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肩肘張らぬイタリア生活。移住後の日々をエッセイにした広島出身のイラストレーター・ワダシノブさん

 広島市南区出身のイラストレーター、ワダシノブさん(45)が初エッセイ「いいかげんなイタリア生活」を刊行しました。イタリア・トリノに移住して15年。習慣の違いに戸惑いつつも、たどり着いたのは「力を抜けばだいたい何とかなる」という生き方。頑張り過ぎない日々を送るワダさんに寄稿してもらいました。

 広島からイタリアに移り住んでいつの間にか15年たった。何度かイタリアの中で引っ越して、今は北イタリアの冬のオリンピックがあったトリノに住んでいる。ミラノの隣だ。瀬戸内育ちには北国の冬の寒さと暗さは今でもつらいけど、だいぶ慣れた。

 初めてイタリアに行ったのは広島市立大3年生の時の研修旅行だった。美術館でミケランジェロを見たり、市場でハット帽を買ったり。そのとき、イタリアに夢中になって「いつか絶対、ここに住むんだ!」と思った、なんてことは全然なく。イタリアには全くはまらなかった。当時の広島市立大の学生の就職先には美術に関したものは少なく(今は知らないけど)、卒業後は市役所の臨時職員、派遣社員、会社員と美術ともイタリアとも全く関係のない仕事を転々とした。

 だから、なんで今イタリアでイラストレーターをやっているのかというと、広島でイタリア人の夫に出会ってしまったからに尽きる。夫と結婚し、イタリアに引っ越して。イタリア語ができず、仕事になりそうなことが絵を描くことだけだったのでイラストレーターになり、宣伝用にブログを書いていたら本を出させてもらえることになった。人生何でもやってみるものだ。(余談だけど、4こまマンガや文章を書き始めたのは、この中国新聞の海外リポーターのコーナーに誘われたことがきっかけだ)

 そんな私の初著書「いいかげんなイタリア生活」が7月25日にワニブックスから発売された。

 どんな本かを紹介すると。キラキラしたイタリア最高!というよりは、周りが気になり過ぎるコミュニケーション下手なザ・日本人の私から見た、ここの普通の、どちらかいうと地味な生活をマンガとエッセーで書いたものだ。

 イタリアでの生活の様子。毎日の食べ物のこと。イタリアの人たちから学んだ生き方。などを書いている。身ぶり手ぶりも声も大きいイタリアの人たちに揉まれながら、いろいろ考えたことをギューっと濃縮した本だ。

 

 当たり前のことだけど、日本の常識は、ここでは常識ではない。逆もまたある。

 例えば、イタリアの学校には運動会も授業参観もプールもない。これを最初は日本の学校と比べて残念だなぁと思っていたが、これに慣れると逆に日本はイベントが多過ぎて、先生の準備が大変だろうなぁと思うようになった。「どちらの方がいい」と良しあしを決めるのではなく、ただ場所によって違うんだなぁと思うこと、その違いの後ろにある文化の違いに思いを巡らせたのがこの本だ。ちなみに、イタリアの小学校はトイレットペーパーもなく、保護者が学期初めに持っていく、そこは日本の方がいいと思う。

 「ちょっと遊びに行ってくる」というには今はイタリアは遠い。だから、旅行にいくよりはかなり手軽なこの本で海外生活の気分を楽しんでもらえたらなぁと思っている。

わだ・しのぶ 広島市南区出身。広島市立大芸術学部卒。会社勤めなどを経て、2007年からイタリア人の夫、1男1女とトリノで暮らす。投稿サイトnoteでは、イタリアでの飾らない日常などを漫画とエッセイでつづり、フォロワーは4万9千人を超える。