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生まれて初めての背中の毛剃りをお母さんにしてもらったら

わたしの肌は白い。漂白したみたいな腕だね……と目を見て言われるくらい白い。

わたしの肌は弱い。すぐにかぶれたり赤くなったり。乾燥するのにニキビもできる。日焼けすると赤くなりヒリヒリ。一年中日焼け止めを塗っている。むしろ日焼け止めしか塗っていない。化粧っ気がほとんどない。敏感肌すぎてお化粧がこわい。

そんなわたしに、それはそれはすごいイベントがやってくる。

ウエディングドレスの試着。

こわいこわいこわい。普段出さない背中とか脇とか、めちゃくちゃ出る……。肌が白くて弱いわたしは、毛や傷やニキビが目立つくせにケアしにくいという悪循環に何年もはまっている。毛を剃れば肌が真っ赤になるし、ニキビ治したくて塗るクリームも合わなかったり。最近はなんだか自分の肌がかわいそうになってきて、一緒に色々乗り越え頑張ってきた肌だもん、生えそろっている毛がいとおしくすらなってきて、処理もせずひたすら自然のままにしていた。つるぴか肌の女性に、なりたいけれど、なれなくて、隣にいてくれる彼には申し訳ない気持ち。(スゲーかみそり負けする、て相談したとき、俺が一本一本ハサミでカットしようか?て言ってくれてありがとう……何時間かかるんだよって泣きながら笑ってツッコんだけど、嬉しかったよ。)

こんなわたしだけれど。毛の話も聴いてくれる彼だけれど。ウエディングドレスの試着。こんな二度とないような素敵なありがたい機会、少しでも自信をもって楽しみたいなと猛烈に思った前日夜(遅い)。わたしはお母さんに背中の毛を剃ってくれと頼んだ。

お母さん、お風呂場に登場。わたしはお母さんにシェーバーを渡し背を向ける。

「えーこんなの初めて使うわ」

「んー見えないわ、毛なんかある?眼鏡はずしましょ」

「おお、見えるわ。よく見ると毛穴もあるもんなんだねぇ」

「よし、よし、っと。こんな感じかね、いいんじゃないでしょうか!バッチリ」

眼鏡を外したお母さんは見えているのか?ずっと同じ場所剃ってた気がしたけど大丈夫なのか?ちょっと不安だったがお母さんがバッチリと言ったのだからバッチリなのだろう。ありがとう助かったよ、とお母さんを見送った。

一人になったお風呂場で、わたしは考えていた。生まれて初めて背中の毛を剃った。ということは、お母さんだって初めて、わたしの背中の毛を剃ったのだ。お母さんがどんな気持ちで剃ってくれたのだろうと考えた。どんな顔で剃ってくれたのかなぁと考えた。明日わたしは、ウエディングドレスを試着する。

気付くとわたしは泣いていた。お父さんとお母さんからもらった体、コンプレックスは山ほどあるけど、大切で大好きで、代わりのない自分の体。お母さんの手で綺麗にしてもらった。なんだかすごく胸が熱くなった。

鏡を見たら、背中はなんだかまだら模様だった。でもいいのだ。お母さんがバッチリと言ったのだからバッチリなのだ。いいのだ。いとおしい背中を何度も見て、わたしは泣きながら笑った。明日は泣かないで笑いたい。笑顔でウエディングドレスを着たいぞ。

いってきます。



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