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2020NBAファイナルGame4

Game1のレビューをnoteに投稿してから数試合、間が空いてしまいましたが今回は102-96でレイカーズが勝利したGame4のレビューをお届けします。

まず、このGame4の開始前に僕が注目した点を整理しましょう。

・1つ目はヒートのアデバヨ復帰なるのか?
・2つ目はゲームの入り1Qは点差が開くのか?僅差でスタートするのか?
・そして3つ目にして最大の注目、レイカーズが守備的なアイデンテティを取り戻すことができるのか?

3つ目、これには驚かれる方もいらっしゃるかと思いますが、Game2、Game3のレイカーズの守備を100回の攻撃権換算の失点で見ると、それぞれ125.3116.2-これは彼らがレギュラーシーズン(106.1)やこのプレーオフ期間中(カンファレンスファイナルまで107.8)でみせていた守備からは程遠いものでした。『実はGame3で負ける要素がGame2の後半から表面化していた』とGame4前日のRakutenNBA『NBA情報局Daily9』で話していたのはこのことです。
125.3のディフェンスレーティングは今季プレーオフ最悪116.2はワースト4に入る数値。ではどうしてGame2に勝ったのか?試合をご覧になった方はお分かりだと思いますが、レイカーズの攻撃がそれを上回る目玉も飛び出る138.4を記録していたから。今季のNBAシーズンを通じてリーグ最高のマーベリックスの平均が115.9ですから、レイカーズの失点の大きさ、攻撃の破壊力、共にご理解いただけるかと思います。

レイカーズ守備の立て直し策

ではGame4でレイカーズの守備はどうなったのか...
と、その前にGame3のバトラーのパフォーマンスを振り返らずしてGame4は語れません。
Game3で勝利したヒートのバトラーはファイナル史上3人目の40点超えを含むトリプルダブルを達成。しかも過去2例のジェリー・ウェスト、レブロン・ジェームズは惜しくも敗戦ゲームでの達成できたので、勝利に繋げたのは史上初といことになります。
そしてこれはレブロンの凄さも同時に物語ることなのですが、これまでレブロンは得点かリバウンドかアシスト、ファイナルの試合では必ずこの3つのスタッツのうちのひとつはゲームハイを記録していたのですが、このGame3では全てでジミー・バトラーが上回ってしまいました。

いかにNBA史に残るパフォーマンスだったのかきっと伝わったと思います。そして多くの方がご存知の通りバトラーは1本も3Pを放つことなくプレー、翻ってペイント内ではA・デイビスとレブロンの合計20得点を上回る26点を1人で叩き出していたから恐ろしい。(FG70%で!)

ではレイカーズはどのような対策をしたのか?
それはゲームが始まって最初のライブtweetをした通り。

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デイビスがのちにマッチアップを直訴したとも伝えられていますが、なぜデイビスをつけてきたのか?それは先ほどのペイント内得点でも説明した通りでバトラーがGame3に放った20本のFGは16本がペイント内だったから。しかもプレーオフの大舞台での印象的な3Pを沈めてきたけれども、シーズン中の3P成功率は24.4%のプレーヤーであることから圧倒的な"サイズ"をバトラーに対して壁にしていきたいという考えです。
しかし、ここは流石バトラー、最初の得点はサイズのみならず機動力もあるデイビスとの1対1を避け、より優位な相手=ハワードとの直接対決になるようアデバヨを呼び、ピック&ロールからドライブを決めてみせます。これがこの日のバトラーの最初の得点、And1も獲得してみせます。

ハワードがレイカーズにとってピック&ロールの弱点になることはGame1レビューでも書いた通り。ここは常にヒートにとって狙い目です。しかし1Qでハワードが下がった後も、バトラーは点を重ねます。常にバトラーにサイズを当てたいレイカーズはスイッチをせずに守ろうとしますが、デイビスとロンドの意思疎通が合わないところもバトラーがきっちり代償を払わせるのです。結果、バトラーにデイビスをまずはマッチアップさせたものの、1Qにレイカーズは彼1人にFG5/5、11得点を許す結果とはなってしまいました。

この時点でレイカーズはレブロン、デイビス合わせて7得点。Game3の大きな反省材料だったターンオーバー(レブロン8つ、チーム20)もレブロンだけで3つと攻撃での精彩を欠いてる印象ながら27-22でリードできたのはコードウェル=ポープ(以下KCP)の1Q10点の貢献以外なにものでもなかったように思います。

一度ここで注目のひとつアデバヨについて。このゲームでのコンディションは75%くらいにみえました。タイムアウトが宣告された時にベンチに下がりながらチームメイトと手を合わせる時に首、肩に痛みのある左側の手では一切ハイファイブをしていなかったですし、スピードのキレはあってもコンタクトの激しさはやはりコントレールしていた印象でした。しかし、それでも彼が居ると居ないとでは雲泥の差ですし、イグダーラなどが出場している時間帯はうまく守備でカバーもしてもらっていたと思います。しかも1Q終盤にはこのオフェンスファウルでこの日2つ目のファウル。Game1同様ファウルトラブルも危惧されましたが、2Qもプレーを続けファウルもコントロールしていました。

