米アカデミー賞ノミネート作品『ドライブ・マイ・カー』圧巻の劇中劇に注目
(TOP画像:https://dmc.bitters.co.jp/)
いよいよ開幕する米アカデミー賞で日本初の作品賞受賞が期待される『ドライブ・マイ・カー』。長いセリフ回しや意外性ある展開など、独特の演出法を持つ濱口監督。
本作では劇中劇をメインストーリーと同時進行させることで作品に深い余韻を与えました。その実験的な内容やクオリティの高さは「映画の中だけではもったいない!」との声が多数。今回は作品の劇中劇について深堀りしていきます。
古典劇からゾンビ映画まで
ストーリーを盛り上げる「劇中劇」
劇中劇とは
本来演劇の中で登場人物が演じる劇のこと。劇(今回は映画)の中で演じることが「入れ子構造」になることで、演者と観客、現実とフィクションの境界があいまいになるなどの演出効果があります。
多くの傑作がありますが、古くはシェイクスピア「真夏の夜の夢」から最近では『カメラを止めるな!』のゾンビ映画が記憶に新しいところ。メインストーリーの示唆に富む内容だったり伏線が貼られている場合も多いため細部まで見逃せません。
実験的な多言語演劇「ワーニャ伯父さん」
『ドライブ・マイ・カー』の劇中劇は、西島秀俊演じる主人公の家福(かふく)が演劇祭の舞台監督を務めるチェーホフの「ワーニャ叔父さん」です。
多国籍の演者たちが母国語でセリフを語り、字幕を表示するという実験的なもの。韓国人女優の手話の演技も素晴らしく、この劇を最初から通しで観たくなるほどの密度の高い作品になっています。
また、劇が完成するまでの過程もドキュメンタリーさながらで、映画のストーリーは何層にも重なりを増していくのです。
そして迎えるラストは映画史に残るであろう上演シーン。筆者は映画館で“心震える緊張感”を体験しました。話題の『ドライブ・マイ・カー』、メインストーリーに引けを取らない劇中劇「ワーニャ叔父さん」を堪能しながら観賞することをお勧めします!
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