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全ての扉を開ける鍵 -3章 (1st Quarter)-

青年よ、シュートを磨け!

どこかで聞いたことのあるフレーズだと思いませんか...あ、『少年よ大志を抱け』でしたかね...

20年ほど前、ある人に『バスケのスキルでひとつだけ願いが叶うなら何が欲しい?』と訊ねられたことがあります。大学生の僕は『ノーマークならばコート上のどこからでも必ずシュートが決まる力』と答えました。

マイケル・ジョーダンとシカゴ・ブルズが2度目の3連覇(スリーピート)を達成したシーズンのドキュメンタリーが巷を賑わす今日この頃。先ほどの質問に答えた20才前後の自分はNBAに入る可能性があるとすればジョーダンではなく、スティーブ・カーとしてだろうと既に認識していたんです。それが唯一のチャンスだろうと...

なぜこのようなことを書くかというと、これまで2章に渡りバスケの攻撃の原則と併せて、どのような攻撃の目的を持つべきか紹介してきました。しかし、全ての原則がものの見事に崩れ去ってしまうケースがあります。
それは、シュートがとにかく入らないこと…
リング下、ノーマーク、最高の条件下でシュートを放ってもあなたにそもそもシュートを決める技術がなければ、自分が望むような結果は得られないでしょう。

そう、個人にとっても、チームにとっても、シュートこそ全ての扉を開ける鍵なのです。

ゴール下の扉を開ける鍵、フェイクを効果的に見せる鍵、ドライブするために相手を引き出す鍵、数的優位を作り活かす鍵など複数の鍵を持つことも可能です。しかしみなさんには、オールマイティにどこからでもシュートを狙えるという"万能なマスターキー"を手に入れて欲しいものです。

そしてこの章で紹介する“シュートのなかみ”は主にジャンプシュートを指します。レイアップやフローターではなく、ダンクでもない。バスケのゲームで最も頻度の高い、そしてレイアップ以上に研鑽が必要となるシュートです。

頻度の高さ以外にもうひとつ、このタイプのシュートの解説にこだわる理由…それは1章でも出てきたキャッチ&シュート(ドリブルを1度も突かずに放つショット)を高い精度で決めることが出来なければ極めて戦略的なバスケットボールの話をすることは叶わない、ということです。

とにかく、ノーマークのキャッチ&シュートを決めることが出来なければ、ほとんどのプレーヤーのキャリアがプロまで伸びることはないでしょう。次がワンドリブルでのショット。これもプロ選手ならば問題なく決められるはず。ツードリブルになると高いレベルで威力を発揮するには技術の差が見えてきます。そして3回以上のドリブルを突きながらジャンプショットを高い精度(期待値1.00)を超えて試合中に決められる選手は、プロでもスペシャルな選手に限られていくでしょう。

オールマイティーなマスターキーへの最初の一歩は、ノーマークをどの距離からも10本中8、9本決める能力を身につけることから始まります。それでは3章のスタートです。

1.家を建てる時は土台から

立派な家を建てて家族と楽しく過ごしたい。それは誰もが思い描く理想な生き方だと思います。そんな大切な家を建てる時に、材料や用具を全て揃えた後の職人さんはどこから取り掛かるでしょうか?

そう、土台です。基盤とも言い換えられる家の支えとなる部分は、地震や嵐にも耐えられる安定したものでないと50年その先と2階、3階建ての家として安心して暮らすことは出来ないはずです。当然マンションは何十階建てにもなるのでさらに地下深く基盤を築いていきますね。一見外側からは見え難い、ここが一番重要で、バスケットボールではプレーヤーの”スタンス”になります。

シュートの手首や肘について、どんなに試行錯誤しても土台がなければ高確率のシューターまでの道のりは長く険しいものになるでしょう。強いドリブルや、正確で早いパスの力を生み出すのもみなさんの“バスケットボール・スタンス”です。スタンスが悪ければ膝や腰のケガなどにもつながりやすいので、"シュート、そして全ての技術は正しい土台がなければ身に付かない!"そのくらいの覚悟を持って取り組んで欲しいものです。ここでは主にジャンプシュートの解説をしますが、レイアップも片足での動作を安定させる土台と動き作りの重要性は変わりません。
そしてシュートにおける全ての始まり、それはバスケットボール・スタンスでボールを持ったトリプルスレットポジションでしょう。(シュート、パス、ドリブルというディフェンスにとっての”3つの脅威”を高いレベルで出力できるポジション)

