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コロナ禍の中でも、震災復興のため、活動を決してゼロにしない。

一般社団法人「おらが大槌夢広場」は、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた大槌町で、復興と語り部活動を行ってきた一般社団法人。新型コロナの影響は大きく、特に語り部活動では、予約されていた来訪者は激減し、収入とともに活動の存続そのものが難しい状況に陥りました。そのような中、コロナ禍を乗り越えようと奮闘されている「おらが大槌夢広場」代表理事の神谷未生さんに、お話をお聞きました。

ーまず、おらが大槌夢広場の活動概要について教えてください。

【行政ができないことは、自分たちで…】
東日本大震災が発生し、大槌町は津波の被害を大きく受けました。
町役場も被災し、町長を含む1/3の職員が亡くなり、行政は機能不能な状態になってしまったのです。そんな中、大槌を自分たちの手で何とかしていこうと、地元の人達の間で団体が発足しました。行政ができないことは、何でも自分たちで引き受ける・・・子ども支援、高齢者支援、起業家支援、単発イベントなど、とにかく何でも目の前のことに取り組んできました。

【参加型ワークショップで、参加者の記憶に残る体験を…】
現在は、被災地での語り部活動を、企業研修や修学旅行などで行なっています。この活動では特にワークショップ型にすることを意識しています。参加者に震災の話を見る・聞くことも重要なのですが、それだけでは参加者の記憶に残りません。ワークショップで感じたことを"アウトプット"してもらうことで、皆さんの記憶に定着できると考えています。

【語り部活動は、大槌町の未来につながる活動】
さらに、この語り部活動を軸に、町の活性化や未来への育成事業も行なっています。町外の人との交流は、町の活性化にもつながり、町内の中高生の育成にもつながります。実は大槌町内に新しい素敵な公民館と、その中に震災伝承室も完成し、まさに外部との交流を活性化させようとしていました。そんな矢先に、新型コロナがきてしまいました。

ーコロナの影響について教えてください。

【予約が0に…】
 やはり緊急事態宣言後の4~6月、企業研修や修学旅行、そしてゴールデンウィーク観光などの予約が「0」になってしまいました。8月中旬くらいから東北地方内での修学旅行はOKになり、少しずつ予約が出はじめていますが、企業研修等は今年度は全部キャンセルになったままです。
 また、県内の人の対応も「県外の人が来る」ことに拒否反応があるようです。県内の感染者数がながらく0名だったのですが、逆にそれが「いかに0名を守り抜くか」という保守的な意識になってしまったようです。

ーコロナの影響の中で、神谷さんが一番強く考えられていたことは何ですか?
【合言葉「活動を、ゼロにはしない」】
「予約が0」なので、収入も0になり、団体の存続も危ぶまれました。「活動すると経費がかかるので、コロナの間は活動を休止しては?」という声もありました。
しかし私たちは、「ゼロにはしない」ということが大事だと考えました。「1を2にするのと、0を1にするのでは全然労力が違う」と思っています。例えば、語り部を担当されている方も、「震災の話を全くしない期間(ブランク)があると、その後うまく話ができない」と言われる方がいらっしゃいました。また、5月頃フードバンクをやりたいというお母さんがいまして、その時はおらが大槌夢広場に参加する形で助成金を取得し、活動することができました。団体としては何としても存続しておくことで、プラットフォームとして、地域全体に貢献することができますが、一旦途切れてしまうと、再起動することはなかなか難しいと思います。ですので、細々とでもいいから、おらがの活動を続けていきたいと思います。

【オンラインの限界】
 コロナで大槌を訪れる人が減っている現状で、個人向けの語り部活動をオンラインで行っています。しかし、ワークショップを通じた学びを重視する私たちには、オンラインでの語り部活動には限界があると考えています。例えば修学旅行の代替として、子供達が体育館に集合し、大きなスクリーンで語り部の話をするオンライン企画をやってみました。しかしやはり、話すこちら側も手応えがなく、きっと参加された子供達も、何かのテレビを見せられているような感じだったのではないでしょうか?
インターネットの活用は、今後も続けていきますが、今の形では、本来のやりたいこととはズレてしまっていると感じています。

大槌_コロナ禍の今の受け入れ風景2

※コロナ禍の今の受け入れ風景

ー現在、NPO活動を続けていく上で、具体的なお困りごとは何ですか?

【ITスキルの不足】
 語り部活動としてのインターネットは消極的ですが、やはり会議や経理、資料作成など、団体の運営にはITスキルが重要です。一方で、語り部には高齢の方も多く、ITスキルが強い人が不足しています。マニュアルを作ったりして対応してはいますが、それでも不測のことが起きるとそれに対応できる人がいないのです。例えば「Zoomで会議」の時にリモートでもいいのでホスト役や補佐役をしていただける人がいたら嬉しいなと思います。

ー今後の活動についてはどのようにお考えですか。

【大槌町内での語り部活動 〜震災から10年 震災を知らない小学生】
 震災から10年が経ち、震災を知らない世代が増えてきています。今では小学3年生くらいまでは当時のことを知らないんですよね。また、町民からは町も復興してきれいになり、「今更何も語ることはないのでは」という意見もあり、震災前と同じように閉鎖的になってきているように感じます。そういった中で、今は外部の方向けの活動とともに、大槌町内の方向けの活動を行ってみてもいいのでは、と考え始めています。

【海外の方にも発信したい】
 海外の方に向けてもアプローチしたいなと考えています。3.11はかなり大きな出来事で、日本人のみならず海外の方も震災について、津波の映像など鮮烈にイメージを持つことができます。ある意味、メッセージ性を持っている災害だと思うのです。海外に広げていくことで、改めて日本人もこの震災に立ち返り学びを得られるのでは、そんな風に思っています。

大槌_大槌湾に浮かぶ「ひょっこりひょうたん島」からの道

※大槌湾に浮かぶ「ひょっこりひょうたん島」からの道

<一般社団法人おらが大槌夢広場>
http://www.oraga-otsuchi.jp/

#新型コロナウイルス , #東日本大震災 , #NPO , #語り部

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