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オタク手記②〜推しの条件〜

美容院に行ってきました。
どうしてもこのイベントの前に…!と思ったら日時の選択肢がなく、初めて平日の夜に行くことになりました。
お客さんは私ともう1人だけで美容師さんも限られており、弾んでいない会話が店内に響きます。
気まずい空気から逃げ出したく、目の前に置かれたタブレットに手を伸ばしました。




推しの書く文章


美容院にありがちな、雑誌しか読めないタブレット。
雑誌を読む習慣のない私はカテゴリー欄をうろうろするばかりでしたが、あることを思い出しました。

「推しがエッセイを連載している雑誌があったではないか!」

SixTONESの松村北斗くんを推している私は、すぐさま旅行コーナーへと移動し、彼がエッセイの連載をしている東海ウォーカーを開きました。

1ページに綺麗にまとまった彼の文章は、人間らしさが表れていて親しみやすく、日常感のある適度なユーモアが私好みでした。
手持ち無沙汰で気まずかった空気も忘れ、バックナンバーも読み進めていく中で、漏れ聞こえてくる美容師さん同士の雑談も、上手くBGMとして処理することができました。




推し遍歴


彼の文章と肖像画シルエット(ジャニーズタレント特有のね…)をしばらく楽しんだ後、自分が今まで推してきた人たちのことを思い返しました。

私が誰かを推すことを始めたのは、小学校1年生の時でした。
当時、母親の影響でバレーボール中継を一緒に見ており、NEWSのパフォーマンスを目にしたことがきっかけです。
そこで出会ったのが手越祐也くんでした。
幼い私が、デビュー当初の幼い彼のどこに惹かれたのか、正直覚えていないのですが、彼が私の人生初の推しになりました。
次第に活躍の場を広げていった彼の、歌声とイッテQなどのバラエティで見せる姿が好きでした。

NEWSの活動を追い続けるうちに、グループ内推し変をしていました。(罪深い)
その相手は加藤シゲアキくんです。
彼が作るソロ曲が好きで、彼が書くブログが好きでした。
気がつけば彼は小説家になっていて、デビュー作である「ピンクとグレー」はずっと心に残る作品になりました。作中に出てくる「やるしかない、やらないなんてないから」という台詞を人生の大事な場面で今でも思い出しています。
彼に憧れた私は、高校で文芸部に入り、短編小説を書くようになりました。
私に文章を書くきっかけを与えただけでなく、アイドル以外の音楽を教えてくれたのも彼でした。
人生を変えた人を3人挙げろと言われれば、私は彼の名前を挙げるでしょう。
彼がラジオで紹介したゲスの極み乙女の「キラーボール」を聞いて、川谷絵音さんの作る音楽を好きになりました。

それから私は様々なアーティストの音楽に触れるようになりました。
川谷絵音さん、尾崎世界観さん、大森靖子さん。ライブに行くほど好きになるのはきまって歌詞が好きな人で、邦楽ばかりを聞いていました。

その後も私は順調に推しを増やし、オタク道を突き進んできました。



推しの条件


さて、ここまで長々と推し遍歴を述べてきましたが、ある共通点に気が付きました。

それは、

・声が好みであること
・紡ぐ言葉が魅力的であること

の2点です。

思い返してみると、過去に推してきた人はみんな歌を歌っているし、使う言葉に力があります。
話が面白いとか、書く物語が面白いとか、歌詞が素敵だとか表現方法は様々あれど、言葉を届ける人たちです。本を出している人も多いですね。

そして、新たに推している松村北斗くんについても、ラジオで発揮される長話が好きで、ブログの文章が好きで、エッセイで見せる文章もやっぱり好きでした。
彼もいつか、歌詞を書いたり本を書いたりするのかしら、と密かな楽しみも増えました。



仕上げ


そんな思考を巡らせたシャンプー台から戻り、あとはドライヤーだけとなりました。

さて、バックナンバーがもう1つ残っているから読んでしまおうか、と思ったものの

これはいつタブレットを持てばいいんだ???

さっきはカラー待ちで1人になったから良かったものの、ここから先1人になることはない。

他人にドライヤーしてもらっているのに画面に齧り付くのは良くないのでは…?

かといって話が盛り上がるわけでもないし…。

お客さんが私だけになった静かな店内で、ドライヤーの音と時々ぽつりと交わされては消える会話だけが響いていました。
また来ないとな…、この呟きはドライヤーにかき消されたことでしょう。


推しの条件に陰キャも加えておくことにしよう…。


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