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【読書感想文】ロンパリの意味分かる?『ヘヴン』川上未映子

ロンパリとは斜視の人に対する蔑称だそうです。
「一方の目がロンドンを、もう一方の目がパリを見ている様子」が斜視のようだという意味らしい。

主人公はその斜視のせいでみんなからはロンパリと呼ばれ、日常的に二ノ宮という生徒を筆頭に凄惨ないじめを受けていますが、ある日からコジマという貧乏で汚いという理由から同じようにいじめの標的となっている女の子と手紙の送り合いをするようになります。

いじめというテーマを扱っていることは知りながらも手に取って読み進めてはいましたが、思ったよりそのいじめは凄惨だし、中学生でそこまでするっていうのもありながらも、そのやり方が先生や主人公の親に気づかれない程度にセーブしてたり、主人公も先生や親には言わないし、言ってどうなるみたいな考え方がリアルだと思いました。

コジマという女の子はただ貧乏で汚いのではなく、本当は貧乏でもないし、自分から選んで汚い格好をしているという複雑な事情を抱えていて、ここら辺はぜひ読んで欲しいです。
主人公は彼女のいじめに対する考え方にすごく励まされるし、主人公にとっては光を与えてくれる存在なのだけれど、それを全面にも肯定できない事態に陥るんです。

それは、主人公がとあるいじめが原因で大きな怪我を負って病院に行くんですが、そこでいじめっ子である二ノ宮とそれに従う形でいじめに加担していた百瀬という生徒に出会って、話をすることになるんです。
話をするといっても主人公が百瀬にいじめについて切り出した途端、めちゃくちゃ一方的に百瀬の意見をぶつけてくるんですが、それは主人公を責めるというより、百瀬なりのいじめへの考え方ものの見方なんです。

この百瀬の話がまたいじめの解像度をあげてくれるんですが、別に主人公は斜視が原因でいじめられてる訳じゃないし、たまたまだって言うんです。たまたま標的になっていじめられて、そこに罪悪感はないし、やりたいからやってるだけ、だからやり返したいんだったらそうすればいいって。

病院に行ったことで主人公は斜視が治ることも知って、百瀬の話を聞いて、でもコジマのことも思い出して主人公は悩むんです。

斜視を治すか、二ノ宮に反抗するのか、コジマのようにいじめを耐えるのか。

斜視なんて早く治せばいいって思うかもしれませんが、作中でも手術は簡単だし、1万5000円程度で治せるという描写があるんですけど、それもまた悩む事情があって...これもまた読んで欲しいです。

こんな感じでいじめの凄惨な描写があったり、色んな考え方や道もあって主人公と同じように悩ませられながら進んでいくんですけど、
何故かどんどん読めるし、ラストの描写がまた良いんですよね〜〜〜!!!
自分だったら誰に共感するか、自分だったらどうするかを置き換えながら、悩みながらぜひ読んで欲しい。

読んでみて、二ノ宮とかクラスメイトは割としんどいんですけど、ちょっと複雑な主人公の親や怪我を見てくれたお医者さんは感じの結構いい人でそこは救いでしたね。
あと読んでると、突然段落とかなくなって、少し物理的に読みづらくなるページがあるんですけど、その場面では主人公が悩んでたり、いつもとは違う行動をとってたりするので意図的な感じがあって、すごく引き込まれます。

以上、初めてnoteで読書感想文書いてみました。 完

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