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マッチングアプリで「恋活」する若者、コロナ禍の中の恋愛は手軽?になっていました

 自粛生活で誰かと直接顔を合わせる機会が限られたのをきっかけに、ネット上で恋人探しをする人が増えています。合コンや飲み会がなくなった代わりに、マッチングアプリでの「恋活」や「オンライン婚活」にシフトする若者たち。家にいながら手軽に、効率的に、異性と出会えるのが魅力のようです。(栾暁雨、柳岡美緒)

彼氏が3人 出会いも別れもお手軽

 「私、この前まで彼氏が3人いたんです」。そう告白するのは広島市の会社員女性(23)です。1人は遠距離恋愛中、もう1人は同業他社の先輩、3人目はマッチングアプリで出会いました。「コロナ禍でデートの機会が減ったから、三股でもバレません」

 3人目の彼氏は関東出身で、広島への転勤を機に登録しました。顔はかわいい子犬系でまあまあ好み。互いに社会人1年目で仕事の悩みを打ち明け合ううち、付き合う流れに。

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 週1回のデートでは食事やドライブに行ったけれど、楽しかったのは最初だけ。すぐに飽きました。真面目な草食男子で話がつまらない。LINEを既読無視するようになり、そのまま別れました。罪悪感は少しあったけど「アプリでの出会いはリアルな人間関係と少し違う。出会いも別れもお手軽です」。後腐れのなさが楽と言います。

 使っているアプリは累計会員数が1千万人を超えます。年齢や趣味、職業といった条件で異性を検索し、男女が互いに「いいね!」を送るとメッセージをやりとりできます。

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かつては「チャラい」イメージ

 大学2年の時、彼氏に振られて登録しました。当時は「遊び人がやるもの」「チャラい」というイメージ。恥ずかしくて秘密にしていました。でもコロナ禍以降、「私もやってる」と話す友人が急増。対面での出会いが減り、オンラインの「恋活」にシフトしています。

 今も彼氏はいますが、アプリでの新規開拓は続けています。通勤中や寝る前にスマートフォンで「いい男」検索するのが日課。「若い時期をコロナで棒に振るなんて損。遊びたいし、多くの人に効率的に出会いたい」と屈託ない。アプリで選んでデートして、嫌になったら即ブロック―。ライトな「インスタント恋愛」が加速しています。

コロナ禍の大学生活 孤独埋めたくて…

 大学生の利用も目立ちます。広島市の女子学生(20)は昨年、オンライン授業が始まったのを機にアプリデビューしました。飲み会も合コンもバイトもない。県外出身で友人の輪が広がらない。孤独を埋めたかった、と言います。

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 かつての「出会い系サイト」のような怪しさがないのは、「アプリ」という軽やかな響きもあるのでしょう。コロナ禍で登録者が増えているようで、1日当たりのマッチング数も伸びています。居住地で検索すると、知り合いの男性が何人も表示されて驚きました。

 感染の第3波が広がった2020年秋、福山市の大学生と恋人同士に。アプリのビデオ通話機能を使って同じ映画を見たり、食事したりする遠隔デートを楽しみました。クリスマスには実際に会いましたが、だんだんと会話が減り5カ月で自然消滅。それでも「少し離れた地域の人と知り合えて新鮮。モニター越しでも恋できる」と前向きです。

 趣味や好きな食べ物など等身大の自分が伝わるプロフィルに差し替え、次の出会いに備えて「自己PR力」を磨いています。コロナ収束後も、アプリとリアルな出会いを合わせた「ハイブリッド型」で恋活する予定です。

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 ただ、登録のハードルが低いからこそのリスクもあります。写真を加工して実際に会ってみたら「別人」だったり、プロフィル詐称をしていたり。いくらでも盛れるから虚実の境はあいまい。性行為が目的の「やりモク男」や不倫相手を探す既婚者も少なくありません。

 会ってみたらマルチ商法男だった

 広島市西区の女性(24)は、詐欺まがいの「マルチ商法男」に会いました。2歳上の爽やかなイケメン。高級スーツを着て、いつもおいしい店に連れて行ってくれました。「若いのに羽振りがいい。どんな仕事なんだろう」。不思議に思っていると唐突に勧誘が始まりました。

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 「カジノアプリで稼げる」という触れ込みで、会員になると紹介者にお金が入るねずみ講のような仕組み。「興味ない」と断っているのに、「やらない理由ないでしょ!」としつこかった。事務所に連れて行かれそうになり、怖くなって逃げました。

 ラインをブロックして連絡を絶ちました。それからはアプリのアイコン写真でブランド品に身を包んでいる男は警戒しています。女性は「彼氏が欲しいという気持ちに付け込まれた」と憤っています。「異性と簡単に出会える分、悪意を持つ人を見抜くリテラシーが必要。アプリは全て自己責任ですね」

アプリの利用率 1年で倍増

 マッチングアプリが、コロナ禍の中で存在感を増しています。MMD研究所(東京)が2020年9月、20~40代の未婚男女1453人を対象にした調査では、マッチングアプリを使ったことがある人の割合は57.1%に上りました。19年調査の30.2%と比べ、1年で利用率が倍近くになっています。

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 使っているアプリを聞いたところ、「Pairs(ペアーズ)」が60.5%で過半数を占めました。「タップル」(34.5%)、「with(ウィズ)」(26.5%)、「Omiai(オミアイ)」(23.8%)、「Tinder(ティンダー)」(19.1%)と続きました。

(2021年7月19日付中国新聞掲載 連載「オンライン的生活 コロナ禍の中の恋愛㊤」から)