ただ、トリプルスレットとほぼ同じ状態でありながら僕は”0=ゼロ”という別の表現も使っています。『シュートは0から!』、『いかに早く0に戻れるかだよ!』といった具合になります。
これは僕の中で、まだドリブルが始まっていないトリプルスレットの状態と、ドリブルをしている最中でありながら選択肢を3つしっかりと持ち合わせている状態を区別したいからです。ここはドリブルについて語る6章でさらに詳しく解説したいと思います。

2. チェックリストを作ろう!

家を建てる上で職人さんは様々な計測をします。水平になっているだろうか、梁と柱は直角になっているだろうか?
プレーヤーの身体には個人差がありますから、全ての選手を杓子定規に当てはめることは出来ません。しかし、平均以上を目指せるシュートフォームは存在していると思います。ここでお伝えする僕のチェックリストでは経験上、フリースローで例えて90%以上をシーズンで残せる天才的なシューターを育てる保証はできません。しかし、プロで活躍する及第点とも言える75%-80%のフリースローシューターは作れると信じています。

僕が考えるチェックリストはこちらです。

・膝を曲げるというより股関節をたたむ。-正しいスタンス作り-
・肩幅に開いた両足は右足が(右利きの場合)親指1つ分だけ前に出ている。
・右のつま先はリングと直線で結んだ方向を向いている。(どうしても腕をあげた時の肘の面がリングと正対しにくい場合は30度から45度の角度をつけてもOK)-レブロンのシュートフォーム-
・両足のつま先と両膝が同じ方向に向かって一直線になっている。
・両足の付け根、両肩4つの点にヘッドライトがついているとして、この4つがしっかりとリングに“正対”して照らしていること。もしくはシュートを放つ利き手側の腰、肘、手首が一直線に並んでリングと”正対”している。
・ボールを持つ腕の肘は身体から大きく離さず、基本的なボールは右足付け根の腰あたり(シューティングポケット)から真っ直ぐに上昇する。
・リリース前ボールが目の高さを通過しきる瞬間に肩と脇、肘、手首が90度を作っている。
・左手は添えるだけ(ウィンク)またボールを持っている2つの手はL字型になっている。
・リリースする手はボールにベッタリとつけず、掌との間に少し空間がある。(個人差あり)
・スナップの力を伝えるのは親指、人差し指、中指で他の2本はリラックスしている。親指と人差し指でLの字を作る。
・リリースはジャンプの最高点ではなく、最高点の少し前。(ここは昔の考えとかなり違う)-ジャンパーもセットシュート-(個人差あり)
・シュートは打つ、というより放つ!リングにパスをする感覚で放つ。
・リリースした後、フォロースルーは肘が伸びて利き手の中指が真っ直ぐ床を向いている。伸びた肘は目の高さより上にきている。
・着地は真っ直ぐリングに向かって15cmほど前に。
・リングの奥、手前を狙う。またはリングまでの空間に架空のトンネルを描いてそこにボールを通す、これは人それぞれ

意外と多く感じるかもしれませんが、皆が無意識にやっていることが多いです。ポイントは無意識ではく、チェックリストのどの項目が埋まらなかったためにシュートがズレたのか”気づく”ことです。この気づきによって修正作業を繰り返し、機械のように正確な”再現性”を身につけていくことが”シュートの安定”へとつながるでしょう。そしてチェックリストを全て埋められるようになったら、再び無意識状態でも繰り返すことができるように打ち込んでいきます。

繰り返しの補足しますが、例えば筋肉のつきかたによっては肘を畳めず、これを解消するためにはつま先の角度をリングに対して90度ではなく60度、45度とチェックリストの項目のいくつかを調整する必要があるかもしれません。

それでは写真を見ながらひとつずつ確認していきましょう。

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