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ちいさな、オルゴール

こちらは『 # 山根あきら 』さんの企画への投稿作品です。

企画立案ありがとうございます。

ルールは以下です。

①「 #青ブラ文学部 」のタグを付ける。
可能ならこの記事を埋め込んでください。
②「小さなオルゴール」という言葉をタイトルまたは本文中に使用してください。
③締め切り | 2024.5.5 (日)まで。
④ご応募していただいた作品は、私のマガジンに登録したり、ご紹介することがあります。あらかじめご了承ください。

~5.5#青ブラ文学部お題「#小さなオルゴール」

じいやは、言うた
欲深女め
小さな、オルゴールに
閉じ込めてやる
王妃を継いだ、
女は角張った
ひいさま、なやんだ
ままが、ははがわからぬ
わからぬうちに
箱のなか
じいやが言うには
開けては、ならぬ
鳴っては、ならぬ
やっこの欲が出てくるために

しかし、ははに
会うてみたい
ひいは、巣立った
ははをにぎって、森の魔女
タバコを吸うて
魔女は語った
「そんなら、藪の
城の鬼を、頼れ
長い旅の、知恵になる」
そんなら、コクと
うなずいて行った

藪の、影から、盗賊、出でる
ははの箱は、やからの手のうち
ひいは、泣いたが、
お城に、行った
鬼は迎えて、
怒涛に怒り
「そんなら、着の身着
一式やろう、
きっと、会えるよ
また会う時に、こえを聞き」
鬼が編んだは、
毒の実生やす、蔓で
編んだ、身ぐるみひとつ
ひいさま、抱いた
抱くもの、盗られなんだ
なんだになったが
手に抱きたいもの、藪の外
「そんでは、
海の、くじらを頼れ
世界をよく知る、くじらを頼れ
歌うくじらの、せいに乗れ」
ひいさま、泣いたが
海まで歩いた
ひとり、歩いた
オルゴールの値は
よくついた
つけた値の者、音を鳴らして
金銀宝に身を堕した

ひいさま、
せいの皮を病んだが
浜辺に着いた
海に向かうてこう呼んだ
「くじら、くじらや
かあさま、箱に
魔法で、音に
変えられ、詰められ、
なけもせぬ
歌うくじらや、呪いを解いて
くれる者まで、乗せとくれ」
海が起こって、くじらがないた
「そんなら、海の果てまでゆこう
探しにゆこう
ただし、ほんとは、陸の上」
わかって、コクとうなずいた
乗ったくじらは、
どうどう、歌うた
世界の果てまで
裂けんばかりに助けを乞う歌
オルゴールまた人の手、伝った
よく荒れた
喧々囂々、血を出した
ひいさま、耳から血を出した
「そんでは、ならぬ
陸へゆけ
大樹の下の、きょうだい、頼れ
されば、薬のよく効くに」
ひいさま、泣いたが
陸行った

おかを行ったら、実のなった
大きな樹と、檻、
大屋敷
くじらの言うた
言葉を聞いた、屋敷のあるじ
仮面かぶってぬしは笑った
「そんなら、
まずは、お前に薬を塗ろう
痛い心は治せぬが、
したら、木の実をもいでゆけ
身によく効くが、
増えて止まらぬ
魔の実、効くなら」
コク、とうなずき
傷を癒やした
身は安らいだが、
耳と背、治らず
心は癒えず
主は笑って、果実を指した
オルゴールとて
あしからず
の鳴く傍で、長、首、落ちた
力比べで、見下して
ひいさま、もいだ
身ぐるみの中、無限に入る
夜まで、取った
檻見下ろせばけだもの吠える
屋敷の主が、弟呼んで
獣が鳴いて、ひいさま泣いた
「また、この傷は、治せぬか」
夜、笑わぬ主は
穴あき顔の血を拭いた
「そんでは、谷の
巫女様、頼れ
魔の祓い手を、よく習え」
顔を覆って、谷を指すれば

日の落ちたるを、数え損ねる
谷に行く間に、日は落ち損ね
谷にいる間は、昼間になった
くじらの歌を真似て歌った
巫女、顔出せば駆けて
膝つき祈りを唄う
ひいさま、首振り、教えを乞うた
「噂に聞きます、呪いの小箱
そんなら開けてみせましょうとも、
箱が手元に来たる時」
巫女も、くじらを真似て歌った
両の手合わせて、谷間に降りた
「魔の実を捧げ
とろけるまでに、日を当てなさい
とろけた実に歯を、
立てて祈れば
祓う力は、腹の中」
ひいはコクリと、頷きやった
身ぐるみひとつに、
無限に入れた
実を溶かしきれぬ、巫女に与えた
巫女は喜び、祈り場与え、
オルゴール、小さな跡を辿った
ひいさま、祈れど
時が過ぎるは、身の知らず
オルゴール鳴り、人成らず
妬けて狂うた者が捨て
陥れたと聞こし召し
ひいの体は日に焼けた

「魔女め」、と言うた
魔性の女め
小さな、檻に
閉じ込めてやる
女らは角張った
ひいも入った
巫女がいるから、ひいも入った
女どもめと賊が言うのは
巫女が言うには、オルゴール
鳴らせば欲の、かき立てる
真であったとくず折れた
「そんでは、音の、
鳴りを潜めるところを、待って
ははの箱を持ち出せ
立派な巫女さま、
よう成った」
賊の歩みの恐ろしき音は、
ひいさま、聞かずに
過ぎるを待った
オルゴール鳴り、欲の滾り、
音の奏では楽器にあらず
身ぐるみ剥いだ、
賊の手焼けた
コクと頷き、ひいさま立った
立って、招いた、
檻の中
賊は中、
鳴るははの箱
手ての中

裂けた体で、ははを抱き
穴開き顔で、笑み浮かべ
耳の片やで、音を聞く
背は焼けて、も痛まずに
まっすぐ帰ろ
すぐ帰ろ
いずこに帰ろ
道はどこ
オルゴールに手、伸びた手は
「我慢ならぬ」とむせび泣く
間違いとても、悔いはなし
道の忘れて、悔いはなし
歌を忘れて、悔いはなし
魔を忘れても悔いはなし
呪いまじない忘れて、
悔いはなし
ひいは惰に落ち、夢の中
「そんなら寝かせ」と
誰の言う
我の言う
つぶやき、損ねて、床の中
「誰か知らぬが、
ただ休め、
抱えて生きる旅さなか、
辛苦忘れて、ただ休め━━」
休めと言われて、夢の中
オルゴール持ち、ただ鳴らず、
取っ手が折れたも気付かずに、

ひいさま、言うた、
「箱の中
開けては、鳴った
鳴っては、言った
言の葉は、残っているの
まま、ははの
わからぬ内に、箱のそと
ははをわからぬ、
ひいもわからぬ
わからぬままに、無為にした」
ひいさま、抱いた
会いたく、発った
その明らかは、藪の中
赤子を抱いて
ひいは戻った
国はなかった
ちいさな、オルゴールを
瓦に置いて
ようよう、巻いて
その音を待った
ひいさま、だった、女が聞いた
希望のうたを、箱から出した
女はなやんで
その場を去った
角張った女は、置いていかれた
会うまでもなく、女であった
会うまでもなく、母であった
顔会うことなく、旅路を去った

オルゴール箱、王妃であった
開いて閉まらぬ
鳴って終わらぬ
希望のうたを、子のために
昔巣立った、子のために
己を巣立った、子のために
小さな、必ず、我が子のために

鳴りやまぬ


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 \ スベリコミー! /



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