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2020NBAファイナル Game1 レビュー

みなさん、こんにちはバスケットボールアナリストの佐々木クリスです。コロナ禍の影響を受けてNBA史上最も長いシーズンとなった2019-20シーズンのチャンピオンを決めるNBAファイナルが10/1にTipOffしました。

10年で9度目のファイナル進出、現役最強を未だに証明し続けるレブロン・ジェームズにリーグで5本の指に入るであろうA・デイビスを擁するレイカーズ。対するヒートは、ファイナル前の3つのラウンドでそれぞれ異なるスコアリングリーダー(ドラギッチ、バトラー、アデバヨ)が台頭する全員バスケ。

そんな両雄がぶつかった大事な初戦。結果は116-98とレイカーズの完勝でした。今回は数時間後に始まるGame2をしっかり楽しめるように、2020 NBAファイナル Game1をレビューしてまいります!

Small or Big?

まず、このゲームに入るにあたって僕が最も注目した両チームの選手はレイカーズのデイビスと、ヒートのアデバヨ。この2人のインサイドプレーヤーです。その理由は沢山あったんですが、詳しく知りたい方は是非RakutenNBAの見逃し配信をチェックしてくださいね。
ここでは最大の理由だけ説明しておきます。それはデイビスをセンターに戦う時間がレイカーズの主なラインナップ(=スモールラインナップ)になるのか?それともレイカーズはデイビスをパワーフォワードとしD・ハワードをセンターにおくラインナップをメインに活用するのか?それに伴いアデバヨと直接対決の構図がどう変わるのか?ここに注目していたからです。

ちなみにこのファイナルまでの勝ち上がりレイカーズの得失点差でみるラインナップ別のパフォーマンスはご覧の通り。

デイビス/センター 123分 +21
デイビス/PF 194分 +55

どちらも相手を上回ってはいるものの、僕自身このプレーオフに入る前に予想したパフォーマンスを上回る結果をデイビス/PF = ビッグラインナップが叩き出しており、レイカーズの不動の先発も納得できますね。

これに対して、これまでNBAプレーオフをご覧になってきたファンならお分かりの通り、ヒートは206cmのアデバヨがセンターを務める先発の構成。対してレイカーズは上記のビッグラインナップが先発で、TipOff直後には直接のマッチアップにならない。But... 試合展開によってはレイカーズがデイビスをセンターにしてアデバヨと直接向かい合う必要が出てくる=ヒートの土俵で戦う、ことになると想像していました。

つまりレイカーズはどちらのラインナップで戦う時間の方がヒート相手にハイパフォーマンスを出せるのか?ということなんですが、このゲーム終わってみれば正解は、どっちも!でした。正確にいうならば前半はスモールが1Q 5:36に13点ビハインドだったところから前半終わって17点リードまで持っていった、ものの18分間で30点の変転現象を作った。そして後半はビッグラインナップでアクセルをさらに踏み込んでゲームを支配した。というゲームだったのです。

18分間で何があった?

レイカーズの圧倒的な強さを感じたゲームとはなったのですが、前半最後の18分間の間に何があったのか、これを理解するためにはまずヒートが1Q 残り5:36まで23-10と攻勢に出れた理由を知るところから始めましょう。

それはレイカーズのハワードに狙いを定めたドラギッチorバトラー&アデバヨのピック&ロールの成功です。このファイナル、両チーム最初の得点はヒートのクラウダーが右のコーナーから沈めた3Pでした。このシュートが生まれたのは、アデバヨからスクリーンをもらいハワードをうまくドラギッチがアタックすることに成功したから。そのシーンはこちらから確認できます。
https://go.nba.com/ermk7
さらにドラギッチのパスフェイクに完全に翻弄されるハワード。https://go.nba.com/0cmlu
このボールスクリーンから始まるペイントアタックが様々な波及効果となり、ヒートが完全にリズムに乗ります。バトラーも同じようなレイアップをチーム18点目に決めており、ここはスカウティングの時点でヒートが狙っていこう!と考えていたことが完全に的中したわけです。

