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自由帳3頁目「無観客は嫌だ」

最初に明記しておくが、
落語の話ではない。
もうすぐ一歳一か月になる娘のこと。


「可愛い盛りですね」とよく言われる。
盛りと言うとピークがあって
その後落ち込むかのようで
内心不愉快である。
娘は日々、可愛さの自己記録を
更新し続けている。
記録は破られるためにある、を
熟知しているかのようだ。
守りに入らず、常に新しい可愛さを
追求する娘のストイックさには
頭が上がらない。

そんな娘のことで一番の悩みは
やはり食事である。
離乳食を始めて以来ずっと、
なかなか完食しない。
誰が決めたか知らないが、
この年齢、月齢なら
これくらい食べて欲しいという
目安の量があるらしく、
かみさんもそれに従って
食事を用意するので
完食しない=食が細い
と思って悩んでしまう。

娘はいつも元気。
栄養は足りてそうだし
お肌もツルツル。
便通も問題ない。
体重もちょうど平均ど真ん中だし
身長はむしろ高い方だ。
成長曲線なるものを
突き抜けている。

だから特別、食が細いわけでもなく
当人はこれで十分だから良いんだ…
って、そう割り切れないのが
親というもんで。
どうにかもう一口、
あと半口…と追いかけたくなるが
食事そのものが嫌いになったら
どうしようもないので
深追いしないよう注意している。
たまに調子良い時は
ペロッと完食するもんだから…はあ。

基本的にはかみさんが食べさせる。
私が家に居る時は
その間に洗い物をしたり
別の部屋を掃除したり。
何も無ければ娘の隣に座る。
娘が飽きて食べなくなったら
私がお給仕係になる。
それで目先が変わるのか
またいくらか食べる。
以前はそれで何とかなっていた。

一歳になるちょっと前くらいから
娘の意思表示が
実にはっきりしてきた。
これ食べたい!
それ要らない!!
今はまだ口に入らない!!!
口に運ぶのが遅い!!!!
間が悪い!!!!!
もういいごちそうさま!!!!!!
歯磨きやめろ泣くぞ!!!!!!!
全身で表現する。
さすが親子、言葉が無くても
手に取るように分かる。
そんな娘も可愛い。
可愛いよ…。

可愛いけど食ってくれんとさあ…。
悩ましい日々が続いたある日。
娘の食事を隣で見ていたが
何もしないと退屈なので
一口食べるたびに
「食べるの上手!」
「たくさん食べたね!!」
「おいしいね!!!」
「えらいね!!!!」
褒めちぎりながら拍手してみた。
時折頭を撫でたり肩をトントンしたり
背中をさすってみたり。

娘は「急にどうしたうるせえな」
みたいな顔もするが
まんざらでもなさそうだった。
やがてきれいに完食してくれた。
その日一番の褒めを浴びせた。
しつこかったのか、
顔に爪を立てて
餅をちぎるような手つきで
引っかかれた。
痛いがどうでもいい。
娘の食が進むなら。

娘の食事の時、
私は娘の応援が主な業務となった。
掃除も洗い物もあとでいい。
不要不急だそんなもん。
応援すると娘が食べてくれる。
良かったこれでもう安心だ…!

最近、一口食べるごとに
こっちを見るようになった。
拍手の仕草をしてくる。
褒めを、拍手を要求するようになった。
客を煽るスタイル。
油断して洗い物などしようものなら
大声で泣き、こっちを指さす。
大丈夫かと思って…と
言い訳しながら私の椅子というか
観客席に座り、褒める。
「声がうるさい」という顔を娘がしたら
黙って拍手だけに切り替える。
早く細かく美しく。
拍手を繰り返す。
食事中はテレビなどつけないので
静かな我が家。
一口ごとにパチパチパチ…。
ここはウィンブルドンか?

おかげさまでこの何か月か
ずっと家に居たおかげで
応援係の仕事も大分慣れてきた。
娘の食事量も確実に増えている。
応援さえあれば。
無かったら…どうなる…?

まだ先のことは分からないが、
どうやら東京都の緊急事態宣言が
解除される見込みのようだ。
寄席も6月から再開するらしい。
毎日在宅生活が終わる。

とりあえず様子見よう。
場合によっては個人的な
緊急事態宣言の継続と
なるかもしれない。


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