kururi_tomita(富田 久留里)
私は今、必死に日本画というものと向きあい、描き続ける毎日を送っている。 。 しかし、これまで日本画を一度も誰かからきちんと教わったことがない。 自分の中では、日本画=決まった手順、伝統的な基礎画法の上に成り立つ象徴とも言える存在だった。 絵画技法の中で、最も素人が下手に手を出してはいけない部類だろうというイメージがあった。 そんな私が日本画家をやっている理由を少しお話しようと思う。 中学~大学時代中学の頃、美術部で油彩をやっていた。主に風景が好きでよく描いていた。
昨晩から降り続いている雨は、まだ止まない。 昼間の灼熱の日射しに焼かれた地面やコンクリートを冷やし、うだるような暑さに幾分ひんやりした空気をもたらしたように思う。 ・ よしもとばななさんの、「ゆめみるハワイ」※1を読んだ。 その中の短編「あの日の傘」に、雨について描かれた一節がある。 __ヒロ※2の雨はとても優しい雨だと思う。しっとりとふりそそぎ、街をすっぽり覆う感じがする。木々が濡れて、人々も濡れて、海にも雨が降っている。立ち並ぶバニヤンツリーがどんどんつやを
“Nostalgia” sketch ゴールデンゲートブリッジの対岸の裏山__。 ここは人の影はなく、静かだった。 聴こえるのは踏みしめる砂利の音と自分の呼吸の音。それにゴオゴオと鼓膜に響く、強く吹きつける寒々しい海風か山風か。 日が沈むにつれ刻一刻と微妙に色合いを美しく変えていくその様になんとも言えない感傷を覚えて、ふいに枕草子の冒頭が浮かんだりして。 遠く山の向こうに薄くきらめく水平線に目を細めながら あはれってこういう感覚なのかなぁと思ったり。 遥か異
《眩光》“dazzling light” sketch サンフランシスコ。 ゴールデンゲートブリッジを臨む丘の裏手の山道を歩いていると、雄大な湾が、山が午後の西陽に包み込まれる。その薄橙の光はかわるがわる空の、山の色を変えていく。一時間、二時間……時が進むにつれやがて斜陽となり影となってゆく。その様相を描きとめながら、次第に薄いベールのような光の中にこの身が溶けてゆくのを感じた。
絵を描いて生きていくというのは並大抵のことではない。 画家で絵を描いていて楽しいという人は一体世の中にどれほどいるのだろうか。 絵を描くことは純粋な求道であり、その道は困難を極める。 もちろん、絵の中で追及を重ねることで充実感を覚えることも、ほんのひととき、楽しいと思うこともある。 しかし、大部分の時間は修羅場である。 自分が満足する絵を描けている人はどれほどいるのだろうか。 完成はどこか。途中の絵の方が良く見えたりもする。ずっと一枚の作品と向き合い続けていると次
《彩映》″colouring to be reflected″ 水彩 水彩紙 F4(部分) 2020.07
「落日遠望」 日本画 紙本着彩 190×330
「青い森」“The blue forest” 水彩 パステル F4 2020. 05
朝9時。青森市内からバスで30分ほど揺られる。 バス停を降り、まだ朝の静けさの漂う公園の森の中をしばらく歩くと、見えてくる。 青森県立美術館__。 ひらけた草原の中にぽつんと佇む白亜の建築。 遠くから一見するとシンプルなその外観の中は、果たして___。 ー美の“エンターテイメント”空間ー 本美術館の常設展示の中で、ひときわ存在感を放つマルク・シャガールの傑作 舞台背景画《アレコ》 シャガールは、「色彩の魔術師」として称されているが、パリのオペラ座の大天井画を
もうすぐ6月になる。 夏が近づくと、思い出す。あの照りつける太陽の下で出逢ったあの子どものことを、、。 思い出す度に胸をぎゅうと締め付ける、そして、なんだかたまらない気分になる。今この文章をしたためながらも私は自分の心が痛むのを感じている。 そんな、決して忘れられない体験___ それが奈良美智作・「森の子」との出逢いである。 ・ ー”導かれる”ということー 平成28年度開隆堂出版美術1の表紙※1を堂々と飾る「あおもり犬」。 今回の青森の旅では、青森県立美術館に
ー北斎との出逢いー 富嶽三十六景 「神奈川県沖波裏」※1 葛飾北斎は、国内外問わずその名を轟かせ、人気を博している画家である。日本で人気の高いフランスの印象派の画家たちのように、国内で開催される数多くの展覧会に顔を出しているようにも思う。 2024年度に刷新される、日本千円札の絵柄のモチーフにも富嶽三十六景「神奈川県沖波裏」が起用されるという。 北斎は日本を代表する革命的画家として、今なお、いや、これから益々その人気は確固たるものになっていくのだろう。 ここま
12月も半ば、上野の空は快晴だった。 いかにも真冬らしい乾燥した空気と黄金色に染まる銀杏の葉が舞うのを眺めながら公園内を歩く。 目当ては、ここだ。 建物と影とのコントラストが際立って実に美しく見える。良い日に来たものだと、少し浮き足立つ思いで、私は会場へ足を踏み入れた_。 ー 叫び ームンクといえば血のような赤。どろどろとしたモチフ。黒い塊、、 そのようなイメージが強い。 今回の展覧会で一番注目されている作品は、《叫び》であろう。 《叫び》については、子どもの
▼ ニックネームは? kururi_tomita(富田 久留里) ▼ ブログを始めたきっかけは? 旅先で出逢った風景や芸術に感動し、その記録として文章やスケッチ、写真を残すようになったことが始まりです。 今では、日本画に取り組み、本格的に旅の風景を描きだす作家としての道を歩む決意をしました。 私の絵や詩をみた方々が、その場所に行ったことがなくても、なにかの記憶と繋がり、旅の情緒を感じとることができるような表現活動ができればいいなと思っています。 多くの方に見て頂き、自