スモールラインナップで守備のアイデンティティを取り戻す

さて本題に戻りますと、2Q以降は非常に拮抗した好ゲームと好プレーの応酬が繰り広げられましたね。これも1Qにヒートが5点差つけられながらもレイカーズに対して今日のゲームも楽な戦いにはならないぞ!としっかりメッセージを発することができたのが大きいと思います。
そんなヒートに対してレイカーズ、先発センターだったハワードが1Qに7:49プレーして以降一度もコートに立っていないことからもわかる通り、完全にスモールラインナップに舵を切ります。これはGame1レビューでも説明しましたが、ある意味ヒートの土俵で戦うことになる、ということです。
ヒートは2Qでジリジリと点差を詰め、前半は49-47とレイカーズ僅か2点リード。ヒートとしてはシリーズ累計15点差つけられていたセカンドチャンスからの得点を2点の差に留め、レイカーズ得意の速攻からの得点も2失点のみと、ここでも十分に勝機を作っていたことがわかります。

ただし、レイカーズは3Qに真っ向勝負に挑みますハワードを試合再開から起用するのではなく、ここではモリスを投入。モリスはクラウダー、デイビスは前半同様バトラー、そしてレブロンはアデバヨにマッチアップ。実はレブロンをアデバヨにつけることを1Qにも試しているレイカーズですが、後半はこれがディフォルトとなります。百聞は一見にしかず、ぜひ見逃し配信などでGame4、3Q開始直後最初のプレーを確認してみてください。

バトラーにつくデイビス、ここにアデバヨがスクリーンのそぶりをみせますが、本当の狙いは2つ目に来るロビンソンのスクリーン。デイビスがスイッチしてKCPがバトラーにつくことを期待したアクションで、ヒートは右利きのバトラーの為にペイント右半分にスペースが出来るように陣形を整えています。
ここで注目はGame3の反省から(Game3-バトラーはレブロンに守られた6分10秒間に6得点、モリス、グリーン、KCP合計で守られた5分8秒で22得点)、レイカーズが簡単にはスイッチしなかったこと。KCPの仕事はバトラーに直線的な鋭いドライブを与えず、3Pラインの外に膨らませること。これがデイビスのリカバーする時間を作ってくれます。実際デイビスは3Pやミドルジャンパーではなくあくまでもペイント内で迎えようとしているのがわかります。

このKCPの守り方、実はレブロンが4年連続でウォリアーズとファイナルの舞台で対決した時に、スイッチを避けたいS・カリーがやっていたもの。ミスマッチを与えるのを避けると同時に、最も脅威の少ない3Pは明け渡してもペイントを守る。Game4、レイカーズの考えは明確でした。

このようなプレーが続く中、非常にキリキリした守り合いになった3Q。バトラーに対してはデイビスが外郭、リング周り、ミドルをきっちり抑えていきます。
https://go.nba.com/qpvle
https://go.nba.com/zcyqw
https://go.nba.com/nzoai

スモールラインナップは確かにヒートの土俵。しかし、大事なのはレイカーズが攻撃ファーストで戦っていたのではなく、守備的なスモールラインナップを機能させた。ここがこのゲーム最大のポイントだったかもしれません。
そして攻撃では、前半振るわなかったキングがチームに勢いを呼び込みます。

キングの超絶パフォーマンス

まずは、ヒートのアデバヨが2本のFTを沈め52-54といよいよ逆転した後に、再逆転に繋がった3Pショットです先ほど解説したレイカーズのバトラーへの守り方と同じ手法をヒートが取っているのがわかります。ヒートはGame3からこの手法を主にレブロンに対して取っていました。
するとここでレブロンは唯一自身のショットを放つチャンスがあった3Pラインより1m後方から、この日自身初の3Pを成功。この後にはグリーンの得点を挟みながら、レイアップ、さらにもう一本の3Pをこの短時間で畳み掛けるように決めてみせました。

さらに4Q 6:27、バトラーがデイビス、カルーソのコミュニケーションミスからレイアップを決めて83-83とまたしてもヒートがレイカーズの背中を捉えると、直後の攻撃6:08にレブロンがバトラーとロビンソンの間を割ってドライブ、ヘルプにきたクラウダーからAnd1をもらった"超絶"レイアップ
この後も僅差は続きますがヒートが同点にすることは2度とありませんでした。

試合を観ながらこのように呟きました。

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Game3ではファイナル史に残るパーフェクトゲームをやってのけたバトラー。しかし、このゲームでは10年間で9度目のファイナルの舞台に立つレブロンの場数と、2007年のファイナル敗退以来磨いてきたアウトサイドショットがものを言ったと思います。全てのシーンを見返すと確実にレブロンが最初に3Pジャンパーを決めてからヒートの守備にわずかながら、ひずみが生じています。もしかするとこの世界でレブロンしか突くことが出来ないごくごく僅かなものかもしれませんが...

