ヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』の劇中曲をリスト化する人がYouTubeに出てくるだろなと、案の定存在しました。
私の持論の一つに素晴らしい映画監督は音楽にも造詣が深くセンスに優れています。
先般、日本国内興収一億円を突破したニュースでも話題のフィンランドの名匠、アキ・カウリスマキ監督作品『枯れ葉』でも登場人物たちの心情を既成曲を絶妙にインサートして歌で表現していたのは記憶に新しいと思います。
敢えて台詞にして配役に語らせず、画と歌で観る側に推し量らせるテクニックは、選曲が秀逸であればこそ成立するものです。
ヴェンダース監督はこれまでのキャリアの上でも様々ロックへの造詣を物語ってきました。自身の監督作品で画と音楽というコラボーレーションをセンスワークとして表現し続けてきました。
ミュンヘン大学時代の卒業制作のタイトルは『都市の夏/キンクスに捧ぐ』という短編作品があり、そこから端を発し、不朽の名作『パリ・テキサス』ではスライドギターの名手、ロックギタリスト、コンポーザーのライ・クーダーを音楽制作に起用。『ベルリン・天使の詩』ではニック・ケイヴ&バッドシーズのライブパフォーマンスをインサート。『ミリオンダラーホテル』はU2のボノの原案からの作品。音楽も勿論ボノの監修とU2の曲も含まれたUKロックの空気感があります。そして何と言ってもヴェンダース監督の音楽映画と言えば『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』におけるライ・クーダーの尽力と彼と老キューバミュージシャンとのアンサンブル、キューバ音楽のダイナミズムの映画化が白眉です。
代表的なラインナップを並べるだけでもヴェンダース監督のハイセンスな音楽造詣が伺えます。
そして世間一般では、ヴィム・ヴェンダース復活を印象付けたと思われる『PERFECT DAYS』から映像と音楽の濃厚な遭遇に感動を覚えた方は多かったのではないかと思います。
主人公の役所広司演じる平山の姪の役を務めた中野有紗の台詞に「ヴァン・モリソン?」と言わせる演出に個人的に驚きと嬉しさが込み上げました。
まさに温故知新というより温故創新と言った方が現在を表しているかのように私には感じてしまう…『PERFECT DAYS』の幹ではないかと感じるのです。
改めて繰り返し聴きたくなる『PERFECT DAYS』プレイリストです。
【漁港口の映画館 シネマポスト 上映作品のご紹介】
『オスカー・ピーターソン』
監督:バリー・アヴリッチ
出演:ビリー・ジョエル、クインシー・ジョーンズ、ラムゼイ・ルイス、ハービー・ハンコック、ブランフォード・マルサリス、ジョン・バティステ、ケリー・ピーターソン(妻) 他
字幕:山口三平
原題:Oscar Peterson: Black + White
2020年 / カナダ / 81分/5.1ch
来たる2025年に生誕100周年を迎える鍵盤の皇帝、その波乱万丈の人生と音楽。シネマポストでこそ体感できる迫力の音響空間を堪能できる音楽ドキュメンタリーです!
ジャズフリーク、音楽ファン必見です。
3月22日(金)まで上映!
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