見出し画像

2020NBAファイナルGame5レビュー

Game5開始前にこれだけ壮絶なゲームが繰り広げられることをどのくらいの方が予想しただろうか...近年のファイナルではトップクラスの攻防が展開された至極の一戦...その熱きバトルはしっかりとNBA史と共に我々のハートに刻み込まれたと言って間違いないでしょう。

そして、具体的に試合を振り返る前に一言。レブロン・ジェームズ圧巻のパフォーマンス、40得点(うちペイント内18得点)に加えて13リバウンド、7アシスト。特筆すべきは3Pが6/9、これはヒートのディフェンスプランが成立しなくなる、つまりレブロンがこのようなパフォーマンスをするゲームは通常レブロンのチームが勝利する、それほどのパフォーマンスだったということ。ちなみにレイカーズとしてはレブロンとデイビスが合計60点以上をあげた試合では今季僅か2回目の敗戦だったそう...さらにはここ18回のクロージングゲームのうち17回は勝ちきっているレブロン、これらを鑑みてもいかにヒートが大きな勝利をあげたかがわかります。

レイカーズ、ラストプレーの是非

そして世界中のファンからレブロンのラストプレーに関して『パスをせず自ら放つべきだった』、『バブル内で不調のグリーン、やっぱり外した』と様々意見があると思います。しかし、間違いなく言えるのは、これまでレブロンはキャリアの中で幾度となく、"正しいプレー選択”をしており、この場マンでもキングの判断は”正しかった”というのが僕の見解。もはやレブロンの判断を疑う余地はないとすら思っています。もちろんあの場面で優先順位として自分、空いていればデイビス、そして次に外郭のキャッチ&シュート、と計算した上でヒートが最初の2つを止めたからこそのパス。プレーオフキャリア38.7%のシューター、さらにオープンだったことを考えれば勝機は十分。あのショットが入ってレイカーズがトロフィーを掲げていたならばあのプレーを批判した人はひとりもいなかったはず。必要ならばぜひもう一度そのシーンを振り返ってみてください。
https://go.nba.com/7q61v

さらに、1試合のみならずシリーズを通じてキングとここまで"サシ”で張り合える漢がいたとは...K・レナード?K・デュラント?とにかくチームを双肩に担ぐとはこのこと。ESPN Stats&Infoによれば30点ごえのトリプルダブルをファイナルシリーズで複数回記録するのは2015年の、そうレブロン以来史上2人目。今季開幕前のバトラーの選手評価は吹っ飛んだことはいうまでもなく、NBAにおける選手個人としてのヒエラルキーも見直さなければならない超絶パフォーマンスを繰り返しています。

ヒートのオフェンス修正が的中

さて、ここからが本題。Game1の解説をRakutenNBAでさせたいただいた時に、レイカーズにとってこのファイナルでのヒートとの対戦について

人とボールの動きを重視し組織化されたカオスを作るヒートは相当手強い。レイカーズの対戦相手はこれまでひとつのポジション、もしくは特定の選手2人までに得点源や起点が固まっていた。ヒートは各ラウンドごとに平均得点リーダーが異なり、日替わりでMVPも台頭する。試合の勝ち方も何パターンも持っている。レイカーズがこれを抑えられるのか?抑えられなければそれに匹敵する攻撃を展開する必要があるし、巡り巡ってレイカーズ最大の武器は守備からの速攻とみる!しかもヒートはこのプレーオフでレイカーズが対峙する中で最高のディフェンスチームでもある

という趣旨の話をさせていただきました。結果どうなったかというと2勝目をあげたGame5でヒートは119.4のオフェンスレーティングを記録し、速攻からの得点では25-4とレイカーズが上回りながらもヒートが勝利。まずファイナルという最高峰の舞台で速攻から25失点しては(しかもレイカーズに)通常勝機すら見いだすことが難しいしかしヒートは守備からのトランジションオフェンスを最大の武器にするレイカーズとは対照的に圧倒的な"ハーフコート”オフェンスを繰り広げていましたGame4のレビューをご覧いただいた方はお判りいただけますが、レーカーズの119.4というディフェンスレーティング(対戦相手のOFFレーティングはひっくり返して自身のDEFレーティング。得点、失点と同様です)は今季プレーオフ期間のワースト3に入る数値。ヒートが先に1勝をあげたGame3よりも悪く、これでヒートはこのプレーオフ、ひとつのシリーズで2度レイカーズに土をつけた唯一のチームとなったばかりか、プレーオフ全試合の中のディフェンスレーティング・ワースト5のゲームのうち、3つがヒートとの対戦となりました

ではヒートはレイカーズを攻略したポイントはなんだったのか?それは...

