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自民党総裁選をどう見るか

〇安倍首相の辞意表明に伴う自民党総裁選(2020年9月8日告示、14日投開票)は、当初の想定とは大きく違う展開で進められています。私の見方では、安倍首相が政策的に行き詰まって辞めるのだから、これまで安倍首相を支えてきた人たちは中心から引き、いわば自民党の中で“政権交代”が行われるのではないかと思っていました。
ところが実際の展開は全く逆で、安倍首相を支えてきた人たちが、そのまま力を保持すべく、着々と準備を進めています。

〇総裁の最有力候補が、安倍政治の中枢にいた菅官房長官であること、選挙のやり方が党員投票を省き、衆参の国会議員だけが投票する簡略型で行われること、四大派閥が菅支持を表明したことなど、すべてが安倍アンシャン・レジーム(旧体制)を守る動きです。

〇驚いたのは、国民の世論までこうした動きに迎合するような反応を見せていることです。2020年9月4日の朝日新聞によると、朝日の世論調査では「次の首相にふさわしいのは」という問いの回答が、菅官房長官が38%で1位(2位は石破元幹事長で25%)。「安倍政権7年8か月の実績評価は」という問いでは、大いに評価する17%、ある程度評価する54%で、あわせて71%が評価すると回答しています。

〇これを見ると、コロナ対策への厳しい批判、検察問題でのネットにおける前代未聞の批判の嵐は何だったのかと、あきれるばかりです。
安倍首相は辞意表明の記者会見で、病状によって大切な政治判断を損なうことがあってはならないので、総理大臣の地位にあり続けるべきではないと述ました。それを見た多くの怒れる国民は一転、同情の気持を持ったのかしらん……。

〇そうした中で、一筋の光明を感じたことがあります。2020年9月4日の東京新聞が、自民党の全国47都道府県連の内42都府県連が、それぞれに割り当てられている3票を党員・党友による投票で決めるべく検討しているという、共同通信の調査結果を伝えました。今度の総裁選挙では、国会議員に1人1票計394票、都道府県連にそれぞれ3票計141票の合計で争われます。

〇党員・党友が投票する本来の選挙方式だと、党員・党友には国会議員数と同じ数の票が割り当てられます。しかし今回は、その3分の1強しか割り当てられず、党員・党友は国会議員と比べ、ずいぶん力が弱いとも言えます。

〇しかし党員・党友は選挙になれば、中心になって選挙運動をしてくれる人たちです。ですから党員・党友の投票結果は、国会議員の投票行動に大きな影響を及ぼします。2001年、当時の森首相の後を橋本龍太郎元首相と争った小泉純一郎氏が、党員・党友の選挙で圧勝した勢いで、劣勢を伝えられた議員による選挙でも衝撃的な逆転勝利を収めたのは、その力学が働いた典型例でしょう。

〇党員・党友がどのような投票をするか、またその結果が、国会議員にどのような影響を及ぼすか。今度の自民党総裁選では、ここに特に注目したいと思います。

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