見出し画像

他人に興味がない理由は分かったが—『2度目の会話が続きません』

会話が苦手だ。とはいえ結婚式場で映像カメラマンのアルバイトをやっていた時期もあるので、初対面の人はギリギリ話せる。基本的にはもう二度と会わない人々なのもあるだろうけども。とはいえ私に限らず、見かけ上はギリギリ社会生活を送れている人見知りはこう思うだろう「2回目以降がつらい」と。

別にそれで良いと大学生くらいまでは思っていたのだが、就職活動で苦戦を重ねたことで「会話や関係構築が苦手だと人生非常に苦労する」という真理を嫌というほど分からせられてしまった。以来、様々な本を読んだり実践で試したりしたものの、2度目の会話は今なお鬼門だし、人間関係はもはや挽回不可能なまでに疎になっている。

そんなコミュ障各位の内なる叫びに応えるタイトルが『2度目の会話が続きません』である。まさに私のような人間に向けた本である。Kindleの日替わりセールは時折こういう方向で気を惹かれるから面白い。

なぜ、最初は上手く乗り切れてしまうのか。初対面は情報のやりとりで完結できるからである。プライベートなら出身地や趣味、仕事なら会社の情報であったり、何かしらの情報から話を広げていけば何とかなってしまう。だが、その手法は2度目では使えない。

ではどうすればいいのか。人間の持つ4つの願望を叶えてあげることで関係を深めるのが良いという。

  1. 自分の話にいい反応をしてほしい

  2. 肯定的に話を進めてほしい

  3. 私にもっと興味を持ってほしい

  4. あなたを知りたい

あー、うん。無理だわ。

1と2はテクニックとして知っているし、実践もできる。自分に足りていないのは3と4の意志なのだ。自分に興味を持たれたくないし、他人を知りたくもない。

モチベーションのないことで成果を上げるのは難しい。モチベーションを持てない人が多い分野、たとえば家事なんかは例外だけど、人間関係についてはモチベーションのある人が大半のはずだ。あぁ、詰んだ……と思って目次を見たら「他人に興味が持てません」という項目があるのでダメ元で眺める。

他人に興味が持てない理由は何だろうか。「自分の感情から切り離されているから」と本書は述べる。他人に興味を持てない人は感情の表出に乏しいという。言われてみると高校の頃に担任からそういうフィードバックを受けた気がする。

かといって、感情を我慢するのが癖になっているのをどうすれば良いのかという処方箋については大したことを書いていない。この辺りの課題はちゃんとした本もないので難しい。とはいえ原因が分かったことは不安の軽減になる。

同時に、佐久間宣行のエピソードトークが面白い理由もよく分かった。「裏方のおじさんのエピソードトークがどうしてこんな面白いのだろう」と思っていたが、佐久間Pは自分の感情の動きをよく観察していて、それをうまく膨らませながら話しているのだろう。

佐久間Pほど上手くはなれなくても、自分の感情に気付けるようになりたいなぁ、と思う一冊だった。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?