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ドラマ 【ディキンスン 〜若き女性詩人の憂鬱〜】(2019〜2021)


個人的感想:★★★★☆


あらすじ:

政治や教育の世界で有名な家庭に生まれたエミリ・ディキンスンは、時代になじめない新進気鋭の詩人。詩作に集中したいが、社会やジェンダー、家族の制約が彼女を抑圧しようとする。現代の感性とトーンで当時を描く本作は、エミリの成長物語であり、一人の女性が声を聞いてもらうための戦いである。

引用元:Wikipedia『ディキンスン〜若き女性詩人の憂鬱〜』


感想:

 英米文学を少しでも学んだ人であれば、誰もが知る詩人 エミリー・ディキンスンのお話。

 完全に史実に基づいた話ではなく、実際に残っている歴史資料を"モチーフに" "着想を得て"といった点を踏まえて見る分には とても楽しく観れる良い作品でした。

 時代物なのに最先端の新しさというか新鮮さをも同時に感じる不思議な作品。
キャストのインタビューでも語られていましたが、時代が移り変わり社会が大きく変わったなかでも生きる上で抱える悩みや人間の本質的なところは変わっておらず、むしろ現代に通づる問題がたくさんある。そういった現代でも抱えがちな悩みや問題は、むしろ過去から通じていたんだという事実を知ることで何か新しい解決方法が見つかったりするかも、なんて言葉がしっくりときました。

 「名声」と「恐れ」が対峙するエピソードでは、詩人として名を残すには "バズる" 詩やフレーズを発表しなければならないのではないかとエミリが葛藤するシーンがあります。色んな人の声に励まされ(ただそんな励ましの声のなかにも、激しく厳しいけれど純粋な声、商業的利益の面から搾取しようという考えの甘い声、才能ある人に忍び寄ってくるなかで誰の声を信じるか、といった側面も描かれていて)、そんな声に背中を押されて思い切って自分のポエムを世間に発表することに。
 しかし作り手である自分の熱い思いとは裏腹に、大勢の人たちに一瞬の娯楽として詩が消費されてしまう虚しさ、本質を捉えようともせず表面的な意味だけを読んで適当に批判してくる人たちへの憤り、過激かつインパクトを残すフレーズを追求するがあまり炎上して自分を見失ってしまうことも。
そんな反応をエミリが透明人間となって俯瞰している場面があり、こういった問題は現代のSNS上で抱える問題とあまり変わっていないというか、深く通じるものがあるなと(もちろん現代の問題にリンクさせている監督の意図が存在していますが)感じました。

そして色んな人と出会って引き出される自分の感情や経験を通して、それでも自分はなぜ詩を書きつづけるのか? 書きたいものとは一体なんだ? という問いにヒントを与えてくれる存在がふと現れては消えていく。それは現実か、それともエミリの見た幻想か。エピソード度に少しずつ成長していくエミリに自分自身を重ねて見てみると勇気がもらえるというか、気持ちが明るくなって前向きになれるメッセージ性ある言葉もとても多く見受けられる作品でした。


 BGMにもノリノリ系?(言い方が古いかな 笑)現代のポップな音楽が数多に取り入れられているため、メッセージや表現されている事柄は重たいものであっても見終わった後にはどこか軽快な爽快感が残る。

あと、ここぞ! というときにエミリー・ディキンスンが実際に書いた詩が響き渡り、場面やメッセージとオーバーラップして重なる瞬間には感情がとても揺り動かされることも。
「詩ってなんだか難しくてよく分かんない」という人にも、詩が持つパワーや素晴らしさがすんなりと入ってくるというか、私自身もこの作品を見始めてから改めて書籍『エミリ・ディキンスン詩集』を購入して全編を読んだほどでした。

 エミリとスー・ギルバートの関係に関しては、見ている側としてはドラマでの描かれ方に結構ヤキモキする展開が多いですが、それでも最終的には二人の関係性が羨ましいと思うほどに心の奥深く繋がっている部分が感じられ、各シーズンの終盤に差し掛かれば燃え上がっていくような展開が見ている側にとって救いというか、the other half のようなものを感じました。

