中ロの真実の関係とは

〇私は朝日と日経を取っている(宅配)。他の新聞が読むに値しないというのではなく、個人では、1日2紙以上読み切れないからだ。2022年9月17日、2紙を開き、そのあまりに対照的な報道内容に驚いた。日経の1面トップニュースは、ウズベキスタンのサマルカンドで開かれた、ロシアによるウクライナ侵攻後初めての中ロ首脳会談をめぐるものだが、その見出しが派手。「中ロ、共同声明出さず」「首脳会談、かりそめの結束」[習氏侵攻巡り一線]。リードでは「…対米では結束を演出したものの、ウクライナ侵攻をめぐる温度差は明らかだ。中国は貿易では協力しつつも軍事支援には一貫して慎重、かりそめの結束をあらわにした」と露骨な論評。また、国際欄では「印首相『戦争の時ではない』「プーチン氏へ苦言」と伝える。
もともとこの中ロの首脳会議は、中ロが中心となって組織している地域協力の枠組みである上海協力機構のサマルカンドでの開催を機に行われたもので、中露の協力関係を強調する性格のものと思われていた。ところが実態は真逆だというのだから、これはニュースだ!朝日はどんな書き方をしているか、と新聞をめくると、なんと、無い!全くこの問題に触れた記事が無いのである。
 
○慌ててコンビニに走り、読売、毎日、東京の各新聞を買ってきた。各紙はどんな扱いをしているのか。まず毎日。一面ではないが、3面1頁を塗りつぶす勢いで、「同床異夢、中露間に距離」「中 一枚岩避け存在感誇示」「露 要求応じぬ習氏に不満」と両者の対立を明解に伝える。また、その日の社説で、「中国頼み強める露の苦境」の見出しで、「米欧の経済制裁を受けるロシアにとっては・・・持ちこたえるには、世界第2の経済大国である中国の協力が不可欠」と解説する。また東京は1面ではないが、3面に「戦況悪化そのものズバリ、「中ロの首脳 力学に変化」と大見出し。中見出しで、「プーチン氏 侵攻泥沼 依存深める」「習氏 とび火懸念 冷淡対応」と追い打ち。毎日、東京とも日経と同じ論調と言っていい。
 
○ただ、残る読売の書き方は微妙。9月17日の紙面で、「中ロ枠組み 米欧けん制」「(上海協力機構の)拡大で地域安定」と北京支局発の見方を伝えた。しかし、同日の国際面で、「プーチン氏 低姿勢外交 旧ソ連構成国に」と大きく伝え、同日の社説で、「共闘の演出に綻びも見える」とし、中ロの対立を強調する紙面への転換を示している。この日の紙面を読んだ読者は、読売の伝えたい世界情勢はどのようなものか、戸惑うかもしれない。しかし、翌18日の紙面では、「戦況悪化露国内に動揺」として、露国内の動揺の報道を通じて、中ロについて日経、毎にと同様の見方をしていることを示しました。
 
○これに対し、朝日はこうした事態、こうした見方を全く無視し、9月19日現在、何の報道もしていません。上海協力機構の動きについて、ニュースにあらずとして取り上げなかった9月17日の朝刊の態度を変えてはメンツにかかわるとでも思っているのでしょうか。ことは世界情勢の帰趨に関わるというのに。
 
○ここまで、この原稿は中ロの関係―世界情勢について、こだわりすぎ、と感じる方もいるかもしれません。しかし今、私たちの生活は世界情勢によって大きく左右されています。私の独断と偏見によると、現下の世界情勢は、コロナの感染状況と、ウクライナ情勢によって大きく左右されます。コロナ感染が収まっていき、ウクライナ情勢が話し合いで戦争を収める方向に進めば、世界は平穏、平和の方向に向かうというわけです。
 
○世界情勢の急変で、日本における安全保障問題の論議も真剣味を増してきました。憲法9条順守を唱えるだけで事が済む、とは思いませんが、世界情勢の危機を誇大に唱え、やたら軍拡に走るのは周辺国との緊張をあおるだけ、ということになりかねません。そうしたことを避けるには世界情勢の冷静な観測、理解が必要です。##

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