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大阪都構想で、奇妙な記事

〇2020年10月30日、毎日新聞朝刊の社会面に大阪都構想に絡んで、奇妙な記事が載っていました。まず最上段に3段見出しで「大阪市財政局 試算撤回」とあり、補う見出しとして「都構想巡り 4分割コスト増 市長、厳重注意で」とあります。
大阪都構想のメリットは、それによって行政コストが下がる、ということでした。しかし実は都構想で大阪市を4つの特別区に分割すると、大阪市の試算でも行政コストは却って上がるらしいということは、以前の報道でこの問題に直接関係のない、東京在住の私でも知っています。
この見出しから読み解くに、その見込みは正確でないということでしょうか。結局、コストは下がるの、上がるの?

○疑問に思いながら記事を読み進むと、その頁の中段に、矢張り3段の大きな見出しで「担当局長自ら『捏造』」とあり、「市長と面談後、市民におわび」と補う見出し。つまり都構想巡る住民投票(11月1日)が迫る中、実際の行政コストの増を、無理に少なく計算していたということ? 怪しからん話だ!

○しかし更によく読むと、どうも話は真逆のよう。大阪市の財政局長は記者会見して、「4分割で行政コスト増と発表したが、その計算は人口269万の大阪市を4分割した場合の行政コストを行政単位の人口が減り、スケールメリットがなくなるという人口の問題だけに着目した間違った考えの計算だった。29日午後、松井一郎市長(大阪維新の会代表)から架空の数字で『捏造と評価されても仕方がない』と、厳しく注意された」と発表したということです。

○この局長は当初は行政のスケールメリット(行政の単位が大きい程行政コストが安くなる)の参考になると思って算定したが「市長の指摘を受けて捏造だと認識した」と述べ、記者会見で市民に申し訳ないと、何度もお詫びしたといいます。記者団から「捏造」とすることに多くの疑問が出されましたが、局長は自らに非があると言い張りました。
要するにこの局長は(というより、松井市長は)、大阪市を4分割すると行政コスト増になるという大阪市財政局の試算を、無理やり無かったことにしたいわけです。

○ここまでこの問題を紹介してきて、これは最近露骨になってきた、権力者である政治家が部下の官僚に無理無体を押し付けるケースの1つだなと、私は暗然となりました。当初、大阪都構想を進める松井市長のもとで、大阪市を分割すれば全体の行政コストは上がるというデータを公表するわけですから、この局長は本当はずいぶん良心的な人なんだろうと思います。それが松井市長に無茶苦茶を言われ、自分が「捏造した」などと、官僚にあるまじきことを言わざるを得なかった訳で、どんなに情けない思いをしたことか。地方の首長まで、「自分の政策に賛同しない人は異動してもらう」と公然と言い放つ首相に、倣っているのかもしれませんが。

○この話には続きがあって、日本維新の会の馬場伸幸幹事長は10月29日、衆院本会議の各党代表質問で「『大阪市を4分割した場合、行政コストが増加する』とした毎日新聞の報道は大誤報だ」と述べました。これに関連して大阪市の松井市長は、まず間違ったのは大阪市の財政当局だ(財政当局は間違っていない!)。でも間違った書類をそのまま掲載しているのを取り消さないでいるメディアの方はどうなんですか」と述べたと問うことです。こういうことを盗人猛々しい、というのかとあきれるばかりです。

○もう1つ、毎日さんに注文を。毎日新聞がこの問題を大きく取り上げたのは良いのですが、話が分かりにくい。権力者の市長の狙いは何なのかということ、無理やりでも大阪市を4分割すると、行政コストが増加するという財政当局の試算がなかったことにされそうという事実を、もっとズバリと書くべきです。分かりやすく闘わないと、権力に負けてしまいますよ、毎日さん!

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