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2022年2月22日は「スーパー猫の日」 中国地方で愛され、活躍する猫たちをご紹介します。

 猫好きにとって、きょうは特別な日です。2月22日は、「ニャンニャンニャン」の語呂から「猫の日」。その上、今年は2022年。2が六つそろう「スーパー猫の日」と話題になっています。中国地方にも、地域で愛され、報道やSNSで人気が広がっている猫がいます。会いたいけれどコロナ禍で行けない!という方のために、広島・山口・岡山県内で活躍する(した)猫の功績や近況をご紹介します。(高田果歩)


■美術館の警備員と「攻防」するケンちゃんとゴッちゃん(広島県尾道市・雑種・雄)

 猫のまちとして知られる尾道市で勃発したゆる~い攻防がネットで話題になってから、まもなく5年になる。尾道市立美術館に入ろうとした猫のケンちゃんとゴッちゃんVSやんわりと阻止する警備員の馬屋原定雄さん。2匹の様子を発信する美術館公式ツイッターのフォロワーは10万人を突破し、今も人気を集めている。

 攻防の元祖は、美術館隣のレストランの飼い猫ケンちゃん。2017年3月、学芸員が遊びにきたケンちゃんとの攻防をツイッターで投稿したところ大反響。1週間ほどで約10万件の「いいね」が集まった。

 ゴッちゃんは地域猫で、美術館の近くで暮らしていた。2匹は当初、警戒し合う仲だったが、だんだんと打ち解け、2018年10月にはゴッちゃんもケンちゃんのように入館を試みるように。この様子が複数の海外メディアにも取り上げられ、美術館を訪れる外国人観光客も増えた

地面でごろんとなるケンちゃん㊤とゴッちゃん(尾道市立美術館提供)

 ゴッちゃんは2019年5月に引き取られ、今は飼い猫として幸せに過ごす。ケンちゃんは今も変わらず攻防を繰り広げている。美術館は、ケンちゃんが周辺をパトロールしたり、のんびり過ごしたりしている様子を撮影し、ツイッターやTikTokで発信を続ける。ゴッちゃんの写真は飼い主から送ってもらったものを投稿。「時をかける猫」シリーズとして、過去の写真や動画も蔵出ししている。

鼻チューするケンちゃん㊧とゴッちゃん(尾道市立美術館提供)

 学芸員の梅林信二さん(55)によると、攻防を繰り広げるのは警備員の馬屋原さんがいる時ばかりだという。梅林さんは「完全に通じ合っている、特別な関係ですね」としみじみ。馬屋原さんの優しさに惹かれ、新たな挑戦猫は現れるだろうか…。

 尾道市立美術館では3月6日まで、ケンちゃんとゴッちゃんの5年間を撮りためた特別展「時をかける猫—Ken&Goの思い出」を開催中。
ケンちゃんやゴッちゃんが登場する尾道市立美術館のTwitterはこちら
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■備中松山城の「猫城主」さんじゅーろー(岡山県高梁市・雑種・雄)

 観光客がやってくると城主が自ら歩み寄り、足元をすりすり。天気の良い日は天守の周りで気ままに日なたぼっこをして過ごす。高梁市の備中松山城のさんじゅーろーは、城内をぶらりと散歩する朝昼2回の「見回り」が日課となっている。

猫城主のさんじゅーろー(高梁市観光協会提供)

 2018年7月の西日本豪雨災害の約1週間後に備中松山城に迷い込み、すみ着いた。その年の11月に19日間行方不明になってしまったが、懸命の捜索により市内で無事発見され、帰城。再び城で暮らすことになった。12月に「再入城の儀」を経て、正式に城のPR大使「猫城主」に就任した。現在推定7歳。口コミで人気が広がっていた頃、実は野良猫ではなかったことが判明したが、飼い主の「地元のお役に立てれば」との厚意で、正式に譲られたという。

 かつては歴史好きや中高年の男性が多かった来城者層も変化。さんじゅーろー目当てで来る若い女性や家族連れが増えた。西日本豪雨で山道が被災し月千人ほどに落ち込んだ観光客数は、さんじゅーろー人気もあってV字回復。2019年度には約10万人が来城し、豪雨の前年を上回った。

 コロナ禍で再び観光客数は少なくなり、2020年度は前年から半減の5万人に。度重なる緊急事態宣言で3度の閉城も余儀なくされた。さんじゅーろーとの触れ合いも、感染対策のため今はNG。寂しいからか、さんじゅーろーが城の管理職員のそばを離れない時期もあったそうだ。

 さんじゅーろーの「家臣」で高梁市観光協会の大樫文子さん(38)は「さんじゅーろーは人が大好き。コロナ禍が収束し、またたくさんの方に会えるのを楽しみにしています」と話している。

 インスタグラムのフォロワー1万人突破を記念し、観光協会は「さんじゅーろーの日」の3月16日までインスタでさんじゅーろー川柳を募集中。
さんじゅーろーのインスタはこちら
さんじゅーろーのツイッターはこちら


■「錦帯橋猫」小雪(山口県岩国市・スコティッシュフォールド・雌)

 錦帯橋のたもとのベンチでうとうと。橋の上でのんびり。小雪は岩国市の会社員鐘江かねがえ秀明さん(48)の4歳の飼い猫で、3~11月の天気の良い日はほぼ毎日、錦帯橋周辺を散歩する地域のアイドルだ。出会った観光客や地域住民に抱っこしてもらったり、なでてもらったり。写真撮影も慣れっこ。リードを着けなくても、鐘江さんのそばを離れない。

