GENJI*REDISCOVERED        源氏物語絵巻 『乙女』之四

画像1 はや12月、いよいよ冬に突入です。今年の山野の草木の様子、ちょっと…いつもと違うかな…と思い始めたのは、お月見の時、そう9月10日に、まったく薄の穂が出ていませんでした。10月8日の十三夜でもまだ。って、11月に出揃った感あります。紅葉も。すでに桜は散り、紅葉が見ごろ。このバラバラなズレは何なんでしょう。さて『源氏物語』に書かれた「紅葉」の中から一押しの「秋の贈答」シーンです。
画像2 源氏物語絵巻『乙女』之四図、秋好中宮から届いた秋の庭の紅葉のいろいろを、紫上が玩ぜているところ。新造の六条院の各町に妃姫たちが越してきて最初のイベントです。中宮からの「蓋」に盛られた紅葉を自室の蓋に移して贈答の歌の返しを思案中です。中宮からのは白木の蓋だろうと思われます。いろいろの紅葉葉に秋の草花は野菊や竜胆でしょう。
画像3 秋を好まれる中宮からは、「春を待ってられるそちらのお庭、この素晴らしい季節=秋の彩りはどうですか…」と、古来有名な「春秋競い」です。万葉集の額田王の歌にも遡る「季題」です。春の町の主紫上は「風に散ってしまう紅葉は軽々では。岩根のまつに春の美しさをご覧ください」と詠みかえします。
画像4 紫上は、返す歌を「(苔の)岩に根を張る(五葉)松」の「造りもの」を用意させて、結び付けます。現代人には「松」が「春」のもの…がピンと来ないですが、ズバリ、今にも続く「新春の松飾り」=松は、春の樹で、春を「待つ」も掛かっています。濃紫の衵、紫苑の織の上着に赤朽葉色の羅の汗衫を着けた=背を向けているのは中宮からのお遣いの童女。持ってきた蓋に造られた岩根の松に結ばれた返歌を、松襲の侍女たちから受け取っているところです。
画像5 秋の町からの贈り物を、紫上をはじめ春の御殿の女房達もが愛玩、枝を振り仰いだり、髪に挿してかざしにしたり、葉っぱは美しく散らばって部屋を飾って行きます。万葉集では「黄葉」と書かれた「もみじ」現象。平安期に赤い楓が「紅葉」の代表格に。黄色いもみじ葉としてイチョウが思い浮かびますが、千余年を経たと言われる巨木もある銀杏が奈良、平安時代に都に在ったかどうか確認出来ていないそうです。
画像6 この紅葉遊びの様子を光源氏も、紫上の横に居て見守っています。(紫式部独特のねじれた記述)五葉松の歌を受け取った秋好中宮のその趣向に感心、秋の町の女房達も称賛…との記述のあとに、「この返事は、春を待って書いた方がいいよ」と紫上に言う光源氏が若々しく美しいと書いてあります。絵では、女房達が気兼ねなく紅葉を楽しめるように…と、御簾と几帳の陰に居る体で光源氏を描いています。 第21帖『乙女』之四 全図、次でごらんください。-五十四帖全部-百五十余図の復元にご支援頂けると幸いです。

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