「お好み焼き愛」の裏返し? 呼び方問題に広島県民たちから異論反論200件
広島県民のソウルフードお好み焼き。地元の皆さんは「広島焼き」「広島風」と呼ばれるとモヤっとしますか? 中国新聞のLINEに登録している読者に聞いたところ、200件以上の意見が寄せられました。「腹が立つ」「失礼だ」など怒りの声の一方で、「広島のPRになる」と冷静な見方も。異論反論ありますが、熱い「お好み愛」があふれていました。(栾暁雨)
「広島焼き」への怒り続々
予想通り、「広島焼き」への拒否反応は強かった。「広島風は百歩譲って我慢するが、広島焼きは絶対許せない」。広島市東区の会社員男性(50)は抗議する。「そんな食べ物はない。この呼び名ではキャベツや麺を重ねて焼く広島のお好み焼きをイメージできない」とおかんむりの様子だ。
西区の公務員男性(45)も県外の知人から「広島のは広島焼きで、大阪のものがお好み焼きでは?」と言われるたび、カチンとくるという。「悪気はなくても地元民の感情を逆なでする言葉。『広島を焼いた』みたいに聞こえるのも気分が悪い」と憤る。
「広島風」でけんかに発展
「広島風」にご立腹なのは東区の主婦(62)。「本流に対して亜流というニュアンス。関西のものがスタンダードで、広島は二番と言われているようで…」。南区の40代男性も「大阪人に広島風と言われたら、必ず大阪風と言い返す」と、鼻息荒い。
けんかの火種になったケースもある。県内の介護士女性(29)が夕食にお好み焼きを出したところ、大阪出身の彼氏が「なんや広島風か。俺は普通のお好み焼きが好きやわ」と発言。我慢ならず「は?こっちが本家よ。混ぜるだけの関西風と一緒にしないで」と、険悪ムードに。どちらが「本家」か問題は根深いようだ。
県外に住む広島出身者にも同じような思いの人がいる。福岡市の派遣社員女性(53)は「『広島焼き』の看板を出す店には行かない」と断言する。
自分なりの対処法を教えてくれた人も。県内の観光案内所に勤める女性(60)は「広島焼きはどこで食べられるか」との観光客の問いに、「お好み焼きですね」とやんわり訂正してから案内する。県外生活が長かった広島市安佐南区の男性(61)は「広島焼きに怒るのはなぜ?」と聞かれたら「フランス人が自国のパンを『フランスパン』と呼ぶと思いますか?」と返答。大抵納得してくれるという。
容認派は「関西風と区別しやすい」
「広島焼き」「広島風」どっちも容認派からは、「違和感はあるけど、関西風と区別するのに分かりやすい」(熊野町の50代事務員女性)との声も目立つ。
広島市安佐北区の自営業男性(58)は「全国の人が呼びやすい名前でいい。広島に興味を持ってお好み焼きを食べに来てくれたら本望」と大人の対応だ。福山市の男性(81)は、「県東部では関西風が主流。西部とはお好み焼きに対する熱量が違うから、呼び方にはこだわらない」とさっぱりしている。
逆に「いちいち呼び名に目くじらを立てる広島人が面倒」というのは、県外出身の広島市の主婦(50)。うっかり「広島風」と言おうものなら、地元育ちの夫から駄目出しされる。「お好み焼きが広島の誇りという事実は変わらないのに、心が狭すぎませんか」
お好み焼き店を営む皆さんはどう考えているのか。お好み村組合(中区)の豊田典正理事長(56)は、「『広島焼きください』と注文する観光客は多いけど、そんなことでは怒らんよ。知らない人には丁寧に説明すればいいんです」と意に介さない。ちなみに豊田さんが経営する「お好み村八昌」では、「広島流」を掲げている。これなら愛好家も納得するかもしれない。
あえて「広島」を付けるメリットも
年300枚のお好み焼きを食べ、業界についても研究する広島経済大(安佐南区)の細井謙一教授(54)は、呼び方論争を「愛着の裏返し」とみる。広島では戦後復興をお好み焼きと歩んできた歴史があり「デリケートになる気持ちは大いに分かる」と理解を示す。
一方で「広島」を付ける利点も説明する。富士宮やきそばや佐世保バーガーのように、地名を入れると認知度は高まる傾向があるそうだ。コロナ禍や原材料の高騰など、お好み焼きに逆風が吹く今だからこそ「発信力アップのためにあえて『広島』を強調する選択もある。議論してみてもいいのでは」と問い掛けた。
広島市南区の女性(34)はこう言う。「広島焼き、広島風という表現に怒るのは広島人の持ちネタで、あいさつのようなもの」。帰省したり、遠方の家族や友人、知人に会ったりする機会がある大型連休。あらためて、お好み焼き談議しませんか。