バトラーを活かせ

・バトラーにかけるスクリーンの位置、質が変わった
・バトラーがP&Rのロールマン(スクリーナー)になった
・バトラーが息を吹き返すとD・ロビンソンを追いきれなくなった

まずボールを扱うバトラーにかけるスクリーンの位置、質の話。バトラーがFTから2点をあげたあとこの日初めてのFG成功のシーンを是非ご覧ください。
https://go.nba.com/0p8qt
バトラーを守るデイビスに対してスクリーンをかけるヒーローの位置は”エルボー”あたりで通常の3Pライン際ではありません。つまりスクリーンをかける瞬間からバトラーのシュートレンジ内であることが一点。そしてリングまでの距離が短い分デイビスのリカバリーする時間もわずかしか与えないという算段でしょう。
さらにもう一点大事なのがスクリーンの質、ここでは”角度"の問題なのですが、通常スクリーンは角度をつけて方向付けをしてかけることが多いのですが、ここではヒーローの身体がベースラインに対して平たく平行になっている"フラットスクリーン”になっています。フラットスクリーンは通常強大なボールハンドラーが左右どちらにもいける選択肢を持ってプレーできるようにかけるものですが、ここでの目的は一味違います。それは"アンダー”で守るとわかっているデイビスのリカバーを遮る最適な角度がフラットだったんです。角度がついているとデイビスは半歩でヒーローを回り込めますが、ここではヒーローの身体ひとつ分をしっかり回り込ませています。
このシーンでもフラットスクリーンによってクーズマに大きな混乱が生じてしまい、バトラーが直線的なドライブからアデバヨを活かします。
https://go.nba.com/v2zat

実は1Q25-24とリードがわずか1点だったヒートですが、ペイント内のFG3/9と非常に低調で、崩せているのに決めきれないとい印象でした。
その中で今度は2Qからバトラーがスクリーナーになって飛び込む動きが効果を発揮していきます。
ここはクーズマにつかれているK・ナン、スピードのミスマッチ。ここにバトラーがスクリーンをかけに行くとナンがスクリーンと逆をつきます。ただしモリスはバトラーを離したくないので、ナンに直線的なドライブが生まれます。
https://go.nba.com/vh6pb
さらにバトラーのスクリーンはオフボールでも効果を発揮。セミトランジションからヒーローを活かしたプレーですが、ボールをもつイグダーラ、衝立になるバトラーが最後の瞬間まで何食わぬ顔をしているのが憎いプレーです。
https://go.nba.com/l454n

続けざまに加点して行くヒート。先ほどのプレーの直後、今度はバトラーがDHO(ドリブルハンドオフ)から衝立になり、ナンを自由にします。
https://go.nba.com/5b9kb
このプレーはふんだんにあって、
ヒーローとの手渡しパスから飛び込むヒートの38点目
https://go.nba.com/cq989
身体を張ってナンを自由にした後に、ナンからのアシストを受け流し込んだプレー
https://go.nba.com/f743g
などなど。特に予想外だった?ナンの活躍ですが、ヒートは再三左利きである彼が左方向にドライブできるよう仕向けており、レイカーズは相当これに手を焼いた印象で、ドラギッチの穴を埋めるのに十分な活躍でした。
https://go.nba.com/0eski

もうひとつヒートが入れてきたアジャストメントで効果を発揮したのが、通常インサイドプレーヤーが主にボールマンにスクリーンに2人でいく”ダブルハイ・スクリーン”を外郭の選手2人で行いました
https://go.nba.com/vga34
これまでヒーローがスクリーンに行くとコードウェル=ポープがバトラーの進路を塞ぐように3Pラインの外に張り出していましたが、気付かぬうちにヒーローがスクリーンを反転させている上に、ナンがもう一枚のスクリーンに来ているためにレイカーズの面々は大混乱。それをみてタイミングよくヒートーが外に飛び出し3Pを沈めるとレブロンも『何がどうなってんだ?』のリアクション。バトラーがここで左にドライブしても優位性のあるマッチアップは引き出せたと思います。

ロビンソンの復活

さてヒートの攻撃ラストはD・ロビンソン。この日7本の3P成功。7本は自身がもつヒートのプレーオフ球団記録タイ、13本の3P試投もこのシリーズ最多と機会もこれまでになく増加。ロビンソンが得意なハンドオフからの合わせをさせないためにこれまでレイカーズのグリーンやKCPがこなしてた仕事は称賛に値すると思いますが、このゲームではバトラーが完璧に息を吹き返し、チーム全体のダイナミックさが取り戻されると、わずかな隙にロビンソンがフリーになるケースが増えました。
https://go.nba.com/6flzm
決めた7本のうち、実に5本がバトラーによるアシスト。4点プレーになった3Q終盤のショットを含め残りの2本は今季対戦相手を恐怖に陥れて来たアデバヨとの手渡しアクション。チーム全体でもシリーズ最高14本の3Pをヒートは沈めて見せました。

