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日本の防衛に5G通信がもたらす革命

はじめに

近年、世界の安全保障環境が急速に変化する中、日本の防衛力強化は喫緊の課題となっています。本記事では、特に5G技術に焦点を当て、防衛テクノロジー(防衛テック)が日本の防衛にもたらす革命的な変化について詳しく見ていきます。

防衛の未来:3つの地平線

防衛組織の未来は、「3つの地平線」によって形作られると考えられています。これらの地平線は、防衛組織のあらゆる側面に影響を与え、その中心には「コネクテッド・エンタープライズ」があります。

地平線1:コネクテッド・エンタープライズ

多くの防衛組織は、F-35戦闘機やP-8ポセイドンなどの第5世代プラットフォームの獲得に多額の投資を行っています。これらは非常に高性能なプラットフォームですが、その接続性が第2世代や第3世代の旧式な通信システムに依存している場合、その効果は制限されてしまいます。

敵の意思決定サイクルの内側に入ることがこれまで以上に重要になっており、そのためにはほぼリアルタイムの共通作戦状況図/意思決定支援能力が必要不可欠です。ここで、5G技術が多くの解決策を提供する可能性があります。

5Gがもたらす革命

5Gは単なるモビリティの進化ではなく、真に革命的な飛躍です。その理由は主に二つあります:

  1. 指数関数的な力:5Gの速度は4Gの10倍以上で、理論上は20Gbps(ギガビット/秒)に達する可能性があります。また、遅延は4Gの約100ミリ秒に対して1ミリ秒未満です。

  2. エンタープライズ主導:5Gの展開は消費者ではなく、企業や組織が主導します。

5Gは1平方キロメートルあたり100万のアクティブな接続をサポートするため、センサーを遍在的に展開できます。すべてをすべての人とリンクする機会を提供します。その巨大な帯域幅は、ワークロードにほとんど影響を与えずに拡張知能をサポートし、より現実に近いリアルタイムの共通作戦状況図を可能にします。

日本の防衛への影響と機会

  1. ネットワークスライシング: 5Gのネットワークスライシング機能により、同じ帯域幅内で多層的なセキュアなアクセスが可能になり、各「スライス」内で異なるレベルの暗号化を実現できます。これは、日本の防衛情報の保護と共有に革命をもたらす可能性があります。

  2. モバイル作戦の強化: 適切に装備されたドローンわずか3〜4機と、100機程度のデコイドローンを使用することで、機動旅団に5Gの通信環境を提供することが可能になります。これにより、日本の自衛隊の機動性と情報共有能力が大幅に向上する可能性があります。

  3. 革新的な訓練方法: 実際のフィールド訓練と合成環境をリンクさせることで、より包括的で現実的な訓練を低コストで提供できます。これは、日本の防衛予算の効率的な使用と、自衛隊員の能力向上に大きく貢献するでしょう。

  4. サイバーセキュリティの強化: センサーが相互に通信し、人間の介入なしに決定を下す必要がある可能性があるため、セキュリティはさらに重要性を増します。日本の防衛組織は、IoTに悪意のあるコードが注入されていないことを確認する必要があります。

日本の防衛における5G活用の課題と対策

  1. 技術導入の加速: 日本は5G技術の民間での導入では世界をリードしていますが、防衛分野での活用にはまだ課題があります。政府と防衛産業の連携を強化し、5G技術の防衛応用を加速させる必要があります。

  2. セキュリティ対策の強化: 5Gネットワークの広範な展開に伴い、サイバー攻撃の脅威も増大します。日本は、5G時代に適応したサイバーセキュリティ戦略を策定し、実装する必要があります。

  3. 人材育成: 5G技術を防衛に活用できる専門家の育成が急務です。産学官連携のもと、次世代の防衛テック人材を育成するプログラムの構築が求められます。

  4. 国際協力の推進: 5G技術の防衛応用は国際的な課題です。日本は同盟国、特に米国との協力を深め、技術開発や運用ノウハウの共有を進めるべきです。

  5. 法的・倫理的枠組みの整備: 5G技術の防衛利用に関する法的・倫理的な枠組みを整備し、透明性と説明責任を確保する必要があります。

結論

5G技術は、日本の防衛に革命的な変化をもたらす可能性を秘めています。リアルタイムの状況認識、高度な意思決定支援、革新的な訓練方法など、その影響は多岐にわたります。しかし、これらの可能性を現実のものとするためには、技術導入の加速、セキュリティ対策の強化、人材育成、国際協力の推進、そして適切な法的・倫理的枠組みの整備が不可欠です。

日本が5G時代の防衛テックを効果的に活用できれば、変化する安全保障環境において、より強靭で効果的な防衛体制を構築することができるでしょう。早期に行動を起こし、この技術革命の最前線に立つことが、日本の安全と平和を守る上で極めて重要となります。

参考文献
https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/dk/pdf/DK-2019/11/Future_of_defence_final_DK.pdf


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