株式会社中央軒煎餅は、働きがいのある会社になる
働きがい率44%という現実
昨年2021年より中央軒煎餅では「働きがいのある会社調査」(Great Place to Work Institute Japanによる)を実施し、その結果を社内公開することで、従業員一人ひとりのやりがいや働きやすさが高まり、働きがいのある会社になることを目指しています。本年2022年度からはこの「働きがい」を最上位の経営目標として、利益や売上よりも優先する指標と位置付けています。
調査初年度2021年の当社の全設問平均値は44%。私たちは、これを非常に厳しい結果だと、重く受け止めました。
この44%という数字は、当社全従業員の44%が働きがいがあると感じており、残りの56%が働きがいがない(どちらでもないを含む)と感じていると言うことです。今回この記事を書くにあたり、具体的な数字まで出すべきかどうか悩みました。採用活動に不利に働いてしまうかもしれない。。。それでも、自分たち自身に対して正直でありたい、読んでくださる方に対して誠実でありたいと思い、結果を公表することにしました。
この働きがいのある会社調査ですが、全世界100カ国においてこれまでに1万社以上が実施しています。GPTW Japanが働きがいがあると認めた、ベストカンパニー(中規模部門)の全設問平均スコアの平均値が8割弱ということで、当社のスコアはベストカンパニーと比較して約3割低いことになります。
では、この厳しい結果に私たちはショックで打ちのめされたのか?
実はそうでもありませんでした。なぜなら前年に実施していた簡易的な従業員満足度調査(eNPS)の結果から厳しい結果になることは予想していたからです。
なぜ働きがいのある会社を目指すのか?
では、なぜそのような厳しい結果を予想しながらも調査を実施し、働きがいのある会社になることを目指しているのか?
理由は「①幸せに生きたい」「②笑顔づくりのクリエイターとなるために」「③働きがいが高まると業績が上がる」の3つです。
①幸せに生きたい
これが最も重要で一番にある想いですが、「そもそも人はなぜ働くのか?」という根本的な問いからその理由は来ています。この問いに対する私たちの答えは、
「幸せに生きるため」です。
そしてその幸せは誰かから与えてもらうものではなく、自分自身で掴んでいくものだと私たちは考えています。
多くの人の場合、一日に起きている時間の約半分を働いていますが、その時間がつまらなくて、やりがいがなく、「早く終わって!」と思いながら過ごしているのと、働くことが楽しくて、やりがいで満たされ、イキイキと仕事をしているのとでは、どちらが幸福感を感じられるか?
私は後者だと思います。プライベートだけが充実していて、仕事は我慢の時間という生き方よりも、プライベートも仕事も充実している生き方を私たちは選びたいです。
②笑顔づくりのクリエイターとなるために
中央軒煎餅のミッションは「100℃の思いやりで笑顔を膨らます」、そしてビジョンは「笑顔づくりのクリエイター・チームへ」です。「人の笑顔を追求することが、私たち自身の幸せになっていく」ような「笑顔の交換と連鎖」を創り出すことを私たちは目指しています。
従業員一人ひとりが自分自身の仕事にやりがいを持って、主体的に取り組んでいけるような環境・職場であることが、社内外で笑顔の交換を生み出し、それらの笑顔を連鎖させていくことには欠かせないと私たちは考えます。
③働きがいが高まると業績が上がる
最後に、働きがいが高まることで個人と組織のパフォーマンスが向上し、業績が向上することにも期待しています。この考え方は一般的にワーク・エンゲージメントと呼ばれることもありますが、持続的・継続的に企業が成長していくためには、一人ひとりが働きがいを持って毎日働いていることが決定的に重要だと思います。
強硬的な改革によりeNPSが激減。そして、働きがい調査へ
ところで、前年に実施した従業員満足度調査(eNPS)の結果から、今回の調査が厳しい結果になることを予想していたと述べましたが、当時なぜそのような状況にあったのか、少し触れておきます。
今急激な円安を受けてあらゆるものが値上げとなっているという実感が皆さんにもあると思いますが、実際はそのずっと前から、原材料費、包材費、物流費、賃金などの継続的な上昇は続いており、当社の業績も少しずつ悪くなってきていました。そこで私たちは2019年から外部コンサルタントの支援・指導を受けながら経営改革を実行し始めました。
この経営改革の要諦は、私自身を含めた経営チームと管理職の意識改革と行動変容を起こすことでした(今も継続中)。具体的な方法としては目標からの逆算思考で行動を定め、その目標値を非常に高く置くことで、行動の質と量に違いを作り出し、結果に違いを生み出そうというものです。
この時、行動の質を突然向上させることは難しいため、量を増やすことで目標達成を目指そうとなってしまうことが多く、それが現場スタッフやメンバーの負荷を高めることに繋がってしまいました。しかも、実際に行動するみんなは、なぜそのように行動を変えることが必要なのか自分事化されていない状態で、トップダウンで半ば一方的な命令のように指示され、やらされているという構造になっていました。
今思うと、そのような状況を生み出した責任は私にあります。当時は代表権を譲り受ける前でしたが全社的な意思決定を初めて任せてもらった私は、リーダーシップが何かをよくわかっていませんでした(今も学びの最中です)。自分の考えを貫くこと、曲げないこと、引かないこと。それが覚悟を示すことであり、そのことが意思決定者のリーダーシップだと考えていたように思います。チームメンバーや関わる人に対しての尊重や承認が全く足りていなかった。それが最終的には経営層への不満と不信感になっていったのだと思います。
その上、翌年コロナ禍が始まり、特にコロナ初年度は休業、雇用調整、リモートワーク、異動・役割変更など初めて経験する変化がたくさん起こり、不安や心配はより一層高まりました。
従業員満足度調査の結果が状況をよく物語っていましたが、定量的な調査結果を見なくても社内を満たす雰囲気や発言からうまくいっていないことは明らかでした。調査のコメント欄の辛辣な言葉に目を伏せたいと思うことも幾度となくありました。会社を良くしたい一心でやっているのに、どうしてだろう?どうしたらよいのだろう?そんな思いでした。今だったらもう少しうまくできたかもしれない。そこは申し訳なく思います。
ただ、私や経営チームには失望感や絶望感はその時も全く無く、必ず良くなる、良くするんだ、という思いがこの時ますます強くなっていったように思います。そして、その意思をより明確にし、覚悟を形にするために、この働きがいのある会社調査を実施し、その結果を経営目標に設定することに決めました。
一番の問題は何か?
