マーケティングの”失敗”あるある② 市場分析に時間をかけすぎる
-マーケティング戦略1
今回から「シニアの社会参加」のマーケティング戦略を、”失敗あるある”を意識しながら考えていきたいと思います。今回の”失敗あるある”は、市場分析に時間をかけすぎるです。
「シニアの社会参加」に絞った理由はこのnoteをご覧ください。
マーケティング戦略策定プロセス
戦略策定は、分析フェーズ → 立案フェーズ → 展開フェーズで進みます。
分析フェーズの目的は、これから参入しようとする市場の「機会/課題」を明らかにすることです。まずは、参入する市場の状況を環境分析で明確にしましょう。
図:グロービス「MBAマーケティング」より改変
課題を特定するプロセスは、noteに記載した次の投稿をご覧ください。今回は「イシューからはじめよ(安宅和人)」のステップにそってイシュー(課題)を検討しました。
① 1次情報に触れる
1次情報とは、誰のフィルターも通っていない情報です。現場で何が起こっているのか見て、肌で感じることが目的です。今回シニア9名、仕事でシニアに接する機会の多い方10名に30分~1時間のインタビューをしました。残念ながら、ソーシャルフレイルで引きこもっているような方に直接お聞き出来ませんでしたが、それでも在宅/介護医療関係者にインタビューすることで、対象をイメージすることができました。
● 定年後の社会活動は人それぞれであるが、自身で選択することが大切
● 女性よりも男性の方がソーシャルフレイルが進む可能性が高い
● 都会と地方では、地域コミュニティにあきらかに差がある
● 社会課題解決の会合発表では、どの団体もソーシャルフレイル対象者へのリーチに苦労していた
● 医療/介護保険では、サービスの質と診療報酬のバランスに悩んでいる。質の高いサービスを提供しても、点数が増えるわけではない。
作者インタビューより抜粋
② 基本状況をスキャンする
マーケティングでは様々なフレームワークを使いながら、市場を説明します。一般的に使われるフレームワークは次の通りです。
● PEST : マクロ環境分析 政治(Politics)/経済(Economy)/社会(Society)、技術(Technology)
● 3C : 顧客分析 顧客(Customer) 競合(Competitor) 自社(Company)
● ファイブ・フォース:業界の競争環境を分析
● バリューチェーン:企業の価値創造を示す
良くある失敗は、意味のない分析に時間を費やしてしまうことです。この後作成するSWOTの中で、誰も疑問を持たないよう項目であれば、わざわざフレームワークに落とさなくても良いと思います(キレイに資料にはしないけど、見落としを防ぐために頭の中でちゃんと検討しましょう)。
今回はターゲットの大きさを検討した資料とファイブ・フォースを紹介します。
市場全体の数を考える
2040年の人口分布です。20年後は定年が伸びている可能性もありますが不確定要素が多いため、今と同じように60歳の定年後に働き続ける方は定年後再雇用などで社会の役割りが変化すると仮定し、「シニアの社会参加」のターゲットを60~79歳までの3,100万人(28%)としました。
さらにターゲット像を明確にするために、カテゴリー分けをしました。
文献より、男性では「毎日外出するが、1週間家族以外の交流が無い」群が生活機能が低下しやすいことがわかります。この群ををわかりやすく「街を放浪するシニア」と名付けました。この名前は、インタビューで「街の喫茶店、図書館、公園には、特に何をするわけでなく毎日いらっしゃる男性シニアがいるよね。」という声から名付けました。
1. 60歳以上の高齢者3,100万人のうち、14%が「街を放浪するシニア」ですので、ターゲットは約430万人
2. イノベーター理論のイノベーター(改革者)とアーリーアダプター(初期採用者)の合計16%のため、ターゲットは約70万人
ざっくり”70万人の街を放浪するシニア”が「シニアの社会参加」解決のために、私が影響をあたえたいメインターゲット数になります。
ファイブ・フォースで競合関係を考える
次にファイブ・フォースを使って競合関係を考えてみます
● 直接競合するサービスは、自治会や趣味サークルが考えられます
● シニアの社会参加への関心が高まれば、ホテルや保険会社などが新規参入して、今よりもより手厚いサービスをするのではと考えました
● 代替サービスは、好きな人や物でつながるファンクラブがコミュニティ化してシニア向けサービスになると考えました
● 市町村などが自治会に予算をつけたり、人的支援をしていると考え、サプライに入れました。
● サービス受給者は、シニアはもちろんですが、シニア以外にも60歳以上の従業員の福利厚生として経営者や自治会運営者などがあると考えました。
この5Fを作った私の発見は、サービス受給者です。企業経営者や人事担当者、また自治体の運営者などもシニアが社会参加して成長することでメリットがあるのではと気が付きました。現在もご自身で様々なコンテンツを用意されていると思いますが、コンテンツをまとめたものなど需要がありそうですね。
③ 集めすぎない、知りすぎない
いかがでしょうか?20名のインタビューで現場感覚をつかみ、ターゲットの市場規模の推計と5Fを使って競争環境を分析してみました。PESTや3Cなどもまとめれば発見があるかもしれませんが、最終プレゼンをイメージしたときに、すべての資料を入れることはできません。過去に事業部長がグローバルに説明する資料を1ヶ月かけて50枚ほど作ったら、最終プレゼンには1枚しか使われなかったなんてこともありました(自分の確認不足もあるのですが…)。30分のプレゼンでスライド60~80枚も準備する人がいますが、プレゼンの受ける人の記憶にはほとんど残りません。プレゼンターが「あれもやりました、これもやりました…」と言いたいだけの自己満足ですよね。私も良くやってしまうので、みなさんも気をつけてくださいね。
今回は分析フェーズの環境分析をやりました。次回はこの情報をもとにSWOTを作りましょう。
最近作ったプレゼン資料を見返して、「せっかく作ったから入れておこう」という、目的から外れたスライドが紛れ込んでいませんか?
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