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あなたは他者の"なに"を「信頼」しますか?意識しておくべき2つの信頼の対象とは

こんにちは!シンギュレイトnote編集部です。

シンギュレイトが、あらゆる場でお伝えしている「信頼」という言葉。ここでいう信頼とは、「不安な状況でも、相手に任せようと思える気持ち・行動」という意味です。「不安な状況でも」という条件が重要なポイント。

「信頼しろって言われても、任せることが不安な相手の何を信頼しろっていうんだ。」

と思う方もいらっしゃるかもしれません。そこで今回は、相手の何を信頼するのか?信頼の対象について、代表の鹿内に聞きました。

相手の何に対して不安に思っているのか?それこそが信頼すべき対象。信頼の対象を知れば、より相手のことを信頼しやすくなりますよ。では、本文へどうぞ!

話し手:鹿内 学, 博士(理学)株式会社シンギュレイト 代表取締役 / 一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員

京都大学などの研究機関で教員・研究員として10年ほど、ヒトの脳(認知神経科学)の基礎研究に従事。その後、大手人材企業でピープルアナリティクスの事業開発に取り組む中、2016年12月に株式会社シンギュレイトを設立。1on1での話し方・聴き方を可視化する1on1サポーター「Ando-san」と、イノベーティブな組織への変革を促す組織診断「イノベーション・サーベイ」を通して、組織開発を支援している。

2つの信頼の対象

僕(鹿内)、そしてシンギュレイトは、 『不安でも相手を信頼してください。』 と様々な場面でお伝えしています。 信頼が新しい関係・多様な関係性を作り出し、イノベーションを生み出すからです。今回は、相手の「何を」信頼すればいいのか、という「信頼の対象」について深ぼっていきたいと思います。

まず信頼の意味を振り返っておきましょう。信頼とは、「不安でもとりあえず任せる」という気持ちを抱く行動特性を意味します。信頼するために乗り越えなければいけないのが、不安という感情です。信頼には、この「不安」という感情が、必ずセットになっています。不安がなければ信頼ではありません(それは安心です)。

この不安を感じる対象は、大きく2つに分類することができます。

1つは、相手の「能力」です。新しい仕事を人に任せるときのことを考えてみましょう。仕事を任せる相手が、新しい仕事を成し遂げるために必要な能力を備えているかわからず、不安に思うことはないでしょうか?これが「能力」に対する不安です。

もう1つは、相手の「意図」です。信頼する相手が、仮に能力を持っていたとしても、自分が期待していた行動をしてくれるとは限りません。期待通りの行動をしてくれないどころか、悪意を持って行動し、自身に害を及ぼす可能性すらあります。能力だけ持っていてもダメなのです。相手がどういう意図を持って、その仕事に取り組んでくれているのか、本当のところはわかりません。これが「意図」に対する不安です。

このように相手を信頼するためには、相手の「能力」と「意図」の2つの不安を認識した上で、乗り越えなければなりません。

この2つの不安が、信頼の対象です。

 「意図」を信頼できないと。

「意図」への信頼について、1つ例を交えながらお話しましょう。とあるバラエティ番組でみたゲームの話です。

5人の出演者が1人1枚のカードを引きます。5枚の中には、1枚だけ悪魔のカードが混ざっており、それを引いた人が悪魔役です。悪魔を引いた当人以外の4人は、誰が悪魔かわかりません。その状況で、みんなで協力するゲームをやります。ただ、悪魔だけは意図的に失敗へと導くような行動をするのです。その悪魔の行動をかいくぐって成功できればクリア。そしてクリア後に「悪魔を当てる」というゲームです。

悪魔ではない人はクリアを目指して頑張るのですが、意図せず失敗してしまうこともあります。そのときに他の人から、「コイツが悪魔じゃないか?」と疑われてしまうのです。こうなるとゲームの最中、誰かが失敗するたびに不信がつのっていきます。「この人は、悪意をもってゲームを失敗させようとしているのではないか?許せない」と。

これを仕事に置き換えてみましょう。みなさんは働く中で、これと同じような感情を持ったことはありませんか?「みんながプロジェクト成功に向けて頑張っているのに......なんでこのメンバーは積極的に動いてくれないんだ」というような不信感です。

この不信感は「意図」を信頼できていないことから生まれるもの。意図を信頼できなければ、どこかで躊躇してしまいます。思い切って任せることは難しいのです。意図を信頼できなければ、中途半端になってしまい、新しいものを生み出す信頼の効果は得にくくなってしまいます。

あなたはどちらを重視する?

ここで「能力」と「意図」、どちらを重視すべきか考えてみたいと思います。

たとえば、誰でもできる単純作業ならば、能力への信頼はほとんどいりません。ちゃんと遂行する、という意図だけを信頼できればいいわけです。

では、大きなプロジェクトであったときはどうでしょうか?意図への信頼だけでなく、能力への信頼も必要になります。仮に、信頼して任せていたプロジェクトが大失敗に終わったとき、あなたは何を悔やむでしょうか?任せた相手が最後まで頑張りきれなかった「意図」でしょうか、それとも不足していた「能力」でしょうか。

努力できることも能力、と捉えれば、意図と能力は実のところシームレスにつながっているとも考えられます。また、複雑でゴールを明確に定義できないプロジェクトの場合、メンバーの意図をあわせるだけでも大変です。単にプロジェクトの成功を意図してもらうだけでなく、具体的にどの方向に向かうのか、という意図をあわせる必要があります。その意図を合わせることも能力と言えるでしょう。意図を信頼する、といっても単純なことではありません。

また、人には、頑張っているのに能力がなくて失敗してしまうのを許せてしまう、という心理もあります(失敗だったけど頑張ってくれてたからな〜、と思った心当たりはありませんか?)。

逆に、成功した時の「能力」は、もっと賞賛されてもいいかもしれません。意図は失敗しないために大事ですが、成功したいなら「能力」は必要です。

このように信頼には「意図」と「能力」の2つがあります。どちらも信頼することが大切ですが、どちらをより重視するかで、プロジェクトアサインでも、人材採用でも、その行動は大きく変わります。

この人は、能力はあるけど、力強くプロジェクトを進めてくれるだろうか?この人は、やる気や意図は信頼できるんだけど、能力的に足りているのだろうか?

どちらを選ぶかに正解はありません。ただ、どちらを選ぶかで結果も大きく変わってきます。あなたは「意図」と「能力」、どちらを重視しますか?ぜひ、考えてみてください。


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本記事は、シンギュレイトが毎週配信しているメールマガジンに掲載している代表鹿内のコラムを、シンギュレイトnote編集部が加筆修正したものです。