世間知らずの起業物語 その14
冨岡さんからの電話で分かった販売が進んでいなかった本当の理由。
そして、それを解消するために僕は新会社を作ることになっているんだ、という事実が僕に大きな不安を抱かさせた。
新しい会社の名前
いくつかのの疑念を抱きつつ、しかし、現実は疑念とは関係なく進む。
新会社の名前も現実として決めなければならない状況にあった。
『やっぱり、ITの感じは残したいなぁ』
正直、この頃の僕は「グループとしては新会社を作るべきだ」という論理的な考えと、隠された理由を知ってしまって「会社を作っていいのだろうか?」という非論理的な感情とが入り混じっていた。
しかし現実は僕の感情を無視して進み、僕の知らないなにかが僕を苦しめていた。
新しく会社を作るんだから、今の現状の課題は解消したいし、直近は太陽光発電所を作るにしても、やっぱりITは近い将来やっていきたい。そんなイメージを反映した名前にしたかった。
『innovationを入れるかなぁ?』
『自由な感じを出すか・・・』
と、今の会社の課題である「拾ったもの負けの文化」のない会社にはしたいと考えていた。
拾ったもの負け文化
僕がグループに入社してから、もうすぐ10年になろうとしていた。そして、この10年、新陳代謝がうまくいかないまま、社員が増えては減り、を繰り返してきた。
そして、今現在の作業をこなす部下のいない管理職が社員の半分を占めている状況となっている。
管理職が手を動かして働くことは問題ない。
しかし。だ。
そもそも手を動かすつもりのない、手を動かすよりも頭を動かすつもりで入社してきた管理職にとってみると、その状況は不幸でしかなかった。
採用の面接のときは、これまでの新規事業として工事現場で、それこそ泥だらけになって仕事を進めることを伝え、同じことをやってもらうことを了承していたとしても、彼らは本当にやると思わず入社してくるのだ。
一部、人を管理するより自分で動いた方が楽。と言って、率先して作業に取り組む管理職もいたが、結局は自分のできる範囲でしか作業に取り組まなかった。不得意な部分や自分が覚え難い分野については、メンバー層へ「やっておいて!」の一言で丸投げしてしまう状況であった。
仕事が回るなら、得意なところに集中して、不得意なところは他の人と分担して進める。ということは、悪いことではない。むしろ良いことだ。
しかし、丸投げされたメンバーが働いても、評価されるのは管理職だけ。
と言う現実が、メンバーたちだけを苦しめることを繰り返してきた。
作業を振られたメンバーは、むしろ管理職よりも経験が浅く、不得意であったり、精度が低かったりもする。
管理職に作業として振られれば、それを実行することが仕事であるから、得意でなくても、初めてのことでも、真面目に取り組んでいた。
指示した管理職は教えることもできず、自分自身で学ぶしかない状況でだ。
が、失敗したらメンバーのスキルが足りない。素養が足りない。という評価を下されてしまっていたのだ。
これは川上会長の昔からの癖のようなものだった。
そして、同じように自ずから手をあげてチャレンジしても、失敗すると評価が下がる。
結果、チャレンジしにくい環境が育まれてしまうのだ。
偶然取り組んだ大きな成果は評価されても、チャレンジした少しのミスでその評価が覆されてしまう恐怖に、メンバー達は戦々恐々としながら働いていたのだ。
これも管理職が経営層とメンバーの間に入って、しっかりメンバーの評価をしないことが原因の一つであるのだが。。。
その評価制度もあいまいなものとなって、メンバーは目標を見失っていっていた。
O&Mチームの責任者が変わることは、せっかく積み上げたメンバーの自信や経験が失われてしまう環境となってしまないか?と、僕自身は大きな不安を抱いていた。
『だから、そうならないような文化の会社にしたい。』
そう考え、こんな会社名にした。
「Trust Point」
『信頼すべき拠点』という意味を込めた。
つづく
※この物語はフィクションです。
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