1Q 5:36 タイムアウトを余儀なくされたレイカーズはここで再開後にハワードを下げ、デイビスをセンターに。するとどうでしょう、ヒートがピック&ロールの”狙い目”にできる弱点がなくなりショットが落ち始めます。ここではヒーローがデイビス越しにレイアップを決められません。https://go.nba.com/rtypz

ヒートは3分間の間に5点しか加えることが出来ず、この間にレイカーズは守備から速攻という自分たちのスタイルを取り戻していきます。攻撃のテコ入れをして、対抗しようとするヒートはアデバヨをコートに戻すのですが、リズムと活力が戻ってきたレイカーズ、特にデイビスの走力がヒートに簡単には追い上げを許しません。これがそのシーン。https://go.nba.com/0xirx
駆け上がるデイビスに対してヒートは簡単な得点を許さない為にもイグダーラでとっさに対処します。しかし当然リバウンドでの身長差。デイビスがオフェンスリバウンドを奪うと流し込むところにアデバヨがファウル...これは完全にデイビスの頑張りが呼び込んだもの。しかも21秒後にはアデバヨが2つ目のファウルをレブロンに対して犯してしまうのです。ベンチに下がることを余儀なくされるアデバヨ、ONコート/OFFコートのチームの攻撃(100回の攻撃権換算での得点)にチーム最大の開き115.7と99.1(レギュラーシーズンNBA最高のOFFと30位以下に相当)があった選手なのでそのダメージは言わずもがなでした。特にこの試合アデバヨが絡むピック&ロールが攻撃のベストオプションだった展開のなかでは...

さらなる不運は、2Q 9:19にアデバヨを戻して再逆転を狙ったにもかかわらず、今度はドラギッチが4:31に負傷交代。つまりヒートは1Qに絶大な威力を証明したドラギッチ&アデバヨのピック&ロールをこれ以降封じられてしまっていたということに。(実際ドラギッチが負傷したのは2Q 9:08なのでプレーし続けたドラギッチのタフネスたるや...)

レイカーズのお家芸、守備からのトランジション

しかし、ここまで読んで不可抗力によって、レイカーズの下に勝利が転がり込んできたと思うならそれは誤りです。選手層の深さではヒートに分があるように試合前に感じたセカンドユニットのパフォーマンスは完全にレイカーズが上回ったばかりか、ヒートのファーストパンチを喰らったあとスモールラインアップで目を冷ましたあとの守備はどんな金槌でも打ち崩せぬ堅さでした
このゲームのMVPがデイビスだったと思ったならもう一度2Qにみせたこの2プレーを見返してください。
https://go.nba.com/d54q8
https://go.nba.com/9zk91
このゲームでも彼の守備は最優秀守備選手賞のファイナリストの姿そのものでした。

前半のヒートのFG成功率を42.2%と押さえ込んだレイカーズ。ここまではスモールライナップがその中心でした。
それでもチームを指揮するヴォーゲルHCは3Qにハワードをセンターにおいて試合を再開させます。かつてのハワードだったらうまく試合中に立て直せなかったかもしれません。しかし超スタープレーヤーでありながらロールプレーヤーがやるような泥臭いプレーを世界最高峰のレベルで遂行するデイビス姿をみては奮起せざるを得なかったはずです。
ハワードも守備で奮起し、デイビスが速攻も走ってリバウンドでフォローするこの2プレーをぜひ数珠つなぎで観て観てください。
https://go.nba.com/fb60f
https://go.nba.com/2fiuo

3Qには2回秀逸なアシストもやってせたハワード。ひとつはオフェンスリバンド獲得後にデイビスへ。そして2つ目はディフェンスでブロックした後にトランジションに参加しまたデイビスへ。
https://go.nba.com/pjm8o

20点の開きがあっても手を緩めなかったレイカーズ。後半はビッグラインナップで相手を窮地に追いやったのがわかります。結果このゲームではオフェンスリバンド直後の得点でもレイカーズが16-9と上回り、機動力とサイズを兼ね備えた彼らの特異性を存分に発揮できたと言えます。それはボールを手にかける数を観ていても明らかでした。レイアップにいける!ダンクにいける!というときでもヒートの選手は予想外のところからレイカーズの選手の手が伸びてきて気になってショットを決められない、ターンオーバーをする、こういう積み重ねが大きなダメージにもなっていました。

