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ボカロPのためのラウドネスノーマライゼーション知識

 最近曲を出すにあたり、各プラットフォームに合わせたマスタリングをやってみようと思い立ったのでラウドネスノーマライゼーションの詳細な仕様について調べたことをまとめておきます。

ラウドネスノーマライゼーションとは?

 この記事にたどり着く方はご存知の場合も多いと思いますが、一応ざっくり説明しておきます。これから楽曲を発表しようと考えている方は、意外と作品の届き方に影響する要素なのでぜひ制作の参考にしてみてください。

 ラウドネスノーマライゼーションとは、各配信プラットフォームが勝手に音量を調整する機能のことです。YouTubeやSpotifyは様々な人が作ったたくさんの音源を同じサイト、同じアプリで聴きますが、当然それぞれの音源の音圧は異なりますよね。ウォークマンやCDプレイヤーではリスナーが音量ボタンで調整していましたが、プレイリストを流しているのに一曲一曲音量を変えるのは面倒な作業なのでプラットフォームの側でいい感じにしてあげようという機能が実装されているのです。

 人間の耳は音量が大きい方がよく聴こえるという傾向があります。そのため、様々なコンテンツが集まるプラットフォームの中でぱっと聴いて良いなと思ってもらうために、制作者は他の曲より音圧を大きくしたいと考えます。一昔前のそのままファイルをダウンロードさせたり再生したりする配信サービスが台頭してきた時代にはとにかく音圧を大きくしようという競争が起きていました。しかし、ラウドネスノーマライゼーションの導入によってどれだけ音圧を高くしても一定値を超えると小さくされてしまうので、音圧を上げすぎることによって犠牲になってしまう音源の繊細さの部分もきちんと守ることが重要になってきました。

 いろいろ書いてきましたが、とりあえず大事なのはプラットフォームが音量を小さくするかどうか判断する値ぴったりになるように音圧を設定してあげると、十分な音量でリスナーに届き、不必要に音圧を上げすぎて音を劣化させることもないということです。

各プラットフォームの仕様

 ボカロPが投稿しそうなプラットフォームの仕様はこんな感じです。

ニコニコ動画
ラウドネス値:-15LUFS
音量が小さい場合:何もしない
備考:AAC-LC 48kHz 2ch 192kbps推奨

公式サイト:https://ch.nicovideo.jp/nicotalk/blomaga/ar1848078

 ニコニコ動画は公式サイトの情報が充実してるので困ったらそちらを見ると良いです。

YouTube
ラウドネス値:-14LUFS
音量が小さい場合:何もしない(?)
備考:公式の情報に乏しく、仕様も時々変わるらしい

ブログ等

 YouTubeは公式の情報がなく検証している方のブログを見たり実験したりしてみました。

 PCのブラウザ版で動画を開いて右クリック→詳細情報を開くとその動画の音量がどう調整されているかを見ることができます。

私の曲です。普通に音量を下げられています。

見るべき場所はVolume / Normalizedのところ。100% / 74% (content loudness 2.6dB)と書いてありますが、左側の100%はリスナーが左下の音量バーで何%に調整しているか、右側の74%は「元の動画ファイルの音源を100%とすると、74%の音量で再生されるようになっていますよ(2.6dB下げられていますよ)」ということです。

 この機能、他人の動画も見れるんですがメジャーアーティストでもノーマライゼーションがかかっていることが多いです。50%ぐらいまで小さくなっている曲も珍しくありません。同じ曲を音圧を変えて聴き比べると結構変わるので私は気を使うべき場所だと思ったのですが、音楽業界としてあんまり対策しているというわけではなさそうです。プロが作れば許容範囲内の劣化で高い音圧を稼げるからなのでしょうか。しかし、ネット展開を重視しているアーティストはぴったり100%になっていることもあり、専用にマスタリングし直しているんだなと推測できます。

 あと、一時期試験的に採用された仕様なのかもしれませんが、音量が小さい場合にコンプレッサーをかけるような形で音量を大きくしている場合があるという記事を見かけたことがあります。もし自分の曲の詳細情報の表記に見慣れないものがあったら調べてみるといいかもしれません。

Spotify
ラウドネス値:-14LUFS(プレミアムのリスナーは-11,-14,-16で変えられる)
音量が小さい場合:1dBのヘッドルームを確保して上げる

Spotify:https://artists.spotify.com/ja/help/article/loudness-normalization

 Spotifyも公式サイトの情報が充実しているのでそちらを見るのがいいと思います。プレミアムは色々変えられるようですが、音源を分けられるわけでもないと思いますし、とりあえず-14LUFSで出しておけばいいと思います。

Apple Music
ラウドネス値:-16LUFS
備考:初期状態ではオフ……?(根拠不明)

ブログ等

 Apple Musicは公式サイトの情報があまりないのでむしろ情報あったら知りたいです。今のところ私はサブスクに曲を出していないので、また調べたら追記しようと思います。

ITU-R BS.1770とは(参考)

 ラウドネス値の計測方法は数種類ありますが、ニコニコ動画をはじめ現代のプラットフォームではほぼITU-R BS.1770という規格が使われています。静かなシーンから突然大きな音がするのとずっと大きな音が鳴っているのでは聴こえる音量感が変わることから、リアルタイムではなく全体の音量感を総合して表すために考え出された規格で、テレビ放送向けに作られたようです。つまり、リアルタイムの音量感を示すVUメーターや3秒毎に出る短時間のラウドネスではなく楽曲全体の音量感(Integrated Loudness)をプラットフォームの基準ラウドネス値に合わせればいいということです。

 細かい用語を知りたい方や詳しい仕組みに興味を持った方は調べてみると結構資料があるので読んでみてください。

おわりに

 ラウドネスノーマライゼーションは用語が多くてわかりにくく解説も少ないので私も毎回調べてはよくわからないなぁと思いながらマスタリングしています。同じような方々の参考になれば幸いです。

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