個人の実施率は半分程度になりました。組織内での実施がない企業・組織でも個人で実施している割合も1割程度見られました。
 全体に、リスキリングへの対応は、これからのようです。

まとめ

 今回の分析では、社会経済情勢の影響、働き方の変化、リスキリングへの対応を取り上げました。
 土木技術者は、感染症や円安の影響を受けている、テレワークは実施されているが頻度はそれほど多くない、リスキリングへの対応はあまり進んでいないことがわかりました。
 今回の調査分析が、皆様の参考になれば幸いです。
  
                       2023.●.● 執筆:たま

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