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NHK大河ドラマ『どうする家康』のタイトルロゴが革新的である理由

こんにちは、ちょっと株式会社の久保田です。

ついに2023年の大河ドラマが始まりました。
また1年が始まるんだなって実感。そして超売れっ子の古沢良太脚本の大河ドラマってどうなるんだろうって期待しかありません。

昨年の『鎌倉殿の13人』に続いて、今年のタイトルロゴもじっくり見てみました。

昨年同様に担当されたデザイナーが〜などの解説ではありません。
ロゴ大好きデザイナーがじっくり見て、そして感動したポイントを語っているだけです。語りたいだけなんです!


大河ドラマっぽくないロゴデザイン

大河ドラマっぽくない。
歴史モノにありがちな重厚感がなくて軽妙。
丸っこくて可愛い。

最初に抱く印象はこんなところじゃないでしょうか。
これまでの大河ドラマにはないデザインであることは一見して分かります。

こういう意外性があるデザインには明確な狙い(≒コンセプト)があるのが通常です。
アレルギー反応が起こりそうな路線変更にチャレンジした理由があるはずで、それをデザイナー視点で推測しながら、デザインに施された工夫などを見てみたいと思います。


新しい視聴者層へのアプローチ?

まずデザインから受けるイメージとして、やはり少しコメディ色が強いドラマになりそうだなって印象がありました。
初回放送を見てコメディとまで言えなくてもライトタッチなドラマになる感じがしました。

ドラマの内容に沿ったデザインにしていることに加えて、もう一つ考えられたのはターゲット視聴者を若年方向に広げようとする可能性。

大河ドラマのメインターゲットは中年層〜高齢層です。これは圧倒的な割合です。
そのターゲット層を今年は拡げて20〜30歳代くらいにリーチする狙いがあるように感じます。

このロゴ、スマホのWEBカメラで読み込むとPR動画が流れるようギミックが仕込まれています。(詳細はこちら
これは完全にスマホに慣れ親しんだ若年層向けのギミックです。

デザインからは少し離れてキャスティングを見てみると、主役の家康役に松本潤をはじめ、付き従い続ける本多忠勝役に山田裕貴、榊原康政役に杉野遥亮、そして服部半蔵役に山田孝之。
極め付けは秀吉役にムロツヨシ。この配役だけ見ても若年層、それも女性寄りの意識が伺える気がします。

OPも少し可愛らしいテイストの朝ドラっぽい感じから主婦層をターゲットにしたのか?って感じました。
であれば、この丸っこくて可愛いロゴデザインも納得です。


これまでの慣例から外れた“題字”

15年前までの大河ドラマのロゴを集めてみました。
(異質過ぎる『いだてん』は意図的に外してます)

やはりダイナミックな毛筆書体が中心になっていて、これぞ大河!って確固たるテイストがあります。

こうして並べてみるとフォントを使用した去年の『鎌倉殿の13人』も目立ちますが、今年の『どうする家康』は全く違う方向性のデザインであることが分かると思います。

そして、その方向性の変更に伴ってNHK側の認識が変わったことが伺えるのが公式サイトの表記。

これまでの大河ドラマではタイトルロゴを「題字」と表記していましたが、その表記が去年の『鎌倉殿の13人』公式サイトから「ロゴ」表記に変更されています。
(ただしドラマ本編のOPクレジットでは去年も今年も「題字」と表記されています。このワードの揺らぎは気になる・・・)

「題字」なのか「ロゴ」なのか。

言葉のニュアンスだけでいくと、フォントを使用した『鎌倉殿の13人』と今年の『どうする家康』は「ロゴ」の表記の方が間違いなくフィットしていて、公式サイトの表記もそれを意識しての結果かもしれません。

これ表面上は「題字」から「ロゴ」って呼び方が変わっただけに見えますが、デザイン自体の方針が変更されたのでは?って深読みしました。
数年後に振り返った時、「あの家康がターニングポイントだったよね」って言われるくらい、今後の流れを作っているのかもしれません。


