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映画界の巨匠たちとハイファッションのコラボレーション

この状況下、通常のランウェイショーを中止し、デジタルムービーでの新作発表を行うブランドが圧倒的に増えました。映画さながらの演出やコンセプチャルな表現が増え、ランウェイショーより効果的に世界観を発信できているブランドもあります。

本日はデジタルムービーの演出で、映画界の巨匠たちとコラボレーションしたビッグメゾンのファッション・ストーリーをご紹介します。どの組み合わせもお互いの個性が際立った素晴らしい仕上がりです。是非ご覧ください。

1.Jim Jarmusch(ジム・ジャームッシュ)×SAINT LAURENT

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アンソニー・ヴァカレロがクリエイティブ・ディレクターを務めるサンローラン。SUMMER2021コレクションをショートフィルムで発表しましたが、その監督を手掛けたのはあのジム・ジャームッシュ。初期の「パーマネントバケーション」や「ストレンジャーザンパラダイス」、90年代の「ナイトオンザプラネット」などは僕も大好きな映画です。

このショートフィルムの出演者がまた豪華。シャルロット・ゲンズブール、ジュリアン・ムーア、クロエ・セヴィニー、インディア・ムーア、レオ・レイリーという顔ぶれ。とあるパーティ会場を舞台に、サンローランのドレスを纏った女性たちへ「フレンチウオーター」が順々に渡されていくストーリーは、ラグジュアリーでミステリアスな雰囲気。ジム・ジャームッシュとサンローランの世界が見事に融合した、美しいショートトリップを味わえるムービーです。

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2.Gus Van Sant(ガス・ヴァン・サント)×GUCCI

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昨年グッチはアレッサンドロ・ミケーレによる新たなコレクションを、短編映画を通して発表しました。監督を務めたのは「マイプライベートアイダホ」を始め、ファッション界でも尊敬の念を集めるガス・ヴァン・サント。「OUVERTURE of Something that Never Ended (終わらなかったものの序曲)」と名付けられた全7編からなるストーリーは、グッチと関わり深いスターやアーティストたちが集結し、新作コレクションを身に付け街中でのシュールな日常が映し出されました。
かなり見応えあります。日常に溶け込むグッチの洋服が、リアリティがありながらラグジュアリーで、とても際立って見えました。

主演は女優でアーティスト/パフォーマーのシルヴィア・カルデローニ。各エピソードにはビリー・アイリッシュ 、ジェレミー・O・ハリス、ハリー・スタイルズ、フローレンス・ウェルチなどが登場。

Q.なぜ、ガス・ヴァン・サントを選んだのか?

ガスと働けるなんて、本当に光栄だ。彼の「マイ・プライベート・アイダホ(My Own Private Idaho)」を見たのは、30年以上前。感動した。自分自身が何者なのかをより深く理解できるようにり、以来、Tシャツに茶色のコーデュロイパンツを合わせ、ケープのようにフェイクファーのコートを羽織っている。全ての指に指輪を、両方の手首にバングルをつけるようになったのも、あれ以来だ。
ーアレッサンドロ・ミケーレ

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3.Wim Wenders(ヴィム・ヴェンダース)×JIL SANDER

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今ファッション界で最も注目されるデザイナー・デュオ、ルーシー&ルーク・メイヤー夫妻がディレクションするジルサンダー。彼らのファーストコレクションとなった2018年春夏のキャンペーンヴィジュアルは、「パリ、テキサス」や「ベルリン・天使の詩」で知られるヴィム・ヴェンダースが手掛けました。

ルーシー&ルーク・メイヤー夫妻の持つミニマルで現代的な感性がジルサンダーの洋服に宿り、その都会的で静謐なムードをヴィム・ヴェンダースが余すところなくムービーに落とし込んでいます。全5編で展開され、どの作品も短い時間にブランドの魅力が凝縮されています。個人的には、エレベーターでの男女のやり取りを映し出したエピソード3が好き。メンズ、レディースで同じようなヴィジョンを持つジルサンダーの世界観をうまく表現しているなと思いました。

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JIL SANDER 2021-22年秋冬メンズコレクション

最後に先日発表されたジルサンダーの2021-22年秋冬メンズコレクションが素晴らしかったのでご紹介。現在のジルサンダーは、ジルサンダーご本人が残したレガシーを受け継ぎつつ、どこかキャッチーな面を持ち合わせているのが魅力。ファブリック・ファーストと呼べるくらい素材にこだわり、シルエットはあくまでも現代的に。ルーク・メイヤーが手掛けるOAMCより、ちょっと大人顔でフェミニンなイメージでしょうか。とにかく「今」を表現する素晴らしいクリエイションです。

キーワードは、もろさと強さ。フランスの老巧化したシャトーで撮影されたショートフィルムの映像は、モデルたちが途方もなく建物内を彷徨う姿からも、どこか寂しげなムードが漂っている。「パンデミックと距離的な問題で、昨年2月上旬から家族に会っていません」とUS版『VOGUE』に語ったルークは今季、自分の弱い部分を包み隠さずにさらけ出し、コロナ禍に感じる孤独感に焦点を当てた。ただ、その感情を強く押し出すのではなく、純粋なレンズを通して安心感や心地よさを投影している。

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