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インスタ活用術を教える広島のアドバイザー女性33歳【後編】売り上げゼロから「起業して良かった」と思えるまで

 光田綾華さん(33)がSNS販促アドバイザーとして活躍するまでには、いろんな壁の前で涙したそうです。化粧品会社の営業、ハンドメイド作家、起業コンサルと、自らのライフステージごとに仕事を変化させ、「起業の道を選んで良かった」と話せるようになるまで、何を大切にしてきたのか。さらに聞きました。

前編「大切なのは客の悩みを300個以上書き出すこと」を読む

光田さんってこんな人 
広島市で生まれ、11歳まで岡山市北区で過ごす。広島女学院大卒。広島市に本社がある化粧品会社の勤務を経て、2018年に個人事業主としてアクセサリーを制作、販売する「エスメラルダ」を開業。2020年ごろから集客や販促につながるSNS活用法のコンサルティングに事業内容を移した。6歳と3歳の息子を育てている。

 起業も初めから順風満帆ではなかったのですね。

 ハンドメイドのアクセサリー作家として開業してから、売り上げは6カ月間ゼロ。ウェブショップのアクセスもゼロ。しんどかったですよ。もちろん、インスタで宣伝していました。ただ、「目を引きそうな画像を更新し続ければ売れる」と考えていて…。今思えば、売れっ子作家さんの外側しか見ていなかった。「家族にお金のかかる趣味だと思われているのでは…」とか「世間から必要とされていないんだ」と思い込んで、絶望的な気分になりました。

どうやってその壁を乗り越えたんですか。

 看板商品を生み出せたんです。口紅の形をした名前入りのキーホルダー。結婚式の引き出物でもらった名前が彫られた熊野筆にヒントを得て作りました。
 商品を見た友人が「リップの部分に指輪を指してもかわいいよね」と言ってくれたのですが、その言葉を受けてインスタに「#結婚指輪」「#リングピロー」とハッシュタグを付けて投稿してみたんです。すると見事に花嫁さんの検索に引っかかり、注文が殺到しました。結婚式で手伝ってくれた友人にあげたいと。そこで初めて、こんなにもターゲットを絞らないといけないのかと思い知らされました。

 それからターゲット層の検索に引っかかるため、その人たちが調べていそうな言葉を洗い出しました。例えば花嫁さん向けのアカウントでは「#2020年冬婚」というハッシュタグが使われていると知って。めちゃくちゃピンポイントだなとびっくりしましたが、自分の投稿に付けてみました。「結婚式の余興をしてくれた友達にプレゼントしたい」という注文も多かったので「#引き出物」「#名入れギフト」とか。そうやって戦略を練って情報を発信することで、収益が出るようになりました。家族の前で笑って仕事の話ができるようになった時、一人前になった気分になれたのを覚えています。

コンサルに転身したのはなぜですか。

 大きな転機となったのは2年前。私のアクセサリーを扱ってくれていた雑貨店のオーナーが「会場を貸すからインスタ講座を開いてみては」と声をかけてくれたんです。そうして開いた勉強会には幅広い業種の個人起業家が参加してくれ、多くの人がSNSをどう使えばいいのか悩んでいるということを実感しました。
 しかも参加者が結果を出してくれたんです。「光田さんが言った通りにしてみたら、喉から手が出るほど出展したかったイベントからお誘いを受けた」とか。そういうことが本当にうれしくて、今に至ります。
 今も受講生の悩みを聞くといつも、あの時の苦しかった自分がよぎるんです。同じ思いをしてほしくないという気持ちが原動力の一つ。それに話を聞けば聞くほど私も商品に魅力を感じるんですよね。だからこそ応援したいんです。

そもそもどうして起業することにしたんですか。

 起業前は地元の化粧品会社で営業をしていました。主にドラッグストアを巡って自社のヘアケア用品の売り場を提案し、作らせてもらう仕事です。ドラッグストアはどこも同じように見えて、地域によって客層が大きく違う。店長たちにヒアリングし、お客さまのニーズを探って売り方を考えるんです。今の仕事と少し似ているんです。

 やりがいがありそうですね。

 はい。面白いと感じていました。それが今年6歳になる長男を妊娠した時に切迫早産となって、突然外出もままならない状況になってしまいました。そんな時、ハンドメイドを始めたんです。私は幼い頃から物作りが好きで、大学でも被服やデジタルデザインを学んでいました。興味のあったレジンという特殊な樹脂でアクセサリーを作りました。
 当初は趣味として作品をインスタに投稿していたのですが、「どこで売っていますか」というコメントが入るようになったので、試しに販売してみたら結構売れたんです。このビギナーズラックが私を勘違いさせ、悲劇につながるのですが…。

ハンドメイド作家として「きれいな画像を投稿していれば売れるだろう」というやつですね。それからどうなったんですか。

 作家活動は育休が明けるタイミングで休止し、仕事に復帰しました。職種が事務に変わったところ、まったく自分に合わずにうまくこなせなくて。自己肯定感がどん底に落ちてしまいました。子どもを保育園に送り届けた後の車の中で泣いてから出社するくらい、不安定になってしまいました。今思えばとっくに限界を超えていたのですが、親に病気が見つかったタイミングで退職することにしました。
 それからすぐに次男の妊娠が分かって、外に働きに出るのは難しいと考え、開業を決断しました。先ほども話したように最初は全く売れませんでしたが…。それでも諦めずに続けたことで、子どもに仮面ライダーの「ガチャガチャ」(おもちゃ入りカプセル自動販売機)をさせてあげられるようになるなど小さな幸せを感じられるようになって、起業を選んだ自分を褒められるようになりました。収入も今は、育休復帰後に時短で会社勤めをしていた頃を上回るくらいになりました。

起業して良かったですか。

 良かったです。会社員時代は週の初めの月曜日がちょっと憂鬱でしたが、今はつらくない。自分が選んだ仕事ですから。子どもに仕事の話を楽しく話せるのもよかったことの一つです。先日、自宅で勉強していたら、息子が「頑張ってね」と言ってくれて。うれしかった。仕事って楽しいものだよと子どもに伝えられていたらいいなと思います。息子たちはなるべく毎日、鏡の前でハグするようにしています。抱きしめられている姿を子ども自身が目で見ることで、愛されている実感が増すそうです。

 起業してから、何となく生きることをしないと自分に言い聞かせています。だって、何となく行動していたら何となくの人生になってしまう気がして。だから勉強会に参加したら、出された宿題にも全力で取り組むし、質問もしまくります。チャンスをフル活用すれば、相応以上の効果だって得られると思うから。疲れて思考停止してしまうこともあるんですけどね。
 何より、サポートしている起業家さんたちの笑顔で自分が満たされるんです。自分のための人生を生きる人のため、これからも全力でお手伝いしたいです。

前編「大切なのは顧客の悩みを300個以上書き出すこと」はこちら⇩⇩⇩