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vol.2 野中光 「地球上の外国人と友達になることが、争いを防ぐセーフティネットになるかもしれない。」

沖縄の社会変革をテーマに、企画・コンサルティングを手がける「琉球ミライ株式会社」、"世界中1ヶ国ずつに友達がいることを当たり前に"をコンセプトに出会いや体験の機会をプロデュースする「HelloWorld株式会社」。

このふたつの会社を設立し、代表取締役を務める野中光(のなか・ひかり)さんの頭の中を探ります。

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野中光(のなか・ひかり)
琉球ミライ株式会社 代表取締役/HelloWorld株式会社 代表取締役
1986年伊江島生まれ・首里育ち。琉球大学在学中、アジア8カ国を流学。各国の自然・文化の豊かさや人の温かさに触れる。東京でのコンサルティング会社勤務、東北での震災復興支援の経験を経て、2013年沖縄にUターン。沖縄県内各地の地域振興の推進や、大学生の人材育成と中小企業の経営革新を目指した長期実践型インターンシップの仕組みづくりに取組む。2016年秋より現職。観光、地方創生、イノベーション・産業集積、起業促進、起業家教育のプロジェクトを運営。Singularity大学 Exponential Foundation Series 1期生。キャッチコピーは「万国津梁の精神で突き進む!」。
聞き手 CI stock チーム
CI stock(シーアイストック):会社や経営者、働く人々の継続的な発信をサポートするサービス。定期的に取材を行い、映像や文章を制作する。
CI(Corporate Identity)をstockし続けることで、日々アップデートされる取材対象者の思考整理および言語化、セルフメンタリングを手伝い、社内メンバーとの意思疎通や社外への広報活動としての活用を前提としたコンテンツづくりを行う。

現実味のない選択肢を消し、今できることにフォーカスした

CI stock 前回、野中さんがなぜ「琉球ミライ株式会社」と「HelloWorld株式会社」を立ち上げたのかを遡りましたが、ふたつの会社が生まれる源泉には『まちなか留学』があり、一番やりたいことで、大事にしていきたいことなのかなと感じました。なので、今回は『まちなか留学』について深堀していきたいなと思っています。

野中 ぜひぜひ、お願いします。

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まちなか留学
沖縄県内の日本人と外国人が異文化を体験する機会を創出するプログラム

CI stock 『まちなか留学』の初回はいつだったんですか。

野中 2018年頃かもしれないです。(※正確には2016年と後日訂正あり)

CI stock 『まちなか留学』をやりたいなと思い始めたのは。

野中 2015年くらいから。漠然とずっと思ってたんですよ。2011年に大学を卒業して東京と仙台で働いたんですけど、全てのお金を失って、沖縄に帰ってくるわけですね。被災地へ行って震災の復興に貢献するつもりが、自分の復興のために沖縄に帰ってきたんです(笑)。そのときにはすでに、国際交流系の事業をやりたいと考えていて。

最初は海外留学のプラットフォームを作りたいと思っていたんです。でもどうやってホストファミリーを開拓するのかわからなかったし、海外での繋がりもなくて。ホームステイ先を探すためには、現地へ行くためのお金もかかるし、時間もかかるし。だからまずは沖縄のなかでやってみようと

県内のベンチャー企業で働きながら、テスト的に外国人と日本人の交流会みたいなことをやってたんです。「カレーは世界をつなぐ!」とか言って、万国津梁カレーパーティを定期的に開催したりして。

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各国ならではの文化に触れられる異文化交流会を自主的に開催
○ International Sushi Party (2016年1月)
○ Asia Food Party (2016年11月)
○ Thanks Giving Day (2016年11月)
○ イタリア人とピザづくり(2017年1月)
○ 餅つき&書き初め (2017年1月)

International Sushi...

Posted by 野中 光 on Sunday, November 27, 2016

【Hello World!】Asia Food Party!...

Posted by 野中 光 on Wednesday, November 23, 2016

野中 あまり手応えもないまま試行錯誤してた時期なんですけど、そのカレーパーティに参加した方から「自分の子ども向けにやってくれないか?」という話があったので、交流会を子ども向けにシフトしてみたら、喜んでくれる人が出てきたんです。そのとき、この形でいいんだと。

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CI stock できることを、今見えてる範囲のなかでやる。

野中 そうそう。ニーズだけじゃなくて現実性ですね。どうしたらできるのかを突き詰めた結果『まちなか留学』にたどり着いたって感じです。たとえ国内にいてもできることがあると気づけたのは、大きな転換地点でしたね。

日本で孤立している外国人をどうにかしたい

CI stock そもそも、国際交流の場を設けたいと思ったきっかけはどこにあったんですか。

野中 高校生のとき留学したんですけど、全然英語が話せなくて。「Where are you from?」って聞かれて「I’m fine!」って答えるレベル。留学先の高校に通い始めて3日くらいはそういう状態だったから、いじめられて。給食時間にポテト投げられるみたいな。

CI stock え〜(驚)。

野中 4日目くらいにギターの授業をとったんです。友達がいなかったから早めに教室へ入って、日本から持ってきたベースをブンブンブンって弾いてたら、はじめて友達ができました。その友達との出会いでアメリカ留学がすごくいいものになったんです。

