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スウェーデン移住計画3 - 偽りの壁

僕とNinaの笑い声で埋め尽くされていた部屋に大使館員の凛とした声が割って入った。
名前を呼ばれ、僕は立ち上がる。


後に気づくのだが、パートナービザ[1]の面接は書類確認の待ち時間から始まっていたようだ。
いや、大使館に入ったときから面接は始まっていたのだろう。
このビザで重要なのは2人が本当のパートナーだということ。
もし偽装であれば面接官はそこを見抜こうとしてくる。
なので2人で来たのは正解であり、普段通りの会話をしていただけで隠れ一次面接を通過したのだ。


Ninaも立ち上がり、僕たちは他に誰もいない部屋を横切り窓口へ向かった。書類に問題がなければ面接の日取りを決めるはずだ。

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そしてこの面接が不安の元凶。
以前読んだWebサイトに、面接は英語かスウェーデン語と書いてあった。
スウェーデン語はもちろん英語も苦手な僕には容易に超えられない高い壁。

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春から面接に向けてしていた英語の勉強も壁に小さな凹凸を付けた程度。
未だ登るには困難な状況だった。


大使館員は窓口に並んだ僕たちを笑顔で迎え、書類に不備がないことを教えてくれた。

「それでは面接の日取りですが、現在空いているのはこちらです」

提示されたいくつかの日からNinaが都合の良い日を選び、僕はそれに同意した。
面接時間10分前にはここに居ることを念押され、全ての手続きが終了。
大使館員に別れを告げその場を去りかけたとき、ふと思い出し面接時の使用言語を聞いてみた。

「日本語で大丈夫です」

即答だった。

目の前に聳えていたのは偽りの壁。
これで僕のスウェーデン行きを阻むものは何もない。

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Ninaと僕は顔を見合わせ、これ以上ない笑顔で大使館を後にした。


脚注
[1]  スウェーデンには、渡航ビザ(シェンゲンビザ)、学生ビザ(留学のための居住許可)、パートナービザ、就労ビザの4種類がある。

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