【2022 映画感想 008】『ファミリー・ネスト』 閉塞感、とにかく閉塞感
1977年製作/105分/ハンガリー
原題:Csaladi tuzfeszek
配給:ビターズ・エンド
監督・脚本:タル・ベーラ
撮影:パプ・フェレンツ
編集:コルニシュ・アンナ
音楽:スレーニ・サボルチ、トルチュバイ・ラースロー、モーリツ・ミハーイ
出演:ラーツ・イレン、ホルバート・ラースロー、クン・ガーボル、クン・ガーボルネー
ブダペストに暮らすある家族の話。
住宅難のため、夫の両親と同居せざるを得ない状況で、事あるごとに対立する嫁と舅。
“ジョン・カサベテスやケン・ローチの作品を想起させる”と評されたらしいが、本作の前に『サタンタンゴ』しか観ていなかった私からすると、意外なドキュメンタリーテイストで、ケン・ローチというよりワイズマンを思い出した。また、台詞が多いのにも驚いた。
上に貼ったYoutubeの最初の方の映像にあるように、シーンの多くが顔のアップでの長台詞で、スタンダードサイズということもあって圧迫感がすごい。特に家父長的親父のネチネチしつこい叱責は、どうあっても逃れられない閉塞感を醸し出し、観ているこちらまで、もうほんとやめてよ、と苦しくなった。
軍隊帰りの夫はアルコール依存だし、舅の攻撃から妻を全然庇ってくれない。というか舅に太刀打ちできない不甲斐なさ。おまけにこの夫は(妻は知らないが)性犯罪まで犯していて、その後平気で妻を抱擁したりする。妻も後先考えずに飛び出したくなるのも無理はない。
それでも妻、夫、子の三人で遊園地に行って束の間の幸福を味わったり、という場面もあり、そういう雑多な色々が同じ地平で起こるのが、生きているということなんだなと改めて思う。
タル・ベーラ監督が22歳で撮ったデビュー作とのことだが、こんな重い、というか身もふたもないような話を映画にしようなんて、若いのにすでに色々大変な思いをしてきたのかなと思う。
本作についての監督の言葉。
「当時の私は、ただただ怒りに満ちていました。社会全体に対して、人々の置かれている最悪な状況を憎んでいました。映画づくりについてはほとんど何も知らず、お金もありませんでしたが、映画が大好きだったので、パンチのように人々に衝撃を与える作品を作りたかったのです。当時の人々のリアルな生活を見せられるような映画、そういったシンプルな思いで作ったのが『ファミリー・ネスト』です。5日間で撮影し、予算は1万ドル程度。キャスティングしたのは映画を始める前から知っている人たちです。こういう人たちが身近にいたのです」
(映画.comインタビュー記事より)
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