勢いという名の魔物とKCP

それでもヒート4Qの戦いぶりはプライドにあふれていたと思います。ナンがデイビスのブロックにあい、チームとしてこのようなタフショットに仕向けられ、レイカーズが守備でマウントポジションを取りに来るところを食い下がって、データを見返すと4QのチームFG成功率は55.6%、26点のうち 18点はバトラーとヒーローがあげています。(ヒートはバトラーに対してデイビス、さらにはレブロンが対応してくるのでロンドなどがマッチアップしていたヒーローに意図的にボールを集めていたように見えました)

では何が試合を決めたのか?こう言ったゲームではワンポゼッションが命取り。それはレイカーズ4度のオフェンスリバウンドと、そこから獲得に繋がったFTです。4QのFTは12-2、レイカーズが圧倒。ファウルゲームで得たのは最後の2本、それでも10-2と大きな開きがあります。
レイカーズは神がかったようなショットしか許さない守備を献身的に続け、バスケットボールで最も効率よく点が入るショット=FTの差を持ってして、戦いをやめないヒートを振り切ったのです。

では最後にひとつの攻防がいかに勢いという名の魔物を味方にするのか、ゲーム終盤、ひとつの攻防を紹介したいと思います。
それが4Q 2:58にKCPが決めたトランジション3Pに繋がる一連のプレーです。

4Q 残り3:21、まずはレブロンの外郭からの1対1を守り切るアデバヨ。リバウンドを確保したヒート。(アデバヨのスイッチはやはりヒートの大きな武器です)
https://go.nba.com/nisr6
そのまま続けて3:12、リバウンドを取ったバトラーがそのままドリブルで悠々とフロントコートに入る。すると若干のトランジション状態が生じているため、レイカーズとしては意図しないディフェンダーのロンドがバトラーの侵攻を止めなければいけない形に。
https://go.nba.com/89wn4
ここでおそらくバトラー最大のチャンスはレブロンにつかれているアデバヨを呼ぶことではなく、逆サイドにむしろアデバヨを誘導し、ロンドと完全な1対1をすることだったかもしれません。
しかし、バトラーは少し中途半端なピック&ロールをアデバヨとしたあと、ショットクロック17秒を残して、コーナーからの3Pを放っていきます。

ゲームはまだ2点差、試合時間も十分の場面でバトラーが放つショットなのか?バトラーファンの方からは手痛い批判も聞こえてきそうですが、バトラーとてキリキリした”我慢比べ”に耐えきれなかった節が感じられます。

さらにビデオを最後まで観て頂くとわかりますが、注目は左コーナーからクラウダーが”あの”デイビス相手にリングとの直線が相手いないにも関わらずオフェンスリバウンドを奪いに行こうとすること。これはあまりにも野心的すぎました。相手はレブロン擁するレイカーズ。この日、ここまではトランジションをある程度抑えられていたとはいえ、最も致命的な場面でレブロンのプッシュ(ドリブルでの素早い駆け上がり)を許すことになります。

そこから先はみなさん、ハイライトを何度も観ているかと思います。
https://go.nba.com/2h0yq
右コーナーからのKCPの見事なショットがネットを揺らします。
時間をかけて同点に出来たかもしれない場面が、逆に5点差まで広がった。バトラーが放ったシュートならば悔いはない!とヒートも言いたいところですが、改めて試合の潮目とは細部に潜んでいる、そんな印象を受けました。

Game5展望

さていよいよGame5はレイカーズにとって優勝を決める試合となるのか?この日はマンバジャージを着用するそうです。一方のヒートはGame4も十分に勝機があり、まだシリーズを伸ばせる力が十分にあると思います。次戦ヒートにアジャストが求められるのはやはりバトラー包囲網を崩すこと。しかし、この崩し方のヒント、実はレイカーズがGame4に何度かみせています鍵になるのはD・ロビンソン。包囲網というよりは、包囲網をしくならバトラーをだしに別のエリアから攻撃を仕掛ける。ヒートはこれが出来るチームだと思いますので、再び1Qからロビンソンの長距離砲が火を噴くところがみられるのか?スリップやフレアスクリーンに着目ください。

もうひとつはバトラーがスクリーナーになることで攻撃の起点となることヒーローやロビンソンとピック&ロールをする形でバトラーがリングに飛び込んだ後に作っているアシストが非常に目を引きました。

そしてアデバヨの状態は100%に近ずくのか?守備での汎用性や、攻撃ではパスの角度を変えるハブとしての存在感はさすがでしたが、どうしても個で打開しなければならない1対1の局面では完全体とは言い難かった。2日間の休養がどう働くかですね!

最後までお付き合いありがとうございました!そしてここでお知らせですが、RakutenNBAで配信中NBAの戦術、戦略をDeepに深掘りする『てらこやNBA』にて『てらこやNBA特別編ファイナル』の解説を担当させて頂くことになりました。シリーズ終了後にお送りするのでまだ配信日などは決まっていませんが、Game1から全てのゲームを網羅してお届けする予定ですのでお楽しみに!

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