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76年 秋田の神学校がハワイ旅行、日本人観光客に伝道

ツアーでの海外旅行が中流層に一般化し始めた1970年代後半。円高や旅行費用低下、航空機の大型化が進んだためであった。海外への新婚旅行も当たり前になった。

そんな中、1976年、秋田にあるルーテル同胞聖書神学校がハワイへの伝道旅行を敢行した。これはキリスト教界としてはそんなに当たり前ではない出来事。

同神学校の小助川次雄校長と、神学生のうち3人が、7、8月、2週間の日程でハワイのワイキキに赴き、ワイキキビーチで泳ぐ日本人にアンケート調査と共に伝道した。
ホノルルの複数の日本人教会も協力し、750人の日本人観光客とコンタクトした。

アンケート結果は
団体旅行が78.6%
観光目的81%、仕事研修18%

刮目(かつもく)すべきは、
聖書を読んだことがある 64.4%
日本で教会へ行ったことがある 59.4%
クリスチャンである(含むカトリック)4.2%

また、「旅行者の多くは、特に浜辺では日本にいるときよりはるかに心を開いて“裸と裸の話し合い”ができる思いでした」と小助川校長。

この企画は、ワイキキの中心街にあるプリンス・オブ・ピース・ルーテル教会に、ルーテル同胞聖書神学校が協力して成立したもの。


ワイキキのプリンス・オブ・ピース・ルーテル教会はビルにテナントとして入っているようだ(googlemap)。窓ガラスを通して十字架が見える

ワイキキビーチを訪れる日本人観光客が多くなったなか、日本人にキリストを伝えたいという地元のルーテル教会の伝道の熱意に、日本のルーテル同胞聖書神学校が国境を超えて協力したという出来事だ。

ルーテル同胞聖書神学校。90年代に建てられた新校舎(そういえば私、ここに取材に行ったことがある)は、秋田らしい格子の意匠が印象的である

クリスチャンは、「全世界に出て行って、全ての作られたものに福音を宣べ伝えよ」(聖書マルコの福音書16:15)というイエスのことばに従って、「世界宣教」に参与する。多くの場合、自国から他国に赴いて伝道するわけだが、逆に海外から自国に「やってくる」外国人に対するアプローチが注目されている。
彼らに伝道するならば、「自国にいながらにして世界宣教に参加できる」わけだ。

現在、日本に来た南米人始め外国人への、日本の教会による伝道も進んでいる。

1976年時点で、ワイキキのプリンス・オブ・ピース・ルーテル教会は、日本人観光客に対してそれを実行したわけだ。なぜなら自分たちが信じているキリストの福音(ふくいん。良い知らせという意味)は、日本人にもぜひ知ってもらいたいと願うからだ。

1976年時点において、日本の神学校に、その協力が求められて実現したことは、クリスチャン新聞の記事を通して、「日本にいて世界宣教に参加できる」という視点が多くの日本の教会・クリスチャンに共有されたということだ。

加えて、この記事で記されているように、日本にいる間は、人間関係の問題などからキリスト教に耳を傾けたり、ましてや信じたりしにくい。それが海外にいる場合、個人の立場になるので、心が開放されて、人に縛られない本心からの判断をしやすい。

日本人の海外進出が増えた現在、日本人が洗礼を受けるのは、日本国内と海外が半々なのである。

日本人だからクリスチャンになりにくいわけではない。個人の自由な考え方で、きちっとキリストについて説明を受けると、「イエス様を信じよう」という判断に至る人も多い、ということを、海外で洗礼を受ける人が多いという事実は示している。

*ヘッダーの秋田のイラストは「毎日小学生新聞」のものです


1976年8月22日号1面




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