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大貫妙子のディスコグラフィから名盤として名高い坂本龍一プロデュースの3作品『SUNSHOWER』『ROMANTIQUE』『LUCY』を聴き比べてみます。

『SUNSHOWER』は1977年発表。ソウルフィーリング、フュージョンテイストと抑制された大貫さんのクールボーカルが相まってアレンジの聴き心地を堪能できます。演奏者もティン・パン・アレー関連から様々と申し分ないグルーヴ感に溢れたこれぞ70年代を象徴した洋楽フレーブな逸品です。この時代にこれだけのハイセンス且つハイクオリティなアルバムが制作されていたことに驚く方も多いと思われます。ただ当時はピンク・レディーを頂点とした歌謡曲全盛時代故に全くセールス的には振るわなかったとされています。

『ROMANTIQUE』は1982年の発表になります。ニューウェーブ全盛の時代でもあり、アレンジはシンセを多用しつつもやはりメロウに徹したツボを押さえたサウンドプロダクションは何度も聴きたくなります。YMOプラス大村憲司が演奏を務めています。このアルバムでは4曲のサウンドプロデュースを“トノバン”こと加藤和彦が担当し演奏をムーンライダーズが務めているのも面白く、恐らく加藤さんが当時いち早く注目していたキューバやブラジルのフレーブを醸していたりして、坂本龍一との対比も興味深いものがあります。

『LUCY』は1997年発表です。
こちらはまさに大貫さんの歌声とメロディを丁寧に伝えることを重視した、音数を絞り装飾を抑えたセンスの素晴らしさが光る、繰り返して聴きたくなる名盤です。サウンドプロダクションを殆ど坂本龍一が務め、アレンジで一部アート・リンゼイと共同で手掛けているのが特筆すべき点で、完成後に坂本龍一の口から完璧と云わしめたアルバムです。

2010年には大貫妙子&坂本龍一名義で『UTAU』が発表されます。共同プロデュースでもあります。こちらは本年アナログレコードと当時のライブのBlu-rayディスクが販売された根強い人気作品です。
全楽曲が坂本龍一の既発表のインスト楽曲に大貫妙子が詞を加える試みで制作されました。このアルバムについては別の機会でまた解説したいと思います。

上記の3枚のアルバムを通して、1970年代から1990年代それぞれの時代の色が味わえるという客観的な聴き方もありますが、超一流の才能同士がリスペクトし合って作り出された結晶は時間を経ても朽ちることは無いと深く感じ入れるのは大きいと思うのです。
リスペクトできる人との出逢いが自分自身の生き方を左右すると言っても過言ではありません。

時々聴いていただきたい、様々感慨に浸れること請け合いの『SUNSHOWER』『ROMANTIQUE』『LUCY』
坂本龍一プロデュースの大貫妙子の名盤です。

【漁港口の映画館 シネマポスト 次回公開作品のご案内】

監督・脚本:キリル・セレブレンニコフ 
出演:アリョーナ・ミハイロワ、オーディン・ランド・ビロン、フィリップ・アヴデエフ、ユリア・アウグ
2022年/ロシア、フランス、スイス/ロシア語、フランス語/143分/カラー/2.39:1/5.1ch/PG12
原題:Tchaikovsky's Wife
配給 : ミモザフィルムズ

‘旋律から戦慄へ’
天才作曲家の “世紀の悪妻”アントニーナ心をさいなむほどの狂愛を鬼才キリル・セレブレンニコフが衝撃の映像化

「白鳥の湖」「くるみ割り人形」などで知られる、19世紀ロシアの天才作曲家ピョートル・チャイコフスキーと彼を盲目的に愛した妻アントニーナの残酷な愛の行方をつづった伝記映画。

監督・脚本は、『LETO -レト-』『インフル病みのペトロフ家』の鬼才キリル・セレブレンニコフ。ベン・ウィショー主演の最新作『Limonov:The Ballad(原題)』が、第77回(2024年)カンヌ国際映画祭コンペティション部門で上映され、大きな反響を呼び起こすなど、今世界から最も注目される映画監督の一人である。





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