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「主体性と自律性」この違い、わかりますか?メンバーが活躍するために重要なのは......

こんにちは!シンギュレイトnote編集部です。

「主体性や自律性を持って働いて欲しい」こう考えている経営者やマネージャーの方、いらっしゃいますよね。

ではここで質問です。あなたは、部下に「主体性を持った人材になって欲しいですか?それとも、自律性を持った人材になって欲しいでしょうか?」

この問いに対して、間髪入れずに答えられた方は、2つの意味を理解し、マネジメントされているのだと思います。一方、答えに詰まってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回は、「自律性と主体性の違い」から、持つべき方はどちらか?また、その持ち方について、シンギュレイト代表の鹿内がお話しします。

京都大学などの研究機関の教員・研究員として、ヒトの脳(認知神経科学)の基礎研究に第一線で従事。その後、大手人材企業でピープルアナリティクスの事業開発に取り組む中、株式会社シンギュレイトを設立。”信頼”をキーワードに、人と人との新しい関係・関係性を作り、新結合(イノベーション)を増やすことを目指す。ピープルアナリティクスの技術、学術研究などの知見を活用し、イノベーティブな組織づくりを支援している。1on1での話し方・聴き方を可視化する1on1サポーター「Ando-san」、イノベーティブな組織への変革を促す組織診断「イノベーション・サーベイ」を提供中。情報量規準が好き、漫画好き、サッカー好き。
話し手:鹿内 学,博士(理学)シンギュレイト 代表

似ているけど違う「主体性と自律性」

みなさんは「主体性」と「自律性」の違いを説明できますか?

よく似た言葉であり、似たような文脈で使われることの多い言葉ですが、「主体性」と「自律性」は明確に違います。僕(鹿内)が考える主体性と自律性の定義はこちらです。

  • 主体性:自身の行動が自覚や認識に基づいて行われているという”認知”

  • 自律性:裁量を与えられて、その範囲で他からの影響を受けずに”行動”できることで、自身の規律に基づく”行動”ができていること

主体性は、仕事を「自分事として捉えられているか」がポイントです。特に、やらされていると感じている状態では、仕事が自己に関わる問題として捉えられておらず、主体性がない状態と言えます。

一方で自律性は「裁量を与えられて」というのがポイントです。わがまま勝手に動ける状態を、自律性が高いとは言えません。自分がランダムで動くのではなく、与えられた裁量から自分で規律を作り、言われる前に行動できることが「自律性の高い」状態と言えます。

主体性?自律性?どっちが重要?

主体性と自律性の違いを明確にしたところで、2つの関係に触れたいと思います。

結論から言うと「主体性は自律性を発揮する原動力となるもの」です。自律性と主体性は仕事を進める上で、両方とも欠かせません。どちらか片方だけだけではうまく回らないのです。

自律性が高い人を集めると、マネジメントは楽になります。自律的で要領を得やすい方は「自分の仕事がこうだから、先んじてコレをやっておかないと……」と先回りして動けるためです。

そしてここでさらに重要なのがに「主体性があるかどうか」です。主体性を持っていなければ、その行動には「やらされている感」が出てきます。「やらされている感」がある人は、その仕事はあくまで他人事。自分事にはなっていないので、究極的には自分にとってどうでもいいものなのです。その結果、高いはずの自律性は徐々に発揮されなくなり、先回り行動は生まれません。主体性がないと、自律性が持続しない可能性が高くなるのです。

自律性を持っている人に、自分で物事を動かしているという感覚を与え、主体性を育む。「自律性と主体性の違い」を認識し、この2つを兼ね備えた人材を育てられるかがマネジメントの鍵と言えるでしょう。

仕事に対しての「自己主体感」をつくる

続いては、自律性の原動力である「主体性」をどのように育めば良いのかお話しします。

僕は、心理学における「自己主体感」という用語にヒントがあると考えています。自己主体感とは、「自分で行った行動を予測して結果通りになったときに、その行動は自分が行ったという認識がある」という意味です。

自己主体感は、身体の認知とも関わります。その例が「ラバーハンド錯覚」です。ラバーハンド錯覚とは、人工の手を自分の手のように感じる錯覚のこと。

「ラバーハンド錯覚」
被験者の手を隠し、被験者から義手が自分の手であるかのように見えるよう設置。続いて、隠した手と義手を同時に撫でたりつねったりを繰り返す。その後、義手だけを触る。すると、義手だけが触られているのに、あたかも自分の手が触られているような感覚が生まれてしまうという、身体感覚の錯覚が起きる。
ある実験では長年、慣れ親しんできた義手を手放さなければならなくなったとき、義手を外すときにあるはずの無い腕から痛みを感じるという例も。

これらの事実から、自分の身体をコントロールしているのは脳だということがわかります。義手に対して、その義手は自分が操作している、という自己主体感をもっているわけです。つまり、人は脳を介して自身の身体感覚を拡張することができるのです。

これを仕事に置き換えてみると、仕事に対して自己主体感を持てれば、一つ一つの施策が自分の身体のように感じられて主体性を保つことができる、と僕は考えています。

仕事に対して自己主体感を保つためには、仕事が自分の身体の延長であるかのように脳に錯覚させることが必要です。ではどう錯覚させればいいのか?「ラバーバンド錯覚」における「隠した手と義手を同時に触る」ような、脳に対して「これは身体ですよ〜」という呼びかけをする必要があります。

自己主体感をつくり、主体性を引き出す場

脳に対して呼びかけをする手段のひとつが「1on1」です。

「1on1」の中で「同一化的調整」を行うことで、仕事に対して自己主体感を持てるようになります。「同一化的調整」とは、メンバーが自発的にメンバー自身の目的と、組織の目的が同一であるかのように認識することを促すことを指します。

たとえば、実現したいキャリアプランがあるメンバーだとしたら、そのために必要な力が組織の仕事を行うことで身につくことに気付かせたり、社会貢献ができる仕事がしたいメンバーだとしたら、組織で行う仕事がいかに本人が望む形の社会貢献をしているか気付かせたり。

自分の目的のためなら基本的に人は主体的に動くという性質を利用して、仕事をすることと自己の目的とを一致させ、仕事に対して自己主体感を持たせるのです。

今回は「主体性」と「自律性」の違いから、その引き出し方についてお話をしました。主体性が自律性を引き立たせる原動力となり、両者がうまくかみ合うことで成果が生まれます。自己主体感をヒントにして、メンバーの主体性向上に取り組んでみてはいかがでしょうか?


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本記事は、シンギュレイトが毎週配信しているメールマガジンに掲載している代表鹿内のコラムを、シンギュレイトnote編集部が加筆修正したものです。メルマガ登録はこちらから。