Game2の展望

というわけでみなさんが気になるのは、Game2でヒートがすべきアジャストメントでしょう。まずドラギッチはチーム公式に2戦目の出場は"疑わしい”とあります、パット・ライリーに共に優勝しようと呼びかけられ足掛け6年...相当な悔しさはあるでしょう。

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そしてアデバヨも試合中に報道があった肩ではなく、公式は左側の首の痛みの為、同じく出場が"疑わしい”としています。
どちらの選手を欠いてもヒートにとって大きな痛手ですが、より大きな穴が空くのはアデバヨです。ポイントセンターである彼を中心にヒートの攻撃と守備が構築されているからです。彼の控えとしてヒートはイグダーラをセンターで使ってきました。Game1ではファウルトラブルに陥った後にはジョーンズJrもセンター起用でしたが、アデバヨの出場が制限されるか、できないとなれば、オリニク(みなさんの印象以上に器用にスクリーンやパスもこなし、アデバヨの複写版を試みることはできる)だけでなくレナードの起用も久しぶりに考えるかもしれません。

ドラギッチoutと仮定して僕ならばレギュラーシーズンで67試合先発を務めたケンドリック・ナンを先発PGに起用します。ヒーローを使うのもありですが、ヒーローはベンチから流れを変える爆発をみせられる選手。そして4Qに最もヘッドコーチが起用してきた選手でスタミナもキープしたい。もしスタートでヒーローを使い封じ込まれたらゲームを動かせるボールハンドラーのカードがなくなるに等しい。ならばナンも十分にピック&ロールなどのドライブからレイカーズのインサイド陣に仕掛けられるのであれば、まずは彼で出方を見て、それからヒーローというのが僕の考えです。(Game2を落としたら先発もあるでしょう)
ここはGame1でハワードを攻め立てたピック&ロールを誰がドラギッチにからり再現してくれるのか?ということでもあります。
*このレビューを書き上げた後になりますが、試合3時間前の時点でドラギッチは痛みをおして出場も視野に試合前直前判断、アデバヨは3戦目での復帰も視野に2戦目を欠場予定、とESPNが伝えています。

ますます重要となる1年目、2年目のヒーローとロビンソンの働き。キャリア初のファイナルは後味が苦いものになりましたが、きっとアジャストしてくるでしょう。ロビンソンのシューターとしての引力は自らのショットのみならず、チームに数的優位を引き続き作ってくれるはずです。
https://go.nba.com/boc63

それ以外では、思いの外Game1でヒートがレブロンに対してスイッチして出て行くことも厭わず戦っていました。特にヒーローがつくようなケースが多く、これは変更が必要かもしれません。

それから話題に事欠かない2-3ZONEの精度もGame1は非常に低かった。ボストンとのシリーズで6試合合計157回使ったZONEを初戦では、あまりにもあっさり破られたからか、片手で足りるほどしか起用していませんでした。アデバヨ不在となればなお一層ZONEも重宝しそうですが、ZONEの弱点のひとつはオフェンスリバウンドでもあります。

インサイドプレーヤーがファイナルの表舞台に戻ってきた!

かの有名な『リバウンドを制する者がゲームを制す』。このセリフをインスパイアしたのは、パット・ライリーがレイカーズのHCをしていた頃に言っていた"No rebounds, No rings"(リバウンドなくしてリングなし)と言われますが、現代のNBAではオフェンスリバウンドの獲得率とゲームの勝率との相関関係がかなり気薄となり、3Pの効果的な活用を含む攻撃の質に非常に強く、顕著な相関関係が示されるようになってもう7-8年が経っています

それでもなお、このシリーズはオフェンスリバウンドが重要な鍵を握るかもしれませんね。2020年NBAファイナルはビッグマンと呼ばれるインサイドプレーヤー達が舞台の"どセンター"に戻ってきました!(アデバヨ復帰の希望を捨てない!)

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