調査結果から見えてきた一番の問題、それは「意思決定プロセス」にあると結論付けました。というのも、ベストカンパニーの平均値と当社数値で最も乖離が大きい設問6つのうち3つが意思決定に関するものだったからです。
その3つは、
・従業員に提案や意見を求めているか?【提案】
・意思決定に従業員を参画させているか?【参画】
・重要なことをきちんと従業員に伝えているか?【報告】
そこで、まずはここの問題を改善することから始めることにしました。
直ちに実行した7つの改善策とは?
調査結果が届いたのが2021年7月でしたが、直ぐに以下を改善策として実行しました。
①意思決定プロセスの標準化【提案・参画】
②三者(販売、営業、企画開発)合同での問題解決の仕組み化【提案】
③希望者の役員会議へのオブザーブ参加【提案・参画】
④四半期ごとの決算情報公表【報告】
⑤新商品の全従業員プレゼント【報告】
⑥決定事項・状況・出来事の朝礼での共有/説明【報告】
⑦全社戦略策定会議の動画共有【報告】
それぞれ以下で簡単に説明します。
①~③が提案と参画に係るものです。
①意思決定プロセスの標準化【提案・参画】
それまでは全社的には標準化されていなかった意思決定プロセスを明確化・標準化しました。
標準化された意思決定プロセスのポイントは、「提案」と「決定」を2つの異なるフェーズとして明確に分けるところにあります。提案のフェーズでは、個々の提案に対して優劣や可否の議論はせず、あらゆる提案を全員が一旦受け止めます。ここで全ての意見が出尽くした後に、次のフェーズとして決定を行います。
このように提案の場を明示的な仕組みとして設けることが改善に繋がると考えました。
②三者(販売、営業、企画開発)合同での問題解決の仕組み化【提案】
特に販売スタッフはお客様の声やご要望を直に耳にしており、商品開発や販促に対する意見や提案を持っていますが、当社直営店で勤務する販売スタッフの全員が会議に参加できるわけではありません。その声を共有する仕組みが確立できていなかったのです。そこで会議やツールを使って三者合同で問題解決する仕組みを作り、運用していくことにしました。
③希望者の役員会議へのオブザーブ参加【提案・参画】
上の①と②によっても意思決定に参画しているという実感を以前より持ってもらえると思います。ただ、部門を越えたり、全部門に及ぶような意思決定は役員会議で行われるため、そのような意思決定プロセスには参画できない、という感覚が残ってしまいます。そこで、希望者は役員会議に出席し、自分が所属する部門が提案する事案の意思決定に参加できるようにしました。その場で提案や意見を述べることももちろん出来ます。
④~⑦は意思決定したことや重要なことの報告に係るものです。
④四半期ごとの決算情報公表 【報告】
会社の中で最も重要な情報の一つが決算情報です。多くの企業はこの情報を非公表にしているのではと思いますし、当社でも従業員に対してこれまで非公表にしてきました。しかし、この重要な情報を共有することで、経営チームが従業員のみんなを大切な仲間として信頼していると感じてもらえるのではないか?そう感じてほしいという想いで公表することに決めました。
⑤新商品の全従業員プレゼント 【報告】
もう一つ重要な情報で、従業員にとって最も関心のあることが商品だと思います。ですので、新商品が発売される少し前に中央軒煎餅で働く全ての人に、その新商品を一つプレゼントすることにしました。画像や文字だけでなく、五感を通して体験し、知ってもらいたいです。
⑥決定事項・状況・出来事の朝礼での共有/説明【報告】
コロナ禍に入り、オンライン朝礼を毎週月曜日の朝に行ってきましたが、この場を重要な決定事項や状況、起きたことの報告や説明の時間としてこれまで以上に活用しています。
⑦全社戦略策定会議の 動画共有【報告】
年度末に経営チームと一部の管理職メンバーで翌年度の全社戦略策定会議を行い、全社目標、部門目標、行動計画を2日間かけて作っています。その会議を録画し、要約した動画を公開することにしました。決まったことだけでなく、その過程や意図、想いを少しでも共有できたらと思い、プロセスも公開することにしました。
改善の結果は今年の12月に明らかに
これら7つの改善策がどの程度効果があるのか、それは今年12月に再び公開される「働きがいのある会社調査」の結果で明らかになります。ただ7つの改善策を通して改善したい本質的なことは、経営チーム、もっと言うなら経営者である私の信用と信頼です。そんなに簡単に信用と信頼を得られるとは思っていないですし、時間がかかることも覚悟しています。それでも一つ一つ改善を重ねていきます。そして中央軒煎餅を、働きがいのある会社だとみんなが実感している会社に必ずします。今後の進捗をここでもお伝えしていきたいと思います。
代表取締役 山田 宗