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1日10分のごほうび

小説は、長編よりも短編が好きだ。
短いエッセイも好きだ。

集中力が昔から短くて、200ページほどの文庫本を一日で読み切ることが出来ないことがコンプレックスだった。短編集なら、一話読み終わったところでその日は終わりにしても、罪悪感が無い。

一日一冊、寝る前の一時間で読み切れる友人たちに心底憧れている。

ひとりの作家による短編集ももちろん好きだけれど、アンソロジーも好きで本屋で目につくと手に取ってしまう。
今日、出会ったのはこの文庫。

私は、人生で初めて読んだ小説の作者が江國香織さんだったことが原因で、あらゆるところで「江國香織」という単語が浮き出て見える能力を身につけている。
今日も、その能力で、この文庫を見つけ出した。

江國香織さんだけでなく、ほんに贅沢な顔ぶれのショートショートアンソロジー。
私のうっかりを告白すると、江國香織さんの短編は、新潮社文庫から出ている『つめたいよるに』からの抜粋で、既読の作品だった。

しかし、買う前に確認しなくてよかった。
確認していたら買っていなかっただろうし、買っていなかったら中島京子さんの『妻が椎茸だったころ』も読めなかったのだから。

中嶋京子さんの作品は、今回が初めてだった。
『小さいお家』の映画は見たのだけれど、小説はまだ読めていない。

『妻が椎茸だったころ』は、妻に先立たれた初老の男性が、生前、妻が申し込んでいた高倍率のお料理教室に行かねばならぬことになり、慣れない台所仕事に取り組むところから話が始まる。
タイトルになっている『妻が椎茸だったころ』とは、一体どういうことなのか? その謎が、主人公の男性の目線で解かれてゆく。

料理の過程の描写が、とても愛おしい。
嫌々台所に立つ人間の、拍子抜けするほどうまくいったときの歯がゆさ(大体そういう時は、自分以外の何かのせいでうまくいかないことを願っている)と想像と違う結果になった時の腹立たしさ(思い通りにならないと馬鹿にされている気がする)が巧みに書かれている。

料理作りに失敗したことがある人みんなに、ぜひ読んでもらって一緒に共感してほしい。
講談社から出ている、中島京子さんの短編集に収録されている。



しかし。

私は本当に、料理にまつわる話が好きだな。
今まで気が付いていなかったから、まだまだたくさん読むべき本があるな。

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