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映画『リング・ワンダリング』と私③

前回、本作品が作られるまでの流れに少し触れましたが、ではそもそも‘企画’という原点、その起因の発端を一般的に考えてみたいと思います。
大手の映画会社や関連的な制作会社に在籍した感覚で捉えると、‘売れるか売れないか’がほぼその判断軸にあります。
確かに会社は利潤を産み出すために存在しているので、それは前提条件という理解になります。その際、専ら原作モノであるところの‘漫画’‘小説’‘ゲーム’さらにテレビ局や広告代理店が主導する場合のテレビドラマ、テレビアニメーションの映画化。この辺りはまず日常的な方法論です。一定の該当カテゴリーのファン層からの支持を得られる目算が立てやすいからに他なりません。
次のパターンは監督、俳優、他社プロデューサーからの持ち込み企画にジョイントするケースがあります。これは原作モノもあればオリジナルの企画もあります。こちらの利点は提案者が予めバリューを持たれていたりするので、一定の支持を得られる構造と理解したならば協力できる流れが生まれます。
これらの方法論以外、つまり無名のクリエイターが映画制作に臨む方法論は企画内容のクオリティと合わせて新人登竜門のコンペティションでの評価、または海外での評価・受賞実績を基に独立的な制作スタイルを確立していくタイプ、ドキュメンタリー作品はその方法論で流れを掴む傾向が強いかと思います。

商業映画へのパッケージに連なる日本のシステムはそういう意味では閉鎖的であり、脆弱性を感じます。インターネットの普及の良し悪しもあるのでしょうが、日本のプロフェッショナリズムは大事な部分が継承されずに精神性が隅に置かれてしまっている感に茫然とする時があります。
その観点から、私は昨今の映画業界、またはマスコミで起きている一連の問題事案は制度疲労による警鐘だと解釈します。
メジャーにはメジャーの役割もあるので、一概に否定はできません。その置き去りにされた往年の日本映画に確かに存在した良心、いわば精神性や多様な価値観への表現理解を発信できる場として今はミニシアターが私はその役割を担っていると捉えています。

そうした意味も含めた明らかな日本映画における端境期、その突破口に成り得る3人の映画監督をここに挙げます。

濱口竜介   深田晃司   金子雅和

共通するのは世界評価基準にあって、日本のメジャーでは裾野を獲得するツールとは別のカテゴリーに置かれている存在だと見なされています。
もし映画ファンを自称しながら、この3名の監督作品を観たことがないとするならば、ぜひ観ていただくことをオススメします。
映画が備えていた豊潤で多様的な価値観、表現の深さ、人物洞察と突き詰め推敲された形を堪能することができるでしょう。

私的には金子監督作品に携わっていることもありますので新作『リング・ワンダリング』をぜひ最寄りの映画館で観ていただきたく思います。映画とは何か、改めて私はこの映画を通して考えていただく機会にしていただいても良いと思っています。

日本映画の未来のために、金子雅和監督をぜひ知ってもらえたら幸いです。

いよいよ来週、下関特別上映となります!

リング・ワンダリング

迷い込み、
巡り合う

2022.3.26(sat)-27(sun)
10:20〜 13:20〜 16:20〜 19:20〜

前売り:1,100円/当日:1,300円

上映館:シーモール下関2Fシーモールシアター
http://www.seamall.jp/shopguide/2f-theater/
山口県下関市竹崎町4-4-8

※前売り料金は3/25までのご購入の方に限ります。
・3時間無料駐車サービス
(会場まで駐車券をご持参ください)
・前売券取扱
シーモール1Fインフォメーションカウンターにて発売中

監督・金子雅和氏、
俳優・長谷川初範氏 舞台挨拶予定
(26日は全回、27日は1回目、2回目の回)

問い合わせ/株式会社cinepos(083-242-1868)


下関特別上映用トレーラーhttps://youtu.be/qK02RIWlFEQ

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