見出し画像

この秋冬は「ツインデミック」?コロナとインフル、同時流行するかも‥

 インフルエンザが3季ぶりに流行するかもしれません。南半球では冬に当たる6月にオーストラリアの患者が急増しました。新型コロナウイルスとの「ツインデミック」(同時流行)の可能性を指摘する声もあります。専門家は、子どもの脳症や高齢者の肺炎を防ぐため、ワクチン接種の検討を呼びかけています。(衣川圭)

オーストラリアでインフル流行、影響ある?

 広島県の定点医療機関が毎週報告するインフルエンザ患者の数は2020年4月以降、1定点当たり0・1人を下回り、2年以上流行入りの兆しはない。ただ、広島県感染症・疾病管理センターの桑原正雄センター長は「今季は感染者が多くなる可能性がある。ピークも例年の1、2月よりも早まるかもしれない」と指摘する。

個人旅行で日本への入国可能に。水際対策の緩和で‥

 理由の一つが海外の状況だ。昨年に感染者の少なかったオーストラリアではことし、例年より2カ月早い6月をピークに流行した。10月11日からは個人旅行での日本への入国が可能になるなど新型コロナウイルスの水際対策が緩和され、インフルが流行した国からの人の流入が大幅に増えることも予想される。

日本国内でインフルウイルスの免疫が落ちている?

 国内でも、新型コロナに伴う行動制限のない状況は続く見通しで、昨季より人との接触機会が増加するとみられる。一方、最近は感染者の激減でウイルスに対抗する免疫の力が落ちており、感染が広がりやすい素地があるという。

厚労省の専門家会議 同時流行の可能性「極めて高い」

 新型コロナとの同時流行はあるのだろうか。厚生労働省に新型コロナ対策を助言する専門家組織のメンバーは5日、来年3月までの半年間に新型コロナの新たな感染拡大とインフルエンザの流行が発生する可能性を「極めて高い」とする見解を示した。新型コロナはこれまで新たな変異ウイルスへの置き換わりで流行が拡大する傾向がある。新型コロナの第8波とインフルエンザの流行が重なる可能性は否定できない。

予防と治療は?

 インフルエンザの予防法はマスクの着用や手洗いなどで、新型コロナの対策と変わらない。十分な換気も続けたい。加えて日本感染症学会はインフルエンザワクチンの積極的な接種を呼びかける。国は、今季のワクチン供給量が記録の残る中で最も多い7042万人分となる見込みを示した。

 桑原センター長は「過去のインフル感染の記憶がある大人と比べ、子どもは症状が強く出る恐れがある」とする。飲み薬や吸入薬など、診療所でも処方しやすい薬があるものの、まれに起きる脳症や脳炎は命にかかわるため、感染を軽く見ないように促す。

 広島市中区のこばたけ小児科皮ふ科医院の小畠牧人院長は「子どもの場合は泣き声が弱かったり、ぐったりしてしんどそうだったりする場合は受診してほしい」と勧める。ただ、新型コロナとインフルエンザを症状で見極めるのは困難という。同院では同時流行に備えて一度に両方の感染を検査できるキットを準備した。

 高齢者も注意が必要だ。インフルエンザで荒れた気道で細菌が繁殖する二次感染が起こり、重篤な肺炎につながることがある。65歳以上の高齢者たちは、国が接種を勧めるワクチンの定期接種の対象で、自己負担なしや1500円程度の負担額で打てる。広島県内では15日までにほとんどの市町でスタートする。

インフルとコロナのワクチン 同時接種もOK

 インフルと新型コロナのワクチンは同時に接種することもできる。桑原センター長によると、両腕に1本ずつ接種するのが一般的。「複数のワクチンを同時に打つことはよくある。同時接種で副反応が強まることはまずない」とする。どちらかを先に受けても特定の期間を空ける必要はない。