小雪。錦帯橋の前でパチリ

 鐘江さんは錦帯橋一帯で小雪の写真を撮り、インスタに投稿している。じわじわ知名度も上がり、散歩中に「小雪ちゃんですよね」と声を掛けられることも増えた。小雪に会うために錦帯橋を訪れるファンもいて「今日小雪ちゃんいますか?」という問い合わせや「行ったけど会えませんでした」とDMが届くこともしばしば。最近は、オミクロン株の急拡大で岩国に帰省できない人から「インスタの小雪に癒やされながら、錦帯橋も見られて古里を思い出します」と感謝の言葉も届いている。

錦帯橋で寝そべる小雪

 小雪は観光PRにも貢献しているが、観光大使などに就任する予定は今のところないそう。「お声掛けがあればなんでも協力します」と鐘江さん。「これからも『錦帯橋猫』として一帯の魅力を発信していきます」
小雪のインスタはこちら

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■栽培漁業センターの猫職員(山口県下松市・雑種・計7匹)

 ヒラメやトラフグなどを養殖、中間育成している下松市栽培漁業センターには現在、猫7匹が「動物職員」として働いている。もともと野良猫で、センター近くにすみ着いていたのを保護した。

 ベテラン社員はドラミ(推定20歳・雌)お嬢(推定21歳・雌)。ドラミは母猫のチー(2019年5月に推定21歳で天国へ・雌)と一緒に「海上職員」として、6年前まで海に浮かぶいかだの上で生活し、カラスなどの外敵から養殖の稚魚を守っていた。

爆睡するお嬢(下松市栽培漁業センター提供)

 お嬢は「地上職員」として、他の猫と共にセンター内で勤務。猫のおかげで網を食いちぎったり魚の餌を食べたりするネズミが寄り付かなくなったという。ドラミとお嬢は高齢のため一線を退いたが、センター内にそれぞれ暮らす部屋をもらい、余生をのんびり過ごしている。

 センターは2020年4月に新棟がオープン。魚と触れ合える浅いプールもあり、見学や観光にも力を入れ始めた。そこで新たに、保護した猫の五つ子(雄2匹・雌3匹)が「観光部門」に所属。ガラス張りの事務所内で、マイペースに遊んだり眠ったり。人間職員を楽しませながら、観光客をもてなしている。

ドラミ(手前)とチー(下松市栽培漁業センター提供)

 コロナの影響で山口県外からの観光客は減ったが、逆に下松市内や近隣市町からの来客は増えた。猫職員に会うため、リピーターになる人もいるという。センターの久山裕司統括管理責任者(61)は「観光部門の5匹と触れ合えるイベントも開きたいんですが…」と長引くコロナ禍にやきもきしながら、遠方からも気兼ねなく多くの人が来られる日を心待ちにしている。


■JR芸備線 志和口駅「元ネコ駅長」りょうま(広島市安佐北区・雑種・オス・2019年2月に推定14歳で天国へ)

 広島市安佐北区の志和口駅の元駅員の中原英起さん(76)は「亡くなってもう3年も経つのに、人気は衰えない。りょうまには人を惹きつけるものがありました」と話す。

在りし日のりょうま(りょうまを偲ぶ会提供)

 地元では在りし日の姿を覚えている人は多いだろう。住民が手作りした制帽をかぶり、志和口駅の駅舎やホームで通勤通学客を見送り、お出迎え。乗客を見守るだけでなく、りょうまも線路を渡る時は、左右を見て安全確認をしていたという。

 2010年ごろに駅にすみ着き、12年に地域住民から「ネコ駅長」に任命され就任。駅から離れずに暮らしながら、7年間立派に務めた。名前は毛利元就から「もとなり」にしようという案もあったが、坂本龍馬のようなりりしい姿と呼びやすさから、りょうまに決まった。

 中原さんが会長を務める「りょうまを偲ぶ会」は、志和口駅前に石碑を立てた。カレンダーなどのグッズを販売したり、ユーチューブ「りょうまを偲ぶ会公式チャンネル」を立ち上げたりして、今もりょうまの功績を伝え続けている。

りょうまを偲ぶ会が製作した2022年のカレンダー

 豪雨で浸水被害に遭った駅近くの空き家を改修し「りょうま記念館」を設立しようという動きも。中原さんは「りょうまファンに訪れてもらい、地域のにぎわいづくりや利用者が減っている芸備線の利用促進にもつながれば」と思いをめぐらせる。2代目の猫駅長も模索中??
りょうまを偲ぶ会のツイッターはこちら

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永遠の旅立ち 広島・志和口駅(2019年02月13日掲載)

■安芸の小京都の「路地裏観光課長」漱石(広島県竹原市・雑種・雄)

 竹原市の町並み保存地区で陶器を制作販売する「陶工房 風土」で飼われている7歳の漱石。2016年、広島県観光課から架空の県竹原支局「路地裏観光課長」を任命された。飼い主の陶芸家岩川智子のりこさん(56)は「万年課長です」とくすり。

出窓から町を眺める漱石㊨

 漱石は暖かい日は時々、工房2階の出窓からのんびりと町を眺めている。歴史的景観に映えるその姿をひと目見ようと、猫好きが全国から足を運ぶ。「漱石のストレスになってはいけない」と優しく接してくれている。

 動物写真家・岩合光昭さんが各地のネコの映像を撮影した番組「岩合光昭の世界ネコ歩き『安芸・広島』」が2021年に放送され、漱石も出演した。放送後、遠方から漱石に会いに来る観光客が増えているという。岩川さんは「漱石がきっかけで竹原を訪れる方が増えたらうれしい」と話している。