正円イメージと錯視調整

担当されたデザイナーの方々には大変失礼なことをしているのは重々承知なんですが、どうしても興味が抑えきれず細かくじっくり見てみました。

丸っこくてかわいいって印象通り、しっかり正円に収まるように作られてます。

細かく見ると正円からハミ出してるポイントがあったり、逆に足りていないポイントがあったりしますが、そこは細かい調整の結果なんだと思います。
ガイドを信頼して完全一致させるのではなく、見た目でしっかり調整するってのは大事。若い頃にめちゃくちゃ言われました・・・

そしてやっぱり丸いって印象を持たせることを大事にしている気がしました。
どういうデザインかと問われたら誰もが「丸いロゴ」って答えるような、そんなイメージを持たせているんだと思います。

もう一つ気になったのが上下のバランスです。
「どうする」「家康」を均等にしておらず、下側を大きく(上側を狭く)していますね。

ただ単純に文字数や漢字と平仮名の都合かもしれませんが、おそらく上方距離過大の錯視にも考慮されていそうです。

錯視調整って決まった比率や数値などで調整ができるものではなく、デザイナーが感覚を頼りに気が遠くなるほどのトライ&エラーを繰り返して調整するもの。
ものすごく繊細で丁寧なデザイン処理をされているように見えました。(あくまでも推測です)


直線と45度、そして絶妙な1本のライン

丸っこいイメージを持たせつつ、直線も大胆に組み合わせることでシャープなイメージも持たせています。
丸と直線それぞれのパーツに注目してみると楽しいです。

直線部分は水平と垂直、斜線は45度統一で構成、極めて王道的な組み合わせ。
丸く流れるような動きを持たせたパーツも、先端は垂直か45度でカットされていたり。
そんな規則を持ったパーツを組み合わせていながら、ちゃんと『どうする家康』と読めるデザインになっています。

実はガッツリ拡大してみて気付いたんですが、ごくごくわずかに45度じゃない角度があるかも・・・。
画像データ的な誤差かもしれませんが、これも計算されて微調整が施された結果かもしれません。

それぞれのパーツをじっくり見るだけでも発見があって面白いです。
個人的には「ど」の濁点と「う」の点が繋がって特徴的な形状になっているところが大好きです。

そして凄く細かい部分なんですが「る」の左肩についているライン
一見余計なパーツに見えるんですが、これがめちゃくちゃ効果的なんじゃないかと!
(前述した読み込みギミックの都合かも??)

比較画像として右上のラインが無いものを作ってみたんですが、左上側が凹んで見えませんか?
もしくは少し右肩下がりに傾いて見えるかもしれません。
これは錯視というよりも「る」の形状による影響ですね。

(2023年2月15日追記)
「左上」と本文内と画像内に表記していますが、正しくは右上です。
どう見ても左上は凹んで見えないですね・・・

たった1本の小さなパーツ、文字に違和感が出ないような処理でありながら、全体の丸い印象を強くしてバランスを支えています。
このアイデアと処理が素晴らしい。この発想はなかなか出てこない。脱帽です。


・・・


失礼は重々承知の上でタイトルロゴをじっくり見てみました。
見れば見るほど発見があるデザインでした。ずっと眺めてられます。

ドラマの視聴率が低いこともニュースになっていますが、それはテレビ視聴の数値なので時代遅れだと思います。
見逃し配信などの数値は分かりませんが、おそらく好調なスタートを切ったんじゃないかと思います。

家康公の生涯なんて見所満載ですし「どうする?」の連続。
個人的には伊賀越えとか賑やかに描いてくれそうで楽しみ。でも可愛すぎる有村架純演じる築山殿の今後が・・・

とにかく年間を通して楽しめるドラマになる!
そんな期待を抱かせてくれる「タイトルロゴ」でした。

それでは。


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