さて、そろそろ文字制限が...ないんですが、一応長くなりすぎてしまうことを毎回自制はしようとしているんです...笑
Game6の展望に行く前に"通常レブロンがこのようなパフォーマンスをすると相手に勝機はほとんどない”という部分を紹介せずには終われません。

キングのキングたる所以

冒頭にも書いた通り、チームとしてのレイカーズ最大の武器は守備からの速攻です。しかもその速攻の先頭をレブロンとデイビスが走ってくるもんだから、背筋も凍るとはこのこと。
https://go.nba.com/4fcxk

しかしながらヒートが2Qに2桁リードを一時作る中、レイカーズは2分以上FGが決まらない時間が続きハーフコートオフェンスに重苦しい雰囲気が漂っていました。2Q 7:01でレブロンが3Pを決めたシーンでも24秒ヴァイオレーションが目前に。
https://go.nba.com/tqwss
すると今度は6:05にトランジションから3Pを沈め6点差に迫り、ヒートにタイムアウトを取らせます。
https://go.nba.com/kmkf5
このタイムアウト明けにヒートは巻き返しレイカーズのビハインドがまたしても2桁になると、今度はドライブ中にバランスを崩し2人に挟まれながらもレイアップを成功。
https://go.nba.com/tqq3v
この時間帯にレブロンが繋いだことで、チームの気持ちが繋がった部分は大きいと思います。この直後の3回の攻撃は3度ともKCP、レブロン、クーズマが得点をあげる速攻を繰り出したレイカーズ、ゲームも拮抗した状態で後半に臨むことができました。
後半、レイカーズの65点目85点目、これもまた守りようがない超絶ショット!クラッチタイム、特に残り2分を切ってからのAnd1プットバックはもちろんのこと、2Q、3Qの繋ぎがなければクラッチタイムすら発動しなかった...それくらいヒートのパフォーマンスにレイカーズ全体としては押されていたと言えると思います。そしてレブロンを守るという任務を担いながら47分12秒も出場しながらヒートの最終10点のうち8点をあげたバトラーがただただ凄かった。

Game6展望

では、最後にGame6の展望を考えてみたいと思います。
これはすごく難しいことでここまでくると両者ほとんどのカードを切っており、残すは遂行力、これに尽きるような気がしています。そんな中でも一点だけレイカーズが試合開始からできる修正はハワードではなく、モリスを先発起用することかもしれません。あくまでもデイビスの出場に問題がなければの話ですが...ハワードはカンファレンス・ファイナルGame3から先発を務めており、それまでもなかなか先発は変更しない方針のヴォーゲルHCでしたが、ここは打って出ても良いかと思っています。
バトラーに対してグリーンやKCPなどがつくことは回避しているレイカーズですが、ヒートはスイッチでバトラーについてくるハワードとクーズマをターゲットにしている節があります。Game5は15分の出場ではありましたが、Game6でも序盤からヒートのオフェンスにリズムが生まれてしまうとシリーズは7戦まで行く可能性も出て来ています。みすみす弱点を晒すよりは、最初からデイビスがセンターのスモールラインナップを起用するのも一手です。

王手をかけているレイカーズが優位なのは変わりません。しかしヒートというチームは『優勝まであと1勝、まであと1勝』このようなメンタリティを地で行くチーム。

画像1

ファンへのリップサービスだけでは決して言いません。Game5を終えてのバトラーもまだファイトが残されているとコメントしています。

野郎達とコートに全てをなげうってきた。そしてそれこそ俺たちが今後も必要とされる戦い方だ。いつも言っているように、俺たちにとっては『勝つか、勝つか』だ。しかしこれが今俺たちが置かれた状況。それは好ましいことさ。あと2連勝掴みにいく。
“I left it all out there on the floor along with my guys, and that’s how we’re going to have to play from here on out,”
“Like I always say, it’s win or win for us. But this is the position that we’re in. We like it this way. We got two more in a row to get.”

Game6は間も無く。再び至極の1戦に期待しましょう!

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
33
バスケットボール・アナリスト/解説者 twitter @chrisnewtokyo IG @chrisnewtokyo

こちらでもピックアップされています

#スポーツ 記事まとめ
#スポーツ 記事まとめ
  • 4588本

noteに公開されているスポーツ系の記事をこのマガジンで紹介していきます。

コメント (1)
Game6でヒートが終わるとは思っていません。試合を楽しみたいと思います!
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。