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自選短歌「はないちもんめ」

みんな寝ている教室の窓辺から
見る夏雲とプールの匂い

ベランダに閉じ込められて笑ってる
十四の俺のあだ名〈スマイル〉

長過ぎた変声期まだ覚えてる
声にならない吾の悲鳴を

遊戯王カードだったら強いのに
俺のターンが来ないババ抜き

担任が仲良くしろと皆に言う
吾だけいないホームルームで

軟骨のピアスもパーマ金髪も
中二の俺を守るシールド

夏休み明けに刈られて丸坊主
ピアスの痕がやけにまぶしい

ベッカムのような髪型さえすれば
目立たずすんだ時代もあった

放課後の渡り廊下の向かい側
真っ暗闇の安全地帯

神様が見ているからねと脅されて
信じることも押し付けられて

バク転をすればモテると聞いたから
背中も恋も全治二ヶ月

保険室 文筆会話してくれた
あの先生はまだ生きてるか

学ランの裏地は竜も虎もいて
ポケモンみたいに可愛くなくて

男子ひとりだけの吹奏楽部では
楽器を運ぶ鳶職となる

最後まで覚えてしまう歌がある
呼ばれはしない「はないちもんめ」

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