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わたしのからだをわたしはまもりたい


消灯後の病室 ベッドの上
何気なく天に伸ばしたわたしの腕が
細くて 骨のようで
わたしなのに わたしじゃないみたいで
こわさと かなしさ
そしていとおしさが溢れ
思わず泣きながら
初めてわたしはわたしを抱き締めた

この腕で
毎日運転したね
この腕で
たくさんコロッケを揚げたね
この腕で
ベースを弾いたり
色んな言葉や文章を書いたね
この腕で
きっと色んな重い荷物をもって
この腕で
知らず知らずに誰かをかばって
この腕で
できること以上を目指して
この腕は わたしなのに
わたしを守れていなかったのか

この腕が
注射に耐えてくれた
この腕が
からだを支えてくれた
この腕で わたしはわたしをまもりたい
お父さんとお母さんがくれたからだ
わたしのからだを
わたしはまもりたい


***

昨年の四月に潰瘍性大腸炎と診断されて、六月まで入院していた。その最中に書いた文章がスマホに残っていたので、このときの気持ちを忘れないように、noteにも残したいとおもった。

読み返すと涙が出そうになる。このときはまだ食事がとれず点滴生活で、みるみるうちに痩せていった。自分のからだなのに、自分じゃないみたいで、でも、自分で。

守ってあげなきゃ。守ってあげたい。自分に対してはじめて、そうおもったかもしれない。どちらかというと自分よりも周りが大切で、自分を後回しにしてきたのかもしれない。

このときのわたしに教えてあげたい。

美味しく食べられてるよ。美味しく食べるわたしを見ると、家族も嬉しそうだよ。食べ過ぎて反省してるくらいだよ。ぜいたくだねぇ、入院中を思い出さなきゃね。

大切なものがたくさんできたよ。わたしを支え、助けてくれるもの。見守ってくれる、笑わせてくれる、たくさんの大切な人達。だから、わたしはわたしをまもりたい。まもる。

わたしをまもることは、わたしの大切をまもることだって、わかったから。


*コロッケと書いてあるのは、お惣菜の仕事をしていたからです。


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