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それから20歳で旅をしたときにも、現地の人たちにすごく良くしてもらいました。

海外へ行ったとき、外国人という立場でとてもお世話になったという経験があったんです。

一方、日本にいる外国人は、なかなか日本人と打ち解けてなくて。長く日本に住んでるけど日本語を喋ることができないとか、日本人の友達が全然できないという話を聞いたときに、海外へ行ったとき自分はよくしてもらったのに、日本にいる外国人を孤立させてしまっている。その状況をどうにかしたいと考えるようになりました。もっと外国人と繋がりたいという自分自身の動機もありますけど。

CI stock それだけじゃない。

野中 外国人が困っているという実情が、行動へ移す意味や意義になりました。日本人の子どもを持つ保護者の方々も、留学へ行かせたいけどまだ若いからとか、お金かかるからとか、いろんな問題があって実現できていない。

だから外国人にとっても、日本人とっても役に立つことがありそうだなと思っています。

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120ヵ国以上の外国人が住んでいるんだったら、沖縄のなかで世界一周できるやっし!

CI stock 『まちなか留学』は、日本人だけでなく、県内に住む外国人にとってのニーズでもある、というのは私にとっても発見でした。

野中 沖縄には100ヵ国以上の外国人が住んでいるんです。入国管理局のデータによると、昨年は120ヵ国だったんですけど、今年は124ヵ国と増え続けています。でも実際、それだけの外国人と会えてないじゃないですか。そのギャップを『まちなか留学』で繋いでいきたいなと。

CI stock HelloWorldのウェブサイトにはこう書かれています。『120ヶ国、約7万人が住んでるなんて、ワクワクしませんか?』。確かにワクワクする!って共感したんですけど、野中さんにとっての「ワクワク」感って、何に対するワクワクですか?

野中 海外旅行とか行くとテンションあがるじゃないですか。そんな感じ。実際に海外へ行くわけではないけど、外国人の方と出会うことで"一部"を知ることができる

CI stock "一部"って例えばどういうことですか?

野中 食生活とか、文化とか。五感でいうと、食は味覚だし、嗅覚もいろいろあるじゃないですか。スパイスの香りとか、家の中のお香とか。聴覚だと音楽とか。触るものだと、工芸品とか。素材が違ったりする。

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野中 それに、出会った人と友達になることは、海外へ行かなくてもできること。世界一周って一度は憧れると思うんですけど、実際は行けないじゃないですか。

CI stock 現実的には難しいですよね。

野中 でも、120ヵ国以上の外国人が住んでいるんだったら、沖縄のなかで世界一周できるやっしって思って。それってすごいなって。

CI stock 飛行機や船に乗らなくても、沖縄という島のなかで様々なことを吸収できると。

地球上の外国人との出会い方を変えていく

野中 私の子どもは今3歳なんですけど、小学1年生になったら毎月『まちなか留学』に参加させようと思ってるんです。小学校から中学校まで9年間続けたら、108ヵ国の人に出会えるんですね。夏休みは住宅ローンのボーナス払いみたいに回数を増やせば、120ヵ国を制覇できるかもしれない。これってすごくないですか!?

CI stock すごいです!

野中 子どもたちがこれから生きていく社会って、今まで私たちが生きてきた社会と、たぶん違う。そう考えたときに"価値観"ってすごい大事じゃないかと思うんですよ。世界中に友達がいる子どもって、すごい平和的な感覚を持って育つんじゃないかと思ってるんです。

CI stock "平和"っていうのは、どういう意味での平和ですか?自分と異なるものを受け入れるとか、戦争に相対する意味での平和とか..。

野中 そうですね。"知らない"ということが紛争を生んでるかはわからないですけど、"知る"ことでいろんな問題解決の糸口が作れるんじゃないなと思っています。

世界中に友達がいることがもっと当たり前になったとき、自分と繋がりのある国とはなかなか戦争できないよなって。繋がることがセーフティネットになるというか。戦争だけの話じゃなくて、他の国で自然災害が起きたときにも、助けたいって感じると思うんですよね。だから、人と人が繋がっていることって、大事なことだなって思うんですよ。

CI stock どこかで何かが起きたときに、「○○ちゃんの国なんだな」って思えることで、他人事じゃなくなりますよね。

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野中 これを個人単位じゃなくて、どうやって世の中全体で可能にするか。facebookは、知っている人と繋がることを当たり前にしたじゃないですか。

「HelloWorld」は、普段は繋がらない外国の人たちと繋がるインフラみたいなものを作れたらと思っています。このインフラが社会的に認知されて、当たり前に使えるようになったとき、ものすごいことが起きるんじゃないかなと思って。

CI stock 確かに、すごいハッピーな感じがします。

野中 そうなんですよ。『まちなか留学』は、単に沖縄の中でいろんな国の人と出会えますっていうサービスじゃなくて、地球上の外国人との出会い方を変えていく。簡単に繋がれるものにしていく。そういうサービスにしていけたらなと思っています。

(2021年5月27日)

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次回は、実際に『まちなか留学』を体験した方々のエピソードについて伺います。

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 vol.1 「沖縄でイノベーションが起きない理由はない


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