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季節の変わり目

少しずつあったかくなってきて、確実に春が近づいていることを感じる。まだまだ風は冷たいんだけれど、風が運んでくる匂いがもう春。昔から、風の匂いに季節の変わることを予感する。そしてこの匂いがなんとも言えず、とってもいい。マスクを外して、肺いっぱいに、深く吸いたくなる。家の窓を開けて外の空気を取り込めば、家にもその匂いが充満する。

いい匂いなんだけど、洗剤や柔軟剤、香水やシャンプーといった、いわゆるいい香りとは違う。それはあくまでも香りじゃなくて匂いで、鼻には全く残らない。どんな匂いだったか、しばらくするともう忘れてしまっていて、季節の変わり目にまたこの匂いを嗅いではじめて「そうそう、この匂い」と思い出す。その儚さが、いつでも嗅ぎたいときに嗅げるわけではない貴重さが、また素敵なんだろう。冬から春へと移るこの時期だけの匂いだから、いつまでも嗅いでいられるわけじゃないから、限られているからこその喜びと、少しの寂しさが共存する。

淡く、ぼんやりと香って、なんとも言い難い穏やかな気持ちを連れてきて、季節が変わればまた会える日まで姿を消す。こちらもすっかり忘れた頃にまた現れて、晴れやかな気持ちにさせてくれる。

物心がついてから、どんな時でもこの時期だけのこの匂いに私の心は優しくほぐされてきた。忙しい毎日でも、外へ出かけたとき、家の換気をするとき、必ずどこかでこれからもこの匂いにハッとさせられるのだと思う。

行事ごとも好きなのだが、こういう季節を感じられる日常イベントも本当に好き。(日常イベント?)

もうすぐ春だぁ。

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