(メインキャスト二人のエミスー(EmiSue)に関する動画は沢山YouTubeに上がっているので、今からシーズン全エピソード見るのは長すぎ…なんて方はそういった動画からの入り方でも十分に興味がグッと惹かれると思います)

シーズン3まであって長い! と感じる人も、見れば見るほど「まだ終わってほしくない…!」とシーズン1から思うようになり、またそれぞれのお話もそこまで長くないからか夢中になってどんどん次のエピソードを見ちゃうので、睡眠不足にはお気をつけください。笑


  現代であれば、女性であっても名の知られていない一般人であっても、SNSというツールを使って世界中の人に向かって自分の作品を発表することができます。

しかしながらエミリが生きた時代は印刷物(それも範囲がごく限られたもの)しかなく、シーズン1では特に激しく描写されていますが「女性」であるという理由だけで詩を発表できない環境や社会の目、発表するにしても兄の名前を借りる、もしくは匿名で発表するしかなかったりとその制限は現代に比べて圧倒的に多いです。

 それでもエミリ・ディキンスンは自室に篭って ひとり詩を書き続けた。
この部分は史実に基づいたもので、生前に発表されたエミリの詩はわずか8編。これに対してエミリの死後、妹ラヴィニアによって世間に公開されたエミリの詩は1,800篇超。その数多の才能の断片が現代においても読まれ続け研究され続けています。

 この点からは、自分の才能を誰よりも信じ続けていた、詩を書くことがただただ好きだった、一つのことをやり続けた、否定してくる他人の意見に耳を貸さなかった、ひたすらに自分と対話し続けた、そのどれが正解かは誰にも分かりませんが現代を生きる私たちにも多くの気づきがあるなと感じました。

 そしてフィクションならではの展開、タイムスリップをするエピソードでは、エミリ自身が『偉大なる詩人:エミリー・ディキンスン 詩集全巻セット』を目撃する場面があったりなんかして! 「詩」と「名声」の間に適切な距離を保ちたいと努めていた生前のエミリではあるようですが、自分の死後「偉大なる詩人」として自身が歴史に名を残している様を目撃したら、やはり実際は嬉しく感じるのだろうか、なんてことを考えながら見るのも楽しかったです。

 シーズン3で完結。全エピソードの配信が終了してしまいましたが何度もお気に入りのエピソードやセリフを見返したくなる、そんな作品でした。

Apple Originals 作品ということで、視聴できる媒体がApple TV + しか現時点で存在していませんが、この作品を見るためだけにApple TV + に加入して見てもいいんじゃないかなというぐらいには個人的に好きな作品でした。

(Appleの対象製品を購入すると3ヶ月間のApple TV フリートライヤル期間が特典としてついてくる場合があるため、そういったサービスを活用すると無料でも見ることが可能です ※詳細は公式ページで確認してください)


 それに加えて、それぞれのキャストも深く知っていけばいくほど各方面での活躍が多く見受けられて、魅力的な人たちだなぁというのが印象的です。


ちなみに私は まずエラ・ハントさんにハマってしまい、YouTubeや過去の出演作を手当たり次第に見て(映画「アナと世界の終わり」「スティール・ワールド」など)

その次にヘイリー・スタインフェルドさんにハマって曲を聴き漁り("Love Myself" がお気に入り)映画『バンブルビー』『ピッチ・パーフェクト2』『ピッチ・パーフェクト3』『スウィート17モンスター』を見て…キャストほぼ全員のInstagram や Twitter もフォローしちゃったりと魅力にドップリです。

そして今は『ホーク・アイ』が見たくて、でもそうなるとDisney+も契約しないといけなくなっちゃうなぁと思いながら、新しい作品を見るのがまた楽しみです。


ステマでも何でもありませんが、好きな作品をシェアできたら嬉しいです。


※記事の最終更